“2020年の東京”はどう歌われる? サザン、三代目JSB、椎名林檎、Sexy Zoneの曲から考察

“2020年の東京”はどう歌われる?

 「東京」を歌った曲はたくさんある。はっぴいえんど、桑田佳祐、松任谷由実(荒井由実)、ピチカート・ファイヴ、小沢健二、くるり、サニーデイ・サービス、銀杏BOYZ、きのこ帝国……ポップアーティストからシンガー、ロックバンドまで、これまでに多くのミュージシャンが「東京」を題材に、時代を越えて愛される名曲を生み出してきた。

 地方出身者から見た「東京」と、その地に生まれ育った者が見た「東京」。これまでの「東京」を歌った曲は、概ねその二極に分けることができた。故郷を恋しく思い出させたり、あるいは変わりゆく地元としてノスタルジーや哀愁を感じさせる街=「東京」。見る者それぞれが、ごく個人的な物語を投影する鏡であった「東京」だが、2020年に東京オリンピックが開催されることが決定してからは、「東京」はより巨大なもの、つまり日本の未来を見出すものとして、楽曲の題材となり始めている。

 たとえば、2016年11月にリリースした三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「Welcome to TOKYO」。

三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Welcome to TOKYO」

 メンバーの小林直己は音楽番組で「東京の過去・現在・未来がテーマ」と紹介しており(参考:http://realsound.jp/2016/11/post-9981.html)、東京オリンピックを明確なテーマとした曲ではないようだ。実際、同曲はオリンピックというよりは、最先端、進化した街としての「東京」が歌われている。EDMを基調とした曲調で、MVの舞台は、ネオンカラーに光る東京の夜の街。メンバーは首都高や渋谷の街中を外車で走り、東京湾でクルーザーに乗り、路地裏やクラブでダンスを踊る。この曲で歌われる「東京」は、ニューヨークやロンドン、パリといった世界の巨大都市と並ぶ、夜も眠らない華やかな街だ。オリンピックの開催という、文化的にも経済的にもインパクトの大きいイベントに向け動き始めた今、あらためて「東京」という街の価値を打ち出すーー同曲からは、そういった意図を読み取ることができるだろう。なお、リリース後のドーム・ツアーは『METROPOLIZ』(=メトロポリス)と銘打たれている。

 一方で、東京オリンピックを明確に意識したのが、Sexy Zoneの「2020 Come on to Tokyo」(シングル『King & Queen & Joker』のカップリング曲/2014年5月)だ。松井五郎が作詞を手掛けた同曲は、夢を追う人々の背中を押す応援ソングでありながら、世界中の人々で手を取り合おうという平和への願いも込められている。オリンピックは、そもそも世界平和を願う祭典だ。その大きなメッセージと、真正面から向き合った曲と言える。

 また、オリンピックを真正面から歌った曲としてもうひとつ挙げられるのが、椎名林檎の「13 jours au Japon ~2O2O日本の夏~」だ。椎名は2016年8月にリオオリンピック閉会式の『トーキョーショー』のプロデュースを手がけたことで話題になった。その翌日から配信がスタートした同曲は、フランシス・レイが作曲、1968年フランス・グルノーブル冬季オリンピックの記録映画のテーマとして書き下ろされた「白い恋人たち(13 jours en France)」が原曲となっており、椎名は、2020年の東京に馳せる思いを綴った新たな歌詞を書き上げた。

 椎名は、この曲の中でオリンピックを、いわば「13日間の祭り」と捉えている。「東京」という言葉は用いずに、<枝垂れ柳><菖蒲><菊>という花の名前を取り入れることで比喩的に日本の夏をイメージさせる。Sexy Zoneが世界平和という大きなテーマと向き合ったのに対し、椎名林檎は、一瞬の勝負にすべてをかけるアスリートの美しさや、それに熱狂する市井の人々、そして街の賑やかさと、その祭りが過ぎ去ったあとの静けさまでをも、細やかに描写している。

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