カラスは真っ白・タイヘイ、Yasei Collective・松下…ジャズ新潮流とシンクロする気鋭のドラマーたち

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 1月14日にリリースされたカラスは真っ白のサードミニアルバム『HIMITSU』が面白い。カラスは真っ白は2010年に結成された札幌を拠点とする4ピースで、ファンクやジャズをベースに、高い演奏能力を誇る男性の楽器陣と、CAPSULEやPlus-Tech Squeeze Box、Cymbalsなど、渋谷系第二世代のキュートな音楽を愛する紅一点のボーカリスト、ヤギヌマカナという一見アンバランスな組み合わせが、絶妙なポップミュージックに着地している。『HIMITSU』ではよりロック的なアプローチを強めていることもあって、すでにフェスなどで大活躍しているゲスの極み乙女。やパスピエのようなバンドと、よりファンクやディスコ色の強いShiggy Jr.やORESAMAといった次世代ポップアクトとの、ちょうど中間に位置する存在になったと言えよう。

 ここで注目したいのが、ドラマーであるタイヘイの存在。ライブではMCを担当し、切れ味のいいカッティングで攻め立てるギタリストのシミズコウヘイ、愛嬌のあるキャラクターと、名前通りのグル―ヴィーなプレイが魅力のベーシスト、ヨシヤマ・グルービー・ジュンに比べれば、一見地味なようにも見えるタイヘイだが、バンドの屋台骨となっているのは間違いなく彼のドラミング。昨年8月に地元の札幌で行われた『SAPPORO CITY JAZZ~Park Jazz Live Contest~』に、門馬由哉Quartet(現North Pandemic Groove)として出場し、見事グランプリを獲得するなど、その実力はすでに折り紙つきだ。

 もちろん、カラスは真っ白はジャズバンドではなく、あくまでヤギヌマの歌を軸としたポップバンドであり、アルバムのリードトラックである“HIMITSUスパーク”にしても、今のバンドシーンにフィットするBPM150代後半の高速ナンバーで、タイヘイもダイナミックなプレイで楽曲の躍動感を演出している。しかし、“シャイ・ルック・ホームズ”での細やかなハイハットの刻みや、“革命前夜”でのタイトかつしなやかなプレイは、確かにジャズの下地を感じさせるもの。また、アルバムの中で最もプログレッシヴで、キメも多用された“9番目の「?」”でのプレイは、どこかZAZEN BOYSの松下敦を彷彿とさせる。そういえば、ZAZEN BOYSには“HIMITSU GIRL’S TOP SECRET”という名曲があるが、バンドによるブラックミュージックの独自解釈という意味で、今作の『HIMITSU』というタイトルは、ZAZEN BOYSとカラスは真っ白のリンクを意識させるものでもある。

カラスは真っ白(A crow is white) "HIMITSUスパーク" (Official Music Video)

 さて、昨年は「ロバート・グラスパー以降」と呼ばれるジャズの新潮流が改めて大きな注目を集め、Robert Glasper Experimentのクリス・デイヴやマーク・コレンバーグ、さらにはマーク・ジュリアナといった、クラブミュージックのビートから影響を受けたドラマーのプレイに注目が集まったが、ここ日本でもその流れを受け継ぎつつ、ジャズのシーンだけではなく、より広いポップフィールドでの活躍が期待されるドラマーが頭角を現しつつある。タイヘイもその一人と言っていいと思うが、ここからは今年要注目のドラマーを何人か紹介したい。

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