菊池桃子、シティポップの担い手としての魅力とは ラ・ムーの“早すぎたサウンド”も検証

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80年代のアイドル界に旋風を巻き起こした菊池桃子。

 今年デビュー30周年を迎えた菊池桃子が、音楽活動を精力的に展開している。4月30日には『Miroir -鏡の向こう側に-』以来23年ぶりに新作アルバム『青春ラブレター ~30th Celebration Best~』を発売、最新オリコンアルバムチャートで初登場20位にランクインした。同アルバムには菊池桃子が16~18歳までにリリースした全シングル9曲に加え、ファンからの人気も高い1stアルバム『OCEAN SIDE』より「OCEAN SIDE」を収録。これら10曲は、新たなアレンジを施し再録音されたものだ。さらに作詞を鈴木おさむ、作曲をつんく♂が担当した新曲「青春ラブレター」も収録されている。

 また、アルバム発売にともない、27年ぶりに単独ソロコンサートの開催も決定。鈴木おさむが演出を担当するこのコンサートは、5月24日(土)、25日(日)の両日夜の公演はすでにチケットが完売、ファンからの要望による追加公演が決定している。

 80年代を代表するアイドルのひとりとして、小泉今日子や中森明菜らに匹敵する存在感を放っていた菊池桃子。その音楽面の評価はいかなるものだったのか。80年代アイドルカルチャーに造詣の深い評論家の栗原裕一郎氏は、その活躍について次のように語る。

「菊池桃子はアイドル雑誌『Momoco』のイメージガールとしてデビューし、ビジュアル的にもアイドル性が高かったためか、爆発的にヒットしていたものの、当時は音楽性を前面に打ち出しているという印象は少なかったように思います。歌唱力もなかったですし(笑)。しかし、彼女の楽曲はずっと林哲司が作曲していて、サウンドの志向性は、彼が同時期に手掛けていた杉山清貴&オメガトライブと同一線上にある、良質なシティポップでした。彼女のシングルだけを聴いているとちょっと気付きにくくて普通のアイドル歌謡に思ってしまいがちですけど、アルバムを聴くと、林さんが音楽的に高いところを目指していたのが良くわかりますね。林哲司は、79年に松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」や竹内まりや「September」などをヒットさせた、職業作曲家として歌謡曲にシティポップの文脈を組み込んでいった立役者の一人で、80年代に入って杉山清貴&オメガトライブや杏里などを大ヒットさせます。菊池桃子の楽曲もその延長線上に位置付けられるものだと思います。同時期には、尾崎亜美カラーの強い金井夕子~岩崎良美の流れなどもあり、まあ、他にも同時多発的に動きが起こっていたんですが、その辺りにシティポップ歌謡の源流の一端があると言えますので、今あらためて系譜立てて聴いてみると面白いと思います」

 また、菊池桃子がアイドル活動の後に結成したバンド「ラ・ムー」はしばしば”失敗したプロジェクト”として取り上げられるが、栗原氏は「音楽的に再評価できる」と指摘する。

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