Keishi Tanakaが考える“歌を届ける意味” 「ポップな音楽で、ポップな言葉を言うのは面白くない」

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 Keishi Tanakaが4月22日に2ndアルバム『Alley』をリリースした。同作は伊藤大地 (SAKEROCK)や古川太一 (KONCOS)、佐藤寛 (KONCOS)、松田"CHABE"岳二 (CUBISMO GRAFICO)など、腕利きのミュージシャンを多数招いて制作されたもの。ソウルフルなKeishiのボーカルが一層引き立つグル―ヴィーな楽曲や、これまで築き上げてきた弾き語りのスタイルが活かされた楽曲まで、様々な歌を楽しむことができるポップ・アルバムに仕上がっている。今回リアルサウンドでは、Keishiに話を訊き、アルバムのこだわりやソロとして活動していくこと、ライブや録音物への思い、先日キネマ倶楽部で行ったフルバンド編成のライブについて、たっぷりと語ってもらった。

「プロデューサーを立てて、少し変化させてもらう楽しみも感じたい」

――今回の『Alley』がソロ2枚目のフルアルバムですが、今回リアルサウンド初出演ということもあり、まずはバンド解散~前回の『Fill』リリースからの話を聞かせてください。

Keishi Tanaka(以下、Keishi):2011年まではRiddim Saunterというバンドをやっていて、3枚アルバムを出したんです。でも、次に何をするか悩んだときに、4枚目のアルバムを出すのか、ライブを続ける年にするのか決まらなくて。メンバーとはそこで活動の形を変えようと決意しました。その時点でソロ活動をしようというのは考えていた、というかバンドを次に組むつもりが全然無かったんです。バンドだったらRiddim Saunterを続けるべきだと思ってたので、ソロをやった方が面白いという考えに至り、2011年の9月にバンドが解散したあと、すぐにソロ活動を始めました。なかには解散したあと、一旦制作期間を長く設けてソロキャリアをスタートさせる人もいるけど、そういうやり方は自分に適してないと思って、すぐに誘われているライブやイベントのオファーを受けました。なので、最初は自分1人で弾き語りをするしか無かったんです。

――そうですよね。解散して間もないころ、京都で行ったライブを拝見しました。

Keishi:それが同年の12月かな。今思うとすぐに弾き語りをやり始めたのは大きかった。音楽へ向かうテンションはそのままで弾き語りを始めたけど、そういうアルバムを作るつもりは無かったので、0枚目として弾き語りの音源が入ったソングブック『夜の終わり』をリリースして、1stアルバムの制作に入ったんです。

――そこでリリースした1stアルバム『Fill』は、弾き語りの要素を残しつつ、ストリングスを入れたり、ロック調の曲だったりと、様々な顔を見せていました。

Keishi:元々ジャンルをあんまり気にしていないのですが、弾き語りで曲を作ってライブで披露していたというのが大きいのかもしれません。『Fill』はその形式で作った楽曲をバンドサウンドにアレンジしていきました。『Alley』は『Fill』と使っている楽器はあまり変わってなくて、ホーンセクションが新しく入ってるくらいなんですけど、全然それに向かう曲作りの段階が違う。元々弾き語りでやっていたものをバンドサウンドにした『Fill』と、バンドセットを経験したことで始めからバンドを意識したものになった『Alley』という感じですね。もともとこの2枚に関しては一続きにしたくて、両方を聴いてバランスのいいものにしたかったということもあります。

――『Alley』を聴いた印象としては、『1人だから何をやってもいいんだ』という選択肢の多さを感じました。

Keishi:それって、バンドとソロバンドセットの違いかも。それぞれに良いところがあるし、曲によってプレイヤーを選ばせてもらうっていうのはかなり贅沢なことで、ソロ活動を3年経って「やってもいいかな」と少し思えるようになりました。最初の頃はあまりそういう考えは無く、『Fill』に関しては基本ほぼ固定メンバーでやっていたのですが、気持ちに余裕ができたということもあります。

――2つのアルバムを作るにあたって、最初からその分け方を用意していたわけではないんですね。どちらも曲単位ではなくアルバム単位で聴かせるような作り方をしているように思えるのですが。

Keishi:弾き語りベースだったものが、バンドセットのライブを通じて変わった部分ですね。あと、元々アルバムを作るのがすごく好きなんです。全体の流れを作ったり、通して聴くことで1番いい状態にできることがアルバムの良いところなのかなと思うので。でも、最近では1曲だからこそ遊べる部分というか、テーマに寄せられる部分が結構あるということも思っていて、それもそれでいいなと。絵本を作る(『秘密の森』)とか、ハンカチ(『Crybaby’s Girl』)をジャケットにするのはシングルの方が良いかなと思ったのはそういう考えからです。

――それは曲も仕掛けも含めてということでしょうか。

Keishi:そうです。ソングブック『夜の終わり』は、写真と詩を見せるという意味では1曲じゃ物足りないなと思ってミニアルバム形式にしたし、詩を読みながら聴くならアコースティックがいいんじゃないかと考えたり、作品や楽曲に対するベストな状況を探してる。そのなかで2年に1回のアルバムという周期があって、良いバランスでやれていると思います。

――2年に1回のアルバムということですが、その周期を定めているのはなぜ?

Keishi:明確に決めているわけではないですが、アルバムを2年に1枚出すペースが結構続いていて、ツアーが終わって1年間制作に入るというのが自分のなかに周期としてあり、それが日常になってる。僕の作品は、日常を切り取ったものにしたいので、自分自身を日常的な空間においておくことが大切だと思い、意識してそういう風にしているんです。

――アルバムは、テーマに沿って曲を作っていくのでしょうか。それとも沢山作った曲を並べて完成させていくのでしょうか。

Keishi:コンセプトアルバムを作っているつもりは無いのですが、1枚目と2枚目には自己紹介的な意味合いもあり、“Keishi Tanakaとは”というテーマで作っているのかもしれません。でも、例えば「秘密の森」や「Crybaby's Girl」、「Floatin’ Groove」などのカギになる曲ができてきたときに「『Floatin’ Groove』は3曲目だな」という風に当てはめる。で、その前に2曲目としてどういう曲があったらいいのかを考えて、作っていく。だから最後にシャッフルするということはあまりないです。曲を作る段階で曲順や曲のキーなどアルバムの流れを考えて「『Crybaby's Girl』まで来たら、次は静かな『あこがれ』を入れてみよう」とか「最後はアップテンポなシャッフルが良いから『素敵な影の結末』のような曲を作って、その前に「秘密の森」を置く」とか。そして最後にプロローグ的な意味合いで1曲目を作ります。これは1枚目も2枚目も同じです。全体が見えてから入り口としてぴったりのものを作りたいので。

――曲作りの際にはどういったプロセスを踏むのでしょうか。

Keishi:ギターとメロディを作りつつ、パソコン上でデモを全部作ります。リズムや鍵盤を入れて、作ったものをバンドメンバーに渡します。1枚目、2枚目は、デモの段階で8割のイメージは出来ていました。音になってない部分は口頭で説明しちゃいますけど、自分の中では結構イメージが固まっている方だとは思うんで。ただ、プレイ自体はそれぞれのプレイヤーに任せます。例えば、「9月の甘い香り」は、最終的にプレイを任せていて、曲調やリズムはデモと同じにしてもらいつつ、僕がデモでは表現できない音がたくさん入っています。それが最高なんです。想像しなかった違う曲調になる、というのは心の余裕がもっと出て来たらできると思う。いつかはプロデューサーを立てて、少し変化させてもらう楽しみも感じたいと思っています。

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