miwaの楽曲は「ハッとする仕掛け」がポイント? 各楽曲を分析してみた

 前作『あなたがここにいて抱きしめることができるなら』から7カ月ぶり、通算20枚目となるmiwaのシングル『Princess/ シャンランラン』が7月22日にリリースされた。前々作『夜空。feat.ハジ→/ストレスフリー』以来の両A面シングルで、「Princess」は森永製菓新CMタイアップ曲であり、TVアニメ『ふらいんぐうぃっち』のオープニング主題歌としてオンエア中の「シャンランラン feat.96猫」は、ニコニコ動画を中心に話題のシンガー、96猫とのコラボソングとなっている。

 昨年、メジャーデビュー5周年を迎えたmiwa。透明感あふれる歌声とタイムレスなメロディ、生楽器をフィーチャーしたオーガニックなアレンジで、幅広い世代の音楽ファンから多くの支持を集め続けている。そこで今回は、新曲「Princess」はもちろん、過去のシングル曲も取り上げながら、彼女の楽曲の魅力に迫ってみたい。

 miwaの楽曲は、基本的にアコギ1本の弾き語りでも通用するような、シンプルで力強いコード進行と、軽やかで屈託のないメロディによって作られている。が、時折ハッとする仕掛けがあり、それが強烈なフックとなって聞き手に強い印象を残す。そこでよく用いられるのが、

(1) Bメロからサビへの唐突な転調
(2) サスフォーとアドナインスの浮遊感
(3)オーギュメント、マイナーフラットファイブなどの不安定な響き

 などである。それらを踏まえつつ、1曲づつ聴いてみよう。

 まずは、2010年3月にリリースされた彼女のメジャーデビュー1枚目のシングル表題曲「don't cry anymore」。この曲はサビ始まりだが、キーはFで、Dm7- B♭add9- F- Csus4の繰り返し。サスフォーとアドナインスが楽曲に浮遊感をあたえている。弾き語りのライヴでは、1フレットにカポを付けKey=Eのポジションで弾いていた。そうすることで、常にファの音をペダル・トーンとして鳴らしやすくしているようだ。また、展開メロ「何を信じたらいいのかも〜」にいく直前のブリッジでも、<Dm7/B♭Maj7- C- Dsus4- D>とサスフォーを用いており、さらにDmをDへと変調させることで、景色をガラッと変えている。

 続いて2010年9月にリリースされた、3枚目のシングル曲「chAngE」。この曲もサビ始まりで、キーはG。<Em - C - G -D>の繰り返し、つまり<VIm- IV- I- V>という構造は、「don't cry anymore」と同じである。メロディの動きも似ており、トニックに対する5度の音を強調し、コードチェンジするたび変わる響きを印象付ける(VImに対しては7thノート、IVに対しては9thノート、Iに対しては5thノート、Vに対してはルート、といった具合に)。また、サビが終わり、イントロへと移った瞬間にキーがEへと移調。これは、KANの「愛は勝つ」などでも使われている、割とオーソドックスなキーチェンジだが、トニックコードではなくVImから始まっているため、より唐突で強引な印象を受ける。かえってそれが、大きなフックになっているのだ。コード進行は<C#m- A- E- B>で、サビと同じ構造(VIm- IV- I- V)。Aメロを挟んでのサビは、前半が<Em- C- G- D- Bm- C- G -D>。5小節目のBmは、Emの代理コード的な役割だろう。曲の後半では、キー=Gからさらに半音上のA♭へと移調し、エモーショナルな効果を醸している。

miwa『片想い』

 2012年2月にリリースされた。8枚目のシングル「片想い」はピアノを基調としたドラマチックなバラードだが、この曲も唐突な転調がフック。キーはCで、Aメロは<C- G- C7- F- F/ G- Em7/ Am7- Dm7- Dm7onG>。Bメロも、<Em7/ Am7- Dm7/ G- Em7/ Am7- Dm7- Dm7onG- G>と、オーソドックスなダイアトニック・コードが使われている。しかし、このあと唐突に<G#m7/ C#7>というブリッジが入り、それがキーF#のツーファイヴとなってサビへの導入を促す。イントロ〜Aメロとシンプルなダイアトニックコードで進んできた分、ここがよりドラマチックに聞こえるのだ。サビのコード進行は、<F#/ Fm7(-5)・A#7(♭9)- D#m7/ C#m7・F#7- BMaj7/ F#onA# -G#m7 /C#>。<Fm7(-5)・A#7(♭9)>は、D#m7のツーファイヴ、<C#m7・F#7>は、BMaj7の役割を担っている。ちなみに、唐突な転調やサスフォーを効果的に使った曲としては、他にも「ミラクル」(2013年4月リリース)などが挙げられる。

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