ピコ太郎「PPAP」の“共通ネタ”としての強さ アルバムは音楽的切り口も楽しめる作品に

参考:2016年12月5日~2016年12月11日のCDアルバム週間ランキング(2016年12月19日付)(ORICON STYLE)

 韓国のグループがワンツーフィニッシュを決めた最新のアルバムチャート。特筆すべきはロングセールスを続ける宇多田ヒカル『Fantôme』とRADWIMPS『君の名は。』の動向……という話はここ数回の連載で毎度触れているような気がするが、どちらの作品も驚異的なロングセラーとなった。RADWIMPSに関しては最新作『人間開花』もランクインしており、ビッグタイアップの恩恵を最大限に受けた格好である。ここから年末に向けて2016年振り返り的なムードが強まっていく中で『Fantôme』『君の名は。』も一定の露出を果たすと思われるが、そういった動きが今後のチャートアクションにどう影響するか注視していきたい。

 さて、今回取り上げるのは3位にランクインしたピコ太郎『PPAP』。前述の宇多田ヒカルやRADWIMPSに負けず劣らずの今年を代表するビッグコンテンツ「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」を含むアルバムがオリコンチャートでも健闘している(本稿ではアルバムを『PPAP』、楽曲を「PPAP」と記載)。「PPAP」に関しては「ロング」バージョンなど6つのバージョンが収録されており、それ以外にもお笑いとテクノの融合した楽曲(と呼んでいいか迷うところではあるが)を多数楽しめる。個人的に好きだったのはハードロック調のトラックをバックにヒヨコとハトやスズメを仕分けしていく「ヒヨコ選別」。また、「PPAP」の「KOSAKA DAIMAOU REMIX」がブンブンサテライツを彷彿とさせるような切れ味鋭い仕上がりになっていたり、「KASHITE KUDASAIYO」の間奏のメロディアスなシンセのフレーズが切なさ成分満載だったり、音楽的な切り口で楽しめる箇所も用意されている。

 それにしても、今年の「PPAP」の爆発的なヒットは「何が当たるかわからない」というコンテンツビジネスの常識を改めて証明することになった。ただ、今回のケースには「ジャスティン・ビーバーのツイートによって大きく広がる」というわかりやすいきっかけがあり、しかもウェブ上での情報伝播は対面での口コミよりもトレースがしやすい。「ジャスティンが『PPAP』の何を気に入ったか」を分析したところで今後のコンテンツ作りに活用することは難しいと思われるが(そうやって抽出した成功要因をもとに作ったものが同じように面白い保証はない)、「どういう経路を通じて広まったか」という部分にはある程度一般化できる話が隠れているはずである。日本のコンテンツのグローバル展開を検討するにあたっての重要な示唆が得られる可能性もあるわけで、ネットワーク理論を研究しているような方々のトライを期待したいところである。

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