『チケット高額転売取引問題の防止』共同声明で何が変わる? “公式二次流通”の必要性への言及も

 先日8月20、21日に開催された夏フェスの一つ、『SUMMER SONIC 2016』。国内外の有名アーティストが集結し人気を博す都市型フェスで、毎年東京と大阪で2日間に渡り開催されている。なかでも今年の東京公演2日目はレディオヘッドが13年ぶりに出演するとあって、チケットはソールドアウト。SNSでは、当日も「チケット探しています」という書き込みが止まず、各チケット売買サイトでは、同公演のチケットを定価の倍以上の金額で売買し終えた複数履歴で溢れていた。

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RISING SUN ROCK FESTIVAL PHOTO by n-foto RSR team

 その翌週の8月23日、一般社団法人 日本音楽制作者連盟(以下、FMPJ)、一般社団法人 日本音楽事業者協会(以下、JAME)、一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会(以下、ACPC)、コンピュータ・チケッティング協議会の4団体が、『チケット高額転売取引問題の防止』を求める共同声明を発表した(http://www.tenbai-no.jp/)。これは、先述のようなチケットの金額を不当に釣り上げた転売が横行する実情に危機感をもった団体が「#転売NO」を掲げ、一斉に声をあげた取り組みである。各団体に所属する116組の国内アーティストと24の国内音楽イベントの名前が並記された声明文は、世間に大きなインパクトを与えた。

 業界4団体が共同声明を公表するのは、今回が初。新聞一面を使った意見広告の掲載、各メディアでの情報拡散が功を奏し、発表後インターネットを中心に、様々な議論が日々交わされている。これまでもコンサートチケットの転売に関しては長年議論がなされていたが、具体的な解決にいたることはなかった。なぜ今このタイミングでの発表となったのか。また、発表する上での最大の目的は何だったのか。同声明の広報担当に文書で取材を行い、いくつかの回答を得た。

 まず、4団体が集結した経緯については、「当初はFMPJ、ACPC2団体でライブエンターテインメントの活性化を目的とした勉強会を開催していたところ、昨年秋頃より、このチケット高額転売問題が顕在化しはじめた。そこで、JAME、コンピュータ・チケッティング協議会を加えた4団体で今春より定期会合の開催に至る」との回答があった。国内最大規模のチケット売買サイトが大体的にTVCMなどのプロモーションを展開し、アクティブな音楽ファン以外の層へアプローチを開始したのが昨年の夏頃。時期で考えると、こうした新たな潮流への危機感が、4団体を結びつける一つのきっかけとなっているようだ。

 今回の共同声明を発表した目的については、「高額転売の横行により、音楽ファンが受ける過度な負担の一掃。すなわち、かつてのような本当にコンサートを観たいと思うファンが、適正な価格でチケットを入手できるような状況を取り戻すこと」との回答。今回の声明は二次流通というシステム自体へNOを呼びかけるものではなく、あくまでもそれらのシステムを悪用することへの問題提起であるという。

 今後の取り組みについては、「まずは、この問題に関する認知を一般の方々まで拡大したい。また、音楽ファンの反応を真摯に受けとめ、その上で、各自治体の迷惑防止条例の改正など、ユーザー保護の観点から関連法整備に向けた働きかけを自治体並びに関係省庁に行いたい」とした上で、「利益目的の転売ではなく、本当にコンサートに行けなくなって、手元のチケットを無駄にしたくないという音楽ファンの要望に対して、すでに一部の公演で始められている公式二次流通の仕組みを早急に構築していくことも、多くの音楽ファンから求められていると思います」と回答した。ここで注目されるのは、いわゆる“ネットダフ屋”を規制する法整備を促す姿勢が示されたこと、そして、“公式二次流通”の構築についての言及があったことだ。とりわけ、各所で取り組みが始まっている後者については、今後アーティストや音楽団体の協力を得て、サービスの普及が加速していく可能性もある。

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