花澤香菜×北川勝利が明かす、“極上のポップソング”の作り方「人生と音楽がより密接になってきた」

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 声優としての華々しい活躍に加え、シンガーとしても高い評価を集めてきた花澤香菜が、3枚目となるアルバム『Blue Avenue』をリリースする。

 渋谷系のキラキラした曲調が注目を集めたデビュー作『claire』、等身大の花澤香菜に近づいた『25』に続く新作は、洗練された上質なポップソングが詰まった一枚。サウンドプロデュースは、デビュー時より彼女の音楽活動を支えてきた北川勝利(ROUND TABLE)。楽曲提供には、ミトや西寺郷太、矢野博康などの作家陣に加えスウィング・アウト・シスターも参加。スティーブ・ジョーダンやウィル・リーなど世界的なスタジオ・ミュージシャンも起用し、サウンド面でも一流の仕上がりとなっている。

 今作のテーマは「ニューヨーク」だという。ビリー・ジョエルやスティーリー・ダンやスティングなど70年代から80年代の都会的な洋楽、ジャズ、フュージョン、クロスオーバー、AORに通じるテイストの楽曲を、彼女の透明感ある歌声が彩っている。

 5月3日には初の武道館公演も実現。より大人っぽく、歌の表現力も増した新作について、花澤香菜と北川勝利の二人に話を聞いた。(柴 那典)

「香菜ちゃんは歌い方に関して特殊技能を持っている」(北川)

ーー今回のアルバムのテーマは「ニューヨーク」ということですが、これはどういうところから生まれたものだったんでしょうか。

北川:1枚目では、わりとわかりやすく「渋谷」というキーワードがあって、2枚目の『25』は、25歳の誕生日に25曲入りのアルバムをリリースするというのがあったんですね。その次に何をしようかといういくつかのアイディアから、ニューヨークというキーワードが出てきて。

花澤:ジャズっぽいものをやりたいっていうことを言ったんです。前からそういう楽曲もありましたけど。

ーーどういうきっかけでそういう方向性になったんでしょう?

花澤:去年の3月に「かなまつり」という女子会イベントをやらせていただいて。代官山のカフェでアコースティックライヴをやるっていう機会があって、それがすごく気持ちよかったんです。それまでの緊張感がするりと抜けて「こういう感じで本当はやりたい」って思った。その楽しい感じから、ジャズっぽいというところに繋がったのかなって思います。

ーー「かなまつり」のステージは北川さんも一緒に出演されたんですよね。どういう手応えがありましたか?

北川:一番の収穫は、香菜ちゃんが音楽の体験として何かを掴んだということだったと思います。最初のツアーはバンドの真ん中に立っていきなり20曲ぐらい歌うというハードルが高いスタートだったんです。もちろんそこで掴んだこともあったけれど、その時と違って「かなまつり」はアコギとピアノだけなんで、音はスカスカだし、リズムもアレンジも全然違う。しかもマイクも使わずに会話ができるくらいの近い距離でやったんですね。つまり、演奏の上に乗って自由に歌う体験をして、それを楽しんでほしかった。そしたらリハの時点で「すごく楽しい!」って言ってくれて。実際、そのライヴがすごくよかったんです。そこから始まったアコースティックライヴで掴んだことが、次のレコーディングやツアーに繋がっていくだろうということは思ってました。

ーー花澤さんにとっても、そのライヴではミュージシャン同士のセッションのように、より自由に歌う感覚があった。

花澤:一緒にやってる感じはすごくありました。「今、北川さんはきっと盛り上がっているんだ」とか、そういうことを感じながら私も歌っているという。これだったらいつまででも続けられるっていう感じの楽しさでした。

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ーー遡ってのお話もお伺いしたいんですが、花澤香菜さんのソロデビューはどんな風に始まったんでしょうか?

花澤:北川さんにプロデュースしてもらうことが決まって、まずデモを何曲も作ってくださったんです。

北川:助走期間がすごく長かったんですよね。1年くらいかけて10何曲を作った。それを歌ってもらって、どういう歌い方がいいかを考えたり、また別の曲を作って、どんな曲調が合うかを考えたりもした。そういう繰り返しを経て1年後くらいに1枚目のシングルが出るみたいな感じでした。

花澤:いろんな曲を何回もレコーディングさせてもらったんで、贅沢な体験でした(笑)。

北川:彼女はもちろんそれ以前から普通にキャラソン的なものを沢山歌ってきてるので、レコーディング自体に困ることは全然なかったんです。ただ、だからこそ逆に花澤香菜としてデビューする時に、どんな感じでやっていくかを考えたんですね。

ーーそれが最初のファーストアルバムに結実したわけですね。「渋谷系」というキーワードは、どういうところから導かれたんでしょうか。

北川:普通に自分が好きなもの、得意なものであるのに加えて、香菜ちゃんの声に合う曲を作っていきたいというのがあったんです。結果的には声をかけたクリエイターのみんなが友達だったりする流れにはなったんですけど、それは別に友達集めて楽しくやろうぜっていうことではなくて。むしろ楽しさだけじゃなく、お互いに本気で競い合うような厳しさもある現場だったと思います。すごくクオリティーの高い素敵なアルバムにはなったと思いますね。

ーー花澤さん自身は、デビューした頃をどんな風に振り返っていますか?

花澤:今振り返ると、私としては正直あの時はアーティストっていう気分ではなかったんです。曲を提供してくださる方が一番いいと言うものを出したくてやっていた。それが楽しかったんですけれど、今はそういう感じでもなくなってきてると思います。

ーーそれまではプロフェッショナルとして声優のお仕事をされてきましたし、求められるものに100%応えるということの延長線上として歌も歌ってきた。でも、今はもっと自分が表現したい欲求が出てきている。

花澤:歌詞も自分で書いてみたりとか、ライヴでもっとこういう風にやってみたいとか、そういう気持ちがじわじわ出てきて。今はちゃんと一緒に作品を制作しているという感覚になってきていますね。私の人生と音楽がより密接になってきたと思います。

ーー北川さんも花澤さんのそういう変化は目にしてましたか?

北川:たとえば歌のレコーディングでも、前はどういう風にやるかをいろいろ試してこちらから言っていた感じですけれど、今は基本的に一緒に聴いて考えるか、自分で考えたり見つけたりするやり方が増えてきて。そこも面白いなって思いますね。ライヴに関しても経験を積み重ねて、いろんなものを掴んできた。一番印象的なのは、声の仕事をしているっていうところの毎日のトレーニングの賜物なのかもしれないですけど、歌い回しやフィーリングで「すごくいいね!」というものを掴んだ時に、その筋道を次からは毎回再現してるようになるんですよ。それは面白い機能だなと(笑)。さらには「あと年齢を1歳、2歳上げたらどうなるの?」って言ったら、そういう歌い方になったりして。その特殊技能も面白いなって今回思いました(笑)。

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