Awesome City Club×CAMPFIRE家入一真対談 バンドとネットの関係はどこに向かう?

ACC×CAMPFIRE・家入氏対談

 Awesome City Club(以下、ACC)が『CAMPFIRE』にて、7inch&CDシングル『Don't Think, Feel』制作プロジェクトのクラウドファンディングを成功させた。同企画はACCがシングル制作にあたっての資金支援を求めたもので、パトロンとなったファンには、メンバーそれぞれからのリターンメニューや、ツアー後のアフターパーティー参加、「あなたのために1曲どこでもライブやります」企画、オリジナル曲の書き下ろしなど、金額に応じてさまざまな特典を用意していた。今回リアルサウンドでは、ACCが6月22日に発売する3rdアルバム『Awesome City Tracks 3』のリリースを前に対談を企画。今回は昨年行なった【Awesome City Club×CAMPFIRE・石田光平対談 メジャーバンドがクラウドファンディングを使う意義とは?】の続編として、メンバーのatagi(Vo./Gt.)、PORIN(Vo./Syn.)に加え、新たにマツザカタクミ(Ba./Syn.)と『CAMPFIRE』を運営する株式会社ハイパーインターネッツの代表取締役・家入一真氏を招き、音楽とインターネットの“多様性”、Awesome City Clubが同企画を経て最終的に目指すもの、家入氏から見た音楽業界について存分に語り合ってもらった。

「クラウドファンディングは『共感』より『共犯関係』が一番近い」(家入)

――Awesome City Clubがクラウドファンディングに挑戦するのは今回が2回目となります。まずは前回の反響について、どう受け止めていますか。

マツザカ:僕は、応援してくれる人と触れ合える場としてクラウドファンディングが存在する、ということに気づいてもらえたのかなと。ただ単に初回限定盤の複数形態に様々な特典があるというわけではなく、いつもだったら商品にならないものや体験を共有できたので。だからこそ、2回目もこうして取り組めることになったし、僕らと応援してくれる人にとってのお祭りみたいなものとして捉えていますね。

PORIN:リターンメニューを用意したなかで、音源とあわせてさまざまな体験を特典にできたことがとても楽しかったです。前回は「古着屋巡り」という、音楽とは一切関係ないことをしたし……今回はランニングとランチなんですけど(笑)。

atagi:自分たちがどうこうというよりも、僕たちがトライして以降、インディーバンドからメジャーのバンドまで、クラウドファンディングを行なっているのを目にするようになりました。何より参加してくれた人が楽しそうにしていたことが大きかったです。

家入:atagiさんが言ってくれたように、Awesome City Clubが前回挑戦してくれたことで、垣根が壊された部分があるなと本当に思っていて。実際、ミュージシャンやアーティストにクラウドファンディングの印象を聞くと、「ちょっとお金に必死な感じが出て嫌だ」「何かかっこわるい」と言われることも多いんです。だからこそ、その批判を恐れずにやっていただけたというのは、僕らとしてもありがたい。

マツザカ:実際は受注生産の直販売という形に近いものを、体験とセットで提供させていただいているだけなんですよね。最初は「メジャーフィールドにいるのに、なんでお客さんから制作資金をもらうんだ?」という意見もありましたし、バンド界隈でお金の話をするのは中々良しとされていないのですが、実際に自分たちでマネタイズするのが苦手で、苦労している人たちはいるわけで。そんな風に、今までの形式でお金を稼ごうとするとうまくいかない人たちが、苦しくならずに済むかもしれないプラットフォームだなと僕は思っていますし、結果的にそのバンドが生み出す音源や体験を欲しがっている人に届けることができるわけなので、罪悪感を持つ理由もないんじゃないかなと。

atagi:ここ数年、マツザカの言ったような否定的な価値観に対して意固地になっていたインディーの人たちが、いい活用方法を見出しているようなプロジェクトも目にします。家入さんがサービスを立ち上げたのは、インディーズで稼げない人たちに対する支援という目的もあったのでしょうか?

家入:僕も、共同代表としてサービスを立ち上げた石田(光平)も、自らが表現者になれなかったのだから、せめて表現する人を支えたいという気持ちがあり、CAMPFIREを立ち上げたんです。僕は学生時代、美大や芸大に行きたくて絵描いていたのですが、結局そっちは上手くいかず、立ち上げた会社がうまくいっちゃったから、ビジネスのほうに進みました。だから、絵描きとしてギャラリーで個展をやる大変さも、それがクラウドファンディングを使って5万円集めることで解消できるという事実も知っている。もちろんこういうWebサービスやインターネットのサービスって、ある種流行りもののように見られたり、使うことで資本主義に迎合するような映り方をするからこそ、嫌われないように努力したいところですよね。自分が好きだと思っている方に否定されるのは結構辛いですから。

マツザカ:徐々にではありますが、気軽に使えるものとして捉えられているからこそ、ユーザーは増えていると思うんです。いろんな使い方ができるがゆえのメリットは大きいですが、逆に言うと、どれが一番正しい方法なのか、わかりづらくなっちゃう部分もあるのかもしれません。そういう意味で、個人的にはホームレス芸人・小谷さんの「50円で何でもやります」みたいな企画にも面白さを感じます。

家入:彼は「大阪から東京に帰りたい、目標金額5,000円」とか、「赤い何かが欲しい」とか、まあ滅茶苦茶な使い方ですけど、毎回達成するのが面白いよね(笑)。

マツザカ:ああいうユーモアのある使い方をする人がもっと出てくるべきですよ。堅苦しく考えること自体、ナンセンスというか、できればそうじゃない方向に使っていけるようになりたいですもん。

家入:確かに、小谷くんみたいな人が認められるようになってきたというのは、時代の変わり目を感じさせてくれますね。僕自身、数年前に「学費が払えない学生をクラウドファンディングで支援する」というのをやって大炎上したし、実際自分にも落ち度があったんですけど、最近はそういうのがなくなってきている気がする。

atagi:多分、「お金を払ってサポートする」ということ自体に、抵抗がなくなっているんだと思います。

家入:たしかに、クラウドファンディングが根付いてきたというよりは、お互いを支え合うという価値観の中で生きていかないと、結構この先しんどいかもしれないと、みんな何となくわかってきたのかなというのは思っていて。きっとシェアハウスがあれだけ流行っているのも、「このまま行くと孤独死するのでは」という本能みたいなものが働いているのかもしれない。

PORIN:みんなが自分と違うことに対して寛容になってきているのは、クラウドファンディングサービスにとっては追い風なのかも。

160510_acc_9635.jpeg

 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる