丸本莉子は2年かけて、“悲しみ”をどう歌に昇華させたか?「希望も感じられる曲になった」

丸本莉子「誰にもわからない」に向けた思い

 丸本莉子が11月30日にアルバム先行シングル『誰にもわからない』を配信リリースする。この楽曲は、ピアノの旋律と丸本の歌い出しからゆっくりと始まり、エレキギター、ドラム、ベースサウンドが徐々に熱を帯びていくバンドサウンド。ポップなイメージの強い彼女の楽曲からは、一線を画す仕上がりになっている。また、「誰にもわからない」というタイトルには丸本自身の強い思いが込められており、映像作家・白石タカヒロ氏が監督を務めたMVでは2人のダンサーによって、その思いが美しくダイナミックに表現されている。今回のインタビューでは、丸本が2年間をかけて作詞・作曲を手がけたという「誰にもわからない」の制作秘話から、MV撮影、3rdミニアルバム『誰にもわからない~何が幸せ?~』の構想にまで迫った。

「何とも言えない気持ちを共感してもらえたら」

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ーー丸本さんのデビュー前の動画を見直していたら、そこで「将来の目標」を答えていたんです。その時にどう答えたか覚えていますか?

丸本:死んでも歌い継がれる名曲を残すこと……ですか?

ーーはい。「誰にもわからない」はそんな名曲だと思います。

丸本:ありがとうございます。この曲は先にメロディが浮かんだ曲です。歌詞をつける時にこの<誰にもわからない>というフレーズが出てきて、タイトルになりました。2年前に一緒に仕事をしていたカメラマンさんが心臓発作で亡くなってしまったんです。それからずっとモヤモヤした感情があって。2年間をかけて歌詞を書いていきました。

ーーずっと「誰にもわからない」を書きたいという思いがあった。

丸本:カメラマンさんが亡くなった後、その方の写真を見ていた時にメロディが浮かんだんですけど、これをどういう風に歌詞にしたらいいかずっと考えていました。それからしばらくして、芸能人の方の訃報のニュースを観ていた時に「昨日まで元気な人が次の日にはいないということが普通に起こるのだな」と、どうにも言えない感情を歌にしたいと改めて思ったんです。「未来は誰にもわからない」という感情が強くあって。

ーーこのタイミングでリリース出来たきっかけは何だったのでしょう。

丸本:今年4月に開催したファンクラブイベントで、今までリリースした曲に加えて普段歌うことができない曲も歌う機会があって、この「誰にもわからない」を歌ったんです。そこに、ビクターのプロデューサーも来ていて、「リリースする価値がある曲ではないか」と言っていただき、話が進んでいきました。

ーーその時に歌詞は全て出来ていたんですか。

丸本:すでに出来てはいたのですが、作詞家の藤林聖子さんに聴いた人がより共感できるよう少し手を加えていただきました。元々あった「彼」という表現ではなく「あの子」にしていただいたり、自分の感情をしっかり表現できるようアドバイスをいただきました。私がうまく言葉にできなかった部分に藤林さんが<温(ぬる)い笑い声>という言葉を当てはめてくださったり。

ーー<温(ぬる)い笑い声>という表現は、雑踏で人とすれ違う際の情景が思い浮かびますね。その後の<唇を噛んでた>の歌詞からは共に夢を叶えられなかった悔しさが伝わってきます。

丸本:ありがとうございます。カメラマンさんとは仕事帰りの電車で一緒に帰ったり、よく私の相談相手になってくださっていました。そこで彼が「俺はカメラマンとして有名になりたい」と話していたことは、もう叶えられないんです。悔しいと思ったけれど、私はまだ夢を叶えられるし、この曲を歌えば夢を追いかけようというポジティブな気持ちも思い出す。そして彼が生きていた証になればという思いもあって作った曲です。

ーー<でもあの日夢を語っていた あの顔ばかりが浮かんでくる>という歌詞ともリンクします。

丸本:<あの顔ばかりが浮かんでくる>という歌詞は1番、2番の両サビに入っているのですが、それぞれ意味は違っていて。1番はその方が亡くなった時の悔しさ、2番はあの時夢を語っていた情景を表していて、もがきながらも今私は生きている、その先にある幸せは何だろうという思いで書きました。

ーー丸本さんは癒やしをテーマにずっと活動されているわけですが、今作はこれまでにないアプローチの楽曲になりました。

丸本:“癒やしの歌声”をテーマに活動していますが、音楽を聴いてモヤモヤとした感情がなくなったり、元気になったりすることが癒やしであり音楽だと思っています。そして「誰にもわからない」では、どうにもならない感情も言葉やメロディで表現することができ、聴いてくれた方にとって希望も感じられる曲になったんじゃないかと思います。種類は違えど、これも癒やしの一部なのかなと思います。

ーー新たな表現方法を見出せたんですね。

丸本:そうですね。この様な経験は誰もが経験していくことですし、何とも言えない気持ちを自分はこう思っていたとか、こういう感情だよねと共感してもらえたらと思います。

ーーまた、曲の構成も面白いと思っていて、最初にAメロが来て、最後にまたAメロで終わる。これまでの丸本さんの曲にはあまりなかった展開ですよね。

丸本:この曲はAメロが出来た時から最後もAメロで締めたいなと思って作ったんです。最後は<今もすれ違ったような気がしたんだ>という歌詞にしています。全ての出来事が嘘で、彼がどこかで生きていてくれたりしたら良いなと思うこともあったりして。

ーー<それは何でもないような一日>という歌詞も一巡しているように感じました。

丸本:そうですね。完結していない、ずっと続いている感じで作りました。

ーーサウンドはピアノのイントロから入って段々とバンドサウンドで熱を帯びていく仕上がりです。

丸本:アレンジャーの松岡モトキさんに初めて手がけて頂いて、この楽曲の格好良さを最大限に引き出していただけたと思っています。ボーカルとバンドサウンドはスタジオで別録りしたんですけど、バンドを録る時も私がブースで歌わせてもらいました。バンドで一斉に録るグルーヴを経験して、メンバー一丸となって作れたと思っています。

ーーレコーディングメンバーも松岡さんのほかに、沖山優司さん、河村“カースケ”智康さん、渡辺シュンスケさん、宮田“レフティ”リョウさんと錚々たるメンバーです。

丸本:同じスタジオで歌うことはできたのですが、ボーカルはブースに分かれ、ヘッドホンをしての録音だったので、次は同じ空間で収録したいです。

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