THE NOVEMBERSが貫いたストイックな美学 11周年11月11日の演奏は“特別”だった

NOVEMBERSが貫いたストイックな“美学”

 エリック・サティのピアノ曲が流れる新木場Studio Coastに、続々と人が集まってきた。
 

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 通算6枚目のオリジナル・アルバム『Hallelujah』を携え、9月30日の心斎橋JANUSを皮切りに全国ツアーを駆け抜けたTHE NOVEMBERS。今日はその国内最終日となる11月11日であり、結成11周年目を迎えた彼らにとって、この日がどれだけ「特別」であるかは、ここにいる全員が知っていたといっても過言ではないだろう。

 開場に入って、まず目に飛び込んでくるのは大型クレーン。かねてから公式サイトなどでアナウンスされていた通り、この日の模様はクラウドファンディングによって集められた資金を元に、映像作品として記録されることになっていたのだ。(参考:「THE NOVEMBERS、11周年の11月11日のコースト公演を美しい映像で残す」

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 客電が落ち、どよめきのような歓声が上がる中、ジェフ・バックリーの歌う「Hallelujah」と共にメンバーが登場する。そう、奇しくもこの日に訃報が伝えられた、レナード・コーエンの代表曲とTHE NOVEMBERS最新作のタイトルは同じなのである。そうした折り重なる偶然に、しみじみと浸る間もなくライブは始まった。ジム・オルークの「Women Of The World」を彷彿とせるような、半音進行を駆使した小林祐介(Vo./Gt.)のリフに続き、大地を踏み砕くがごとき吉木諒祐(Dr.)のドラムスが鳴り響く。曲はもちろん、タイトル曲「Hallelujah」。後半に向かってじわじわと高揚していく構成は、まるでラベルの「ボレロ」のようでもあり、バックライトに照らし出された4人の姿は神々しくすらあった。

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 前半は、新作からの楽曲を中心としたセットリスト。軽やかなエイトビートの上で、突き抜けるようなファルセット・ボイスと湿り気を帯びたギターのアルペジオが絡み合う「風」、歪みまくった高松浩史(Ba.)のベースと、ケンゴマツモト(Gt.)のギターがユニゾンしながら突き進む「1000年」、そして、赤と緑のストロボを「これでもか」と言わんばかりに駆使した「!!!!!!!!!!!!!!(そしてバカはパンクで茹で死に)」、「Xeno」で最初のピークを迎えた。緩急自在のグルーヴを繰り出し、フロアの時間感覚を思い通りにコントロールするばかりか、光の点滅や色とりのフィルター、スイッチチェンジを使い分けた照明効果で、こちらの平衡感覚まで奪っていく。

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 まるで、体の境界線が曖昧になって音と同化していくような、不安と安堵が同時に押し寄せる感覚。極めつけは「236745981」(『Rhapsody in beauty』収録)で、ソニック・ユースもかくやと言わんばかりのギターリフと、気だるい歌声から超音波のようなハイトーン・ボイスまで巧みに使い分けるボーカル、そして、それら全てを飲み込むような怒涛のフィードバック・ノイズに、あらゆる感覚を麻痺させられ立ち尽くすしかなくなる。3年前、同じ場所でマイ・ブラッディ・バレンタインが放った15分にも及ぶフィードバック・ノイズの衝撃を、そのとき筆者は思い出していた。

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