ディーン・フジオカがライブで提示する、ボーダーレスな「魅せるエンターテインメント」

ディーンの「魅せるエンターテインメント」

 2016年はNHKの『連続テレビ小説 あさが来た』や『IQ246〜華麗なる事件簿〜』(TBS系)に出演した他、『喧騒の街、静かな海』(NHK総合)で日本のTVドラマで初主演を務めるなど、俳優としてさまざまなTVドラマ/映画に出演したDEAN FUJIOKA。彼には、ミュージシャンとしての顔もある。特に2016年は、彼自身が「プロローグ・アルバム」と位置付けるデビュー作『Cycle』をファンの要望に応えてリリース。その後「JFL×TSUTAYA ACCESS」のキャンペーン曲「Hello radio」に岸田繁(くるり)やtofubeats、KREVA、木村カエラ、藤原さくら、YONCE(Suchmos)らとともに参加すると、大阪/東京でワンマン・ライブを行ない、フィギュアスケートを題材にしたTVアニメ『ユーリ!!! on ICE』(テレビ朝日系)にて主題歌「History Maker」を担当提供するなど、音楽活動も充実を極めていた。パシフィコ横浜 国立大ホールで行なわれたキャリア初の年末ライブは、そんな彼の多彩なルーツが窺えるものになった。

20170102-dean3.JPG

 

 ライブは冒頭、ステージ中央のスクリーンに世界地図が映し出され、日本、シアトル、香港、台湾、ジャカルタなど、彼が今まで訪れた場所が次々に示されていく。日本に生まれ、大学時代にシアトルに留学し、その後香港を皮切りに中華圏で俳優/モデルのキャリアをはじめ、ジャカルタで音楽活動のパートナー=DJ SUMOと出会い、08年から13年の間にアルバム『Cycle』を完成させる――。そんな彼のこれまでを彷彿とさせるオープニングだ。ステージにDJやキーボードを含む5人編成のバックバンドが並ぶと、後方からDEAN FUJIOKAが登場。上下/左右に光る照明をバックに、ヒップホップ・ビートとアコギ、エレクトロが融合したトラックにラップと歌を乗せた「My Dimension」で本編を始めると、原曲をトロピカルな80sポップ風に変化させた「Midnight Messenger」のmabanuaによるリミックス・バージョン、硬質のエレクトロ・ビートとギターが組み合わさったトリップホップのようなプロダクションの「Thirsty」など、『Cycle』の楽曲を次々に披露。ジャジーな「April Fool」では50年代のNYを思わせるスーツやドレスを着たダンサーが登場し、『雨に唄えば』を筆頭にしたMGMミュージカル映画のような世界観を作り上げる。

 一転、ジャカルタでDJ SUMOと出会い最初に作った曲「Banana Muffin Blues」では、自身もエレキ・ギターを手に熱量全開のフリーキーな演奏で会場の雰囲気を一変。直後には中国剣劇が始まるなど、音楽以外の要素も加えて観客を飽きさせない工夫が凝らされていた。しかし何より印象的だったのは、曲ごとに姿を変える多彩な音楽性。それは5カ国語を話すマルチリンガルとして国境を越え活動してきた俳優としてのキャリアにも通じるものだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる