レキシ×オシャレキシ、年の瀬の真っ向勝負! 池田貴史と上原ひろみのツアー最終公演を観た

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 暮れも押し迫った12月28日。豊洲PITで、世紀の最終決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。相対するのはこのふたり。日本の歴史をモチーフにした愉快な楽曲で、今確実にファンを増やしつつあるレキシこと池田貴史と、グラミー賞受賞歴もある天才ジャズピアニスト・上原ひろみ。題して「レキシ対オシャレキシ ~お洒落になっちゃう冬の乱~」。ここがそのツアー最終公演の地であった。

 鍵盤という同じツールを極めながら、ジャンルもアプローチもまったく違うふたりの顔合わせは、言ってみれば異種格闘技戦も同然。一体どんなライブになるのか、ツアータイトルからはさっぱり伝わってこなかったものの、事前情報をあまり入れなかったのもよかったのだろう。結果としてこの日のライブは、双方のファンにとってまぎれもなく新鮮で、そして今後の可能性を感じさせるにあまりあるものとなった。なにせ“レキシ的”珍事、いや大革命を目の当たりにできたのだから。

 開演前、約3200人の観客が今か今かとふたりを待つそのステージ上には、グランドピアノが堂々と鎮座していた。この光景だけでいつものレキシのライブとは、一味違った緊張感を感じせる。やがてほら貝の音色が鳴り響き、メンバーが登場。「ようやく将軍様のお膝元へやって参りました!」というMCのあとに始まったイントロは、なんと「狩りから稲作へ」。普段ならライブ後半のもっとも盛り上がるタイミングで演奏されるこの楽曲を、いきなり1曲目にもってくるという“暴挙”に、観客は戸惑いつつも応戦する。というのもこの曲、レキシのライブではもっとも“お約束”の多い楽曲で、毎回コール&レスポンス(と、池ちゃんのおふざけ)がゆうに20分は超えようかという長尺曲。開幕間もない段階で伝家の宝刀を抜くとはこれいかに!? と思ったところで、今回のこのライブの企みが少しずつ見えてきた。

 普段の伴奏に、上原のピアノが割って入る。すると、彼女のピアノにあわせて、アレンジが一変する。ひとつの楽曲上でレキシバージョンと上原バージョンが行ったり来たり。さながら綱引きのような攻防が繰り広げられる中、「お前は一体誰なんだ!?」とのレキシの問いかけに、はにかみながら「オシャレキシ(ハート)」と答える上原。そう、今回のテーマはレキシの楽曲を上原自らがすべてアレンジしなおし、“オシャレ”なジャズアレンジで聴かせるという趣向のライブ。楽曲そのものの成り立ちを根底から覆す、いわば天変地異的な試みだったのだ。上原のジャズアレンジにバックバンドが引き込まれるたび、レキシが「やめて、オシャレにしないで!」と引き止める。続く「姫君shake!」「君がいない幕府」では、ほぼ曲調が上原バージョンに乗っ取られるかたちに。オシャレキシがまんまと下剋上を成した瞬間だった。

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