ガブリエル・アプリンが“創作の喜び”を語る「曲が公共化することで初めて満足感が得られる」

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 イギリスの田舎町ウィルトシャーで生まれ、ニック・ドレイクやブルース・スプリングスティーンなどを聴きながら育った21歳のシンガーソングライター、ガブリエル・アプリン。10代初めから楽器を弾きはじめ、17歳の時に初めてのEPをリリースしたという早熟の彼女は、2012年にはフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのカヴァーである「パワー・オヴ・ラヴ」がCMに起用されたことをきっかけに全英No.1シングルを獲得。2013年5月13日にメジャーファースト・アルバムとなる『English Rain』は、全英アルバムチャートで2位を獲得している。2014年1月18日に公開された水嶋ヒロ主演の映画『黒執事』では主題歌の「Through the ages」でボーカルを務め、日本でも多くの注目を集めた彼女に、飛躍作となった『English Rain』を中心に、ルーツとなった音楽や日本文化への印象なども訊いた。

「自分だけのユニークさを求めたい」

――5月25日にはGREENROOM FESTIVAL’14に出演し、大きな喝采を浴びていましたね。今回で3回目の来日公演ですが、リスナーの反応をどう感じていますか。

ガブリエル・アプリン:日本の皆さんが、私の音楽を愛してくれるっていう実感があるので、楽しくやらせてもらっています。すごく素敵なことで嬉しいです。

――それは、昨年のアルバム『ENGLISH RAIN』がたくさん聴かれていることが大きいと思うのですが、改めて振り返ってみて、このアルバムが世界中で支持されていることについてはどう捉えていますか。

ガブリエル・アプリン:音楽をやっていなかったら、日本に来れるなんて夢にも思っていなかったですし、そういう国にまで来られるようになったのはあのアルバムのお陰ですね。だから日本でリリースしてもらえて本当に良かったです。今回アルバムの曲作りを一緒にやった人がかつてバンドをやっていて、日本に何度も来ていました。日本の話を彼からよく聞いていて、実際に来てみて日本の文化やファッション、映画も大好きだし、日本まで来られるようになったことがすごく嬉しいです。

――ガブリエルさんの曲にはさまざまな要素が入っていると感じます。音楽をつくるなかで影響を受けたもの、インスパイアされたものは何ですか?

ガブリエル・アプリン:ジョニ・ミッチェルは大好きです。彼女の良いところは、アーティストでありながら絵も描くし、シンガーでもあり、文章も書く、いろんなことをする人だということ。私も音楽だけでなくいろんなことを楽しみたいなって思うので、ジョニ・ミッチェルは大好きですね。あとニック・ドレイクも大好き。やっぱりユニークだし、私も自分だけのユニークさを求めたいと思うから。あと『ENGLISH RAIN』をつくっているとき、皆で歌って盛り上がる系のコールドプレイ、ザ・ナショナルなども聞いていたので、その辺も影響として出ているかもしれないですね。あと60年代のアーティストで好きなのはボブ・ディランやビートルズとか。

――ニック・ドレイクは日本でも熱心なファンがいますが、彼の音楽にはどのようなきっかけで触れたのですか?

ガブリエル・アプリン:私は両親のレコードを聴いて育っていて、そのなかにニック・ドレイクもあったんです。彼の紡いでいるストーリーに非常に興味を持ったのと、出身地が非常に私と近いということもあって深く聴いていくようになりました。彼の音楽は独自性がかなりあって、私がカバーしてみても彼のようには絶対にならない。それが一番の魅力なんじゃないかと思います。

―― 一方で現代の音楽シーンではどのようなものに興味を持っていますか?

ガブリエル・アプリン:60年代のものに惹かれる理由としては、そこに内容があるから。社会的なものやグローバルな、世界に通じる題材を書いている。それを歌っている曲が好きだから自分もそういう曲を書きたいと思うんですよね。そうしたクラシックな部分を持ちつつ、当然いまの音楽として通用したいという思いもあります。いまの音楽でいいと思うのはたくさんあるのですが、ルディメンタルとか、コールドプレイ、エド・シーランもすごいと思う。あと日本でも間もなく作品が出るフォクシーズとか。

「楽曲の公共化が生まれることで、はじめてシンガーソングライターは満足感や達成感を得られる」

――様々な音楽の影響を消化しつつ、『ENGLISH RAIN』は独自性の高いアコースティックサウンドに到達しています。

ガブリエル・アプリン:まず今回のアルバムはサウンド的にもプロダクション的にもいろいろな実験の産物でしたね。散々いろんな曲を書いて、いっぱいレコーディングしたのだけれども、アルバムとして一枚にまとまるものにはならなくて。それに至るには2年~3年かかりました。

――どの部分が一番難しかった?

ガブリエル・アプリン:実は一番大変だったのは選曲なんです。アルバムが出たのは18歳の時ですが、15歳くらいから曲を書き始めていたので、制作の時点で200曲くらいあって。それを最終的に13曲に絞るにあたり、基準としてはライブをして楽しい曲、アルバムとしてのまとまりの追求、あと全体のストーリーがいい感じに流れていくフローが欲しいということ。最終的には納得していますけれども、そこが大変でした。

――そのストーリー性をもたせた音楽が受け入れられていることについては、どのように分析していますか?

ガブリエル・アプリン:自分としてはあくまでも自分の身に起きたこと、個人的なことを書いているわけですけれども、それが皆に受け入れられていて、今のような動きが出ているのはすごく嬉しいです。ジョニ・ミッチェルのドキュメンタリーを再度見たとき、彼女が言っていたのは、「曲や主張を聞いて、ジョニ・ミッチェルの姿しか見えないのだったらそれはちょっと残念だ」、と。あくまでも、私の言っていることを聞いて、皆さん自身をそこに反映させてみてもらいたいんだ、ということですよね。そうした公共化が生まれることではじめてシンガーソングライターは満足感や達成感を得られるんだと思うので、それは活かしたいですね。

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