渡辺淳之介×松隈ケンタが語る、BiSHと音楽シーンのこれから「いまはトレンドがクラッシュして皆が好きなものを聴いてる」

渡辺淳之介 × 松隈ケンタ対談

 BiSHやPOPなどのアイドルグループを手がけるマネジメント事務所・WACKの渡辺淳之介氏と、音楽制作プロダクション・SCRAMBLESを率いる松隈ケンタ氏による対談企画第三弾。BiS解散後、それぞれ会社を立ち上げた直後に行われた第一弾【BiSの仕掛人、渡辺淳之介×松隈ケンタ対談 2人が別々に起業した理由とは?】、BiSHなどの新たなプロジェクトを開始したのちに行われた第二弾【渡辺淳之介×松隈ケンタが語る、音楽プロデュース論「僕らはアーティストより超人じゃなきゃいけない」】に続く今回は、その後ふたりを取り巻く環境がどう変化してきたのかを訊くとともに、現在のアイドルシーンの状況や、いまの音楽シーン全般で気になる存在についてまで、幅広く語ってもらった。聞き手は、編集者の上野拓朗氏。(編集部)

渡辺「前より結果をすごく見られてるなって気はしてます」

ーー2人に最初取材させてもらってから約1年3カ月が経ちましたけど、すでに2~3年経ってるんじゃないかと思うくらいの濃密さだなと。BiSの時の2013年~2014年あたりも相当だったと思いますけど、それ以上のスピード感なのでは?

松隈:そうですね。BiSHだけが表に出てる感じですけど、それ以外にPiiiiiiiNってアイドルや他の仕事も僕と渡辺くんの2人でやってきてるんです。そう考えると、割とたくさん仕事してますね。

渡辺:アニメ絡みの仕事もやっていて、僕が歌詞を書いたりとか……。ここ5年くらいは、「これが忙しさの頂点なんじゃないか」っていう限界を毎回感じながら、それをどう乗り越えていくか?みたいなのがテーマで(笑)。2人で「ここが正念場だね!」って話をよくします。

松隈:ただ、最近はしっかり休むようになったね。正月は久しぶりにゆっくり休めたし。まあ、都合よくメールがぶっ壊れたのもあるんだけど(笑)、仕事のやり取りもしないようにして。

渡辺:それはあるかもしれない。会社員時代の時は、休んじゃいけないわけじゃないけど、常に動いていないと死ぬみたいな。でも、今はその都度リセットしないと死ぬ。だから、BiSHにかこつけて沖縄を満喫したりとか(笑)。

松隈:リセットだね(笑)。

渡辺:あとはちゃんと寝た方がいいなって。松隈さん、昔からちゃんと寝ますよね?

松隈:うん。6~8時間くらい寝る。

渡辺:前は寝なくて平気だと思ってたんですけど、最近はしっかり寝ないと起きれなくなっちゃいましたね。30年間生きてきて、ようやくそのことに気づきました(笑)。歌詞や企画もそうなんですけど、一回寝かすことがすごく大事だなと。

松隈:渡辺くんは、前に比べると歌詞に苦戦するようになってきたもんね、いい意味で。昔は一晩で書き上げたりしてたのに。僕は締め切りまで曲を溜めちゃうことが多いんですけど、曲ができないと渡辺くんは歌詞が書けない。だけど、渡辺くんだったら一晩あれば歌詞が書けるだろうと。それが最近は「あれ?」っていうことが増えて(笑)。不振ってわけじゃないんだけど、悩んだりすることが時々ある。

渡辺:松隈さんの場合、曲を仕上げてくるのが基本的にはめちゃくちゃ早いんですけど、昔ほどのスピード感じゃなくなったのは、前よりも人に見られるってことを意識してるからだと思うんですよ。

松隈:こだわりってこと?

渡辺:そう。我々が世に出したものが、そのままイコール評価につながってきちゃうので。だから、見え方が気になってきちゃいましたね。

松隈:そうだね。昔はゼロからのスタートだったので、ウケればいいだろみたいなところがあったんです。最近は良くて当たり前じゃないけど、周りからの期待度が高くなるとヘンなことできないし(笑)。

渡辺:結局、結果に伴っていろんな評価をされる状況になってしまったので、前より結果をすごく見られてるなって気はしてます。あんまり結果が振るわなかったりすると、あいつ本気出してないんじゃないか?って言われたりもするので。

松隈:本気出してるんだけどね(笑)。

渡辺:(笑)毎回本気出して、真面目にやってるつもりなんですけどね。「あれ? 今回は手抜いちゃった?」みたいな雰囲気になってると否定したくなる。それだけ注目してもらえてるってことは嬉しいことだけど、そういった状況が悩みのタネになりつつありますね。

松隈:どんどんハードルが上がっていく。

渡辺:僕は去年1年間でツイッターのフォロワーがめちゃくちゃ増えたんですよ。BiSHやります!って言った頃は4000人くらいだったけど、今は9000人くらい。そういうことも含めて、2015年は雰囲気がガラリと変わった1年だった。その昔、別件で売り込みに行った時には見向きもしてくれなかった媒体の方の態度が変わって、「取材させてほしい」って連絡があった時は感慨深かったです(笑)。独立して1年目くらいまではすごく煙たがられてたと思うんですよ、僕は。今はその実感があまりなくて、そのきっかけがBiSHを始めたことだったのかなと。でも、自分では何も変わってるつもりはなくて。

松隈:見え方が変わってきたんだろうね。僕の場合は自分のスタジオがあって、クリエイターを集めたSCRAMBLESっていうチームがあって……っていう部分では、見え方はあまり変わってないと思う。ただ、SCRAMBLESの中でも若い奴が育ってきて、メジャーの仕事も決まるようになってきた。それもあって自分の時間を有効に使えるようになってきたところはあります。今までの自分は作曲者・編曲者ってところに重きを置いていたんですけど、サウンドプロデューサーってところに重きを置けるようになってきた。そういったことが、去年1年で推し進められたかなって。

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