織田哲郎✕ダイアモンド✡ユカイが語り倒す、ROLL-B DINOSAURの“ロックンロール哲学”

ROLL-B DINOSAURの“ロックンロール哲学”

 作曲家・プロデューサーとして数々のヒット曲を手がけてきた織田哲郎が、自身もギタリストとして参加するバンド=ROLL-B DINOSAURを結成。ダイアモンド✡ユカイをボーカルに迎え、GUNIW TOOLSのASAKI(Gt)、FUZZY CONTROLのJOE(Ba)、LINDBERGのCHERRY(Ds)と個性溢れるミュージシャンたちと共に、12月9日にアルバム『ROLL-B DINOSAUR』をリリースした。今回リアルサウンドでは、12月11日に東京・渋谷で発売記念インストアライブを行なった直後の織田哲郎とダイアモンド✡ユカイにインタビューを敢行。ロックンロールに対する織田の情熱が出発点となってバンド結成に至った話から、2人の音楽・バンド観まで熱い話を聞くことができた。(編集部)

「ロールはどこに行ったんだ!と」(織田)

ーー先ほど『ROLL-B DINOSAUR』の発売記念インストアライブが終わったばかりですが、8月のお披露目ライブよりも演奏に躍動感があり、聴き応えがありました。ご本人としてはいかがでしたか?

ダイアモンド✡ユカイ(以下、ユカイ):今日はライブと言っても短かったからね。リラックスしてやった感じかな。さらにテンションがノッてくるまでにはもう少し、というところで終わっちゃったね。

織田哲郎(以下、織田):俺も同じ感覚かな。前回の初ライブ(8月6日@下北沢GARDEN)の時、相当勢いだけでアタフタしていたから、今回はちょっと落ち着いてやろうかなと。でもちょっと、リラックスしすぎたかなというところもありましたね。

ーー2016年は3月31日から春のツアーが始まりますが、その時にはさらに良い状態でライブができそうですね。あらためてROLL-B DINOSAURの結成の経緯から聞かせてください。織田さんはどんなプランを持っていたのですか。

織田:ロックバンドはいっぱいあるんだけれど、“ロール”するバンドはあまりない。それで、ロールはどこに行ったんだ!という思いがずっとあったんですよ。俺としては、ロールなギターを弾いている時が一番楽しい。でも、自分の歌を考えると、あまりロール向きじゃなくて。それで、最高のロックンロールが歌えるヤツはいないかと考えたら、頭のなかにはユカイくんしか思い浮かばなかった。だから、ちょうど1年前くらいから“やらない?”って話をしていたんです。

ユカイ:そうね。その時は“なに言ってんだろなぁ、このオッサンは”って思ったけど(笑)。

織田:まあ、そう思うよね(笑)。

ユカイ:でも、なんかすごく熱くてね。織田さんは作曲家としてJ-POPを引っ張ってきた一人じゃないですか。でも、日本の代表する作曲家になる前は、「WHY(ホワイ)」というバンドをやってたわけで。俺もRED WARRIORSではロックンロール一筋の男だったから、もともと共感する部分も大きいよ。
 ただ、考えてみると、それからもう30年とか経っててさ。自分もいろいろなことをやってきたけど、人生の中で一回りも二回りもミュージシャンやってるじゃない? だから“ロックンロールやろうよ”って言われても、最初はピンとこなかったんだよね。今の時代的なこともあるし。確かに、いまだにローリング・ストーンズは健在だし、ポール・マッカートニーもガンガンやってる。でも、日本という土壌を見るとさ、自分の憧れるロックバンドというのは、ひとつもないんでね。ビジュアル系とかメタル、ハードロックは進化して、今も生き続けているけど、ロックンロールバンドは死んじゃったのかな、みたいな。もうそういうことを忘れていたっていうか。

織田:だから、“ロックンロールはどこに行ったんだー!”って。ロックンロールが進化した形というのは、ほんとにあまりないですよね。それに、バラエティに出ているユカイくんも面白いんだけど、一番輝くのはロックンロールバンドのボーカリストとしてステージに立っている時なんだ。その輝き方はやっぱりハンパじゃないから、もっと見せてほしいなという思いもあった。

ユカイ:こういう感じでね、織田さんもしつこいわけですよ(笑)。でも、聞いているうちにこの人は本気なんだ、と思って。だってさ、作曲家としてもシンガーソングライターとしても、明確なポジションがすでにあるわけじゃないですか。それでも、本気でロックンロールやりたいっていうんだから。

織田:本気も本気!

ユカイ:その“本気度”に打たれ、今だったらできるかな……と思ってからは早かったですね。

ーー織田さんは先ほど“ロックはあるけれども、ロールはない”とおっしゃっていましたが、“ロール”とは具体的にどんなものだと捉えていますか。

ユカイ:これ、キース・リチャーズの有名なセリフね。

織田:まさにその通りで。“ロールは何なのか”っていうのは、音楽的な理屈じゃないんですよ。単純に音楽的なことで言ってしまうと、“ジングジャング、ジングジャング”というギターのリズムだったり、こういうパターンだよね、というものはあるけれど、それだけじゃない。だから、やっぱりニュアンスの話になってしまう。俺が一番思っていたのは、ロールしている昔のロックンロールバンドは、“人生、それでいいんだ!”と思わせてくれる、絶妙な“ゆるさ”みたいなものがあったんじゃないかって。最近のロックって、やたらマジメじゃないですか。それはそれでいいものもあるけど、“トータルでカッコよければいいんじゃねえの?”という気分が、ロールな感じがするんだけどね。

ーーなるほど。それがバンドの醍醐味でもあるような気がします。ユカイさんはこのバンドで歌ってみて、忘れていたロックンロールへの思いがよみがえってくるような感覚はありましたか。

ユカイ:みんなで“せ~の”で音を出した瞬間に感じたね。なんか、テンション全開で、とにかくすげえなって。

織田:意外と最初からカチッとはまったよね。

ユカイ:なんにも示し合わせたことはないんだけど、みんなが足りないところを補いあっているみたいな。普通、最初は音がかち合っちゃったりとかするじゃないですか。そういうのがないんだよね、みんな別の方向を向いているんだけど、ひとつにまとまるのが早かったり。これはさすが、プロデューサーの織田哲郎の力ですよね。こんなにうまくパズルが噛み合うものなのかと驚いた。

織田:メンバーもパッと集まったから、そういう流れがよかったんじゃないかな。音を出してみても、バチン!といきなり最初からきましたから。

ーー非常にスキルの高いメンバーが集まりましたが、このバンドでは織田さんがおっしゃった“ゆるさ”が大切なところだと思います。プレイヤーを選ぶ上で重視した部分は?

織田:やっぱりグルーヴですね。

ユカイ:そうそう。決してコンピューターで作られたタイトなリズムじゃない。“ゆるさ”というのは人間臭さでもあって、そういうグルーヴがROLL-B DINOSAURのメンバーにはあるんですよ。それと、織田さんも“新しい形”と言ってたけれど、みんな古臭いものをやるつもりはないというか。自分が表現する上で、体に流れているのは70年代のロックだったりするんだけど、それをそのまま出すんじゃなくて、新しいものとして出さなければいけない。それも、50歳過ぎのメンバーが3人もいる中で(笑)。過去の栄光とか歴史を再び見せる“再結成”ではなく、新しいバンドを作って切り拓いていくっていうのは大変なことだけどね。でも、今の時代に、織田さんを先頭にスカーン!とやってみると、気持ちよさがある。“こんなヤツら、いなかったよな”って。

織田:古いロックンロールなんてやる気ないからね。俺は50年代の音楽も60年代の音楽も、そして今の音楽も同じように、単純に好きなもの/嫌いなもの、面白いもの/面白くないもの、という感覚で聴いていて。名前を隠してボカロやって、ニコ動に出しちゃう……みたいなことも楽しいな、と思っちゃったりね(笑)。昔の音楽も今の音楽も、面白いと感じるものは同列なんです。だから今ROLL-B DINOSAURでやるロックンロールは、決して自分にとっての昔のロックンロールじゃない。そしてこういうものが素敵だと思うヤツって絶対にいるよね、と思っているわけ。

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