SILENT SIRENが“てっぺん”に登るために選んだ道ーーブレない信念で挑んだ東京体育館公演

SILENT SIRENは“てっぺん”を目指す

 ユニバーサル ミュージック<EMI Records>への移籍。そして、Silent SirenからSILENT SIRENへーー。意表を突かれたような重大発表。それは彼女たちが、ガールズバンドとして、ロックバンドとして、てっぺんに登るために選んだ道である。

 「やっと言えたぁ」「沈黙期間長かったね」……発表のあと、そう口にした4人はどこか晴れやかな表情を見せていた。昨年2016年は全国ツアー、海外ツアーなど、ライブ活動は精力的に行っていたものの、3月のアルバム『S』リリース以来、新譜も表立ったメディア露出もなかった。そうした沈黙期間に「みんなが離れてしまうのではないか?」という懸念もあったというが、東京体育館には8000人のサイファミ(サイサイファミリー=ファンの総称)が詰めかけた。そこに対する安堵と信頼、そしてこれからの希望と自信に満ちているような、そんな表情をしていた。

 「終わらない夢、ずっと夢は続く」……そうした願いが込められた『Silent Siren 2016 年末スペシャルライブ Dream on!』は12月30日、東京体育館でファイナルを迎えた。

 バンドのマスコット・サイサイくんのオープニングアニメーションが終わると、ステージ中央に巨大なバルーンが。それが弾けると、中から4人が現れた。瞬く間にSILENT SIRENのファンタジーな夢の世界へと誘われていく。

20170115-ss5.jpg
すぅ(Vo. & Gt.)

 1曲目はサビ始まりにリアレンジされた「Stella☆」。〈そしたらいつか辿り着くよね 東京ーー!!〉と高らかに歌うすぅ(Vo. & Gt.)に、8000人が大歓声で応える。「LOST.W」「Ring Ring Ring」と久々の楽曲が次々と演奏されていくが、「間髪入れずに〜」という言葉では表現できない曲間にゾクゾクする。観る者の意識を自在に操るように次曲へと導いていくすぅのギターのカッティングとひなんちゅ(Dr.)のシンバルカウント。その絶妙なタイム感にいちいち身震いさせられるのだ。「女子校戦争」の暴れたバックビートから、溜めて溜めて次の瞬間、一気にビートを取り返していく「八月の夜」へ。あまりにスリリングな展開に目と耳を奪われたオーディエンスから驚きにも似た歓声が巻き起こった。

20170115-ss6.jpg
ひなんちゅ(Dr.)

 一切迷いのないひなんちゅのビート。低めにチューニングされたスネアが心地よく、異様なまでに抜けの良い音を響かせていく。そこに絡むように、グルーヴィーにうごめくあいにゃん(Ba.)のベース。この図太いリズム隊が現在のSILENT SIRENの音像を印象づける。一段と荒々しさを見せるすぅのギターと、きらびやかなゆかるん(Key.)の鍵盤が3F席後方まで鮮明に届く。昨年この会場で感じた、グっと重心が低くなったバンドサウンドに驚きを隠せなかったが、さらにずっしりとしたアンサンブルへと深化している。満ち溢れた自信と確信がそうした音に表れていることは、遊び心を交えながらさまざまな表情で魅せていくすぅの歌声が物語っていた。

20170115-ss8.jpg
あいにゃん(Ba.)

 久々に披露されたインディーズ時代の「セピア」では本ツアーのために作られたミュージックビデオが楽曲の世界観を映し出す。揺れ動くステップが印象的な「ユメオイ」では無数の映像モニターを使用しながらステージ上に作られていくファンタジーの世界にメンバーが溶け込んでいき、映し出されていく漫画の一コマにすぅが入って行った。「ストロベリームーン」ではすぅの腰掛けた三日月が宙に浮き、そのままピンクに染まった上空で歌う夢幻的な情景に心奪われる。

 近年のサイサイは、コンセプト、演出や衣装、セットリストに至るまでのトータルプロデュースをメンバー持ち回りで担当するツアーリーダー制を導入している。今回のツアーリーダーは「私が大好きな夢の世界、ファンタジーの世界をぎゅうっと詰め込みました」と語るゆかるん(Key.)だ。

20170115-ss7.jpg
ゆかるん(Key.)

「私がSILENT SIRENに入ったのは、大学を卒業して、社会人になってから。最初はどうしよう……? とも思ったけど、自分がやりたいという気持ちを信じたから、サイサイのメンバーとして、こうしてみんなの前でライブができています。自分があきらめない限り、夢はずっと続くものだと思う」

 ゆかるんはメジャーデビュー決定後に加入した。これまでバンド経験がなかった彼女であったが、サイサイにもたらしたものは大きい。サイサイがストイックなロックバンドとしての顔と、華やかなガールズバンドとしての側面のバランスをうまく融合させた独自のエンタテインメント性を確立させたのも、ひとえに彼女の存在が大きかったはずだ。持ち前の明るさ、ライブで扇動する振り付けはもちろんのこと、硬派なロックを好む他3人とは異なり、アイドルソングやJ-POPを好む音楽性は、楽曲の方向性をキャッチーでポップなものへと導くことだってある。

20170115-ss4.jpg

 

 ライブの後半はそんなハッピー番長・ゆかるん扮するDJ YUKAKOOのお出ましだ。ラストスパートへの起爆剤は、彼女が高らかに鳴らすホーンの合図で炸裂する。バイオリニストを目指していたひなんちゅがバイオリンを掻き鳴らし、バスケット選手を目指していたあいにゃんが3ポイントシュートをキメる、生まれ変わったらイケメンスターになりたかったすぅがローラスケートで滑走……と、それぞれが小さい頃に描いていた夢を実現させながら、センターステージへと躍り出る。最後に、マジシャンになりたかったゆかるんがメインステージのDJブースからセンターステージへとテレポテーションで瞬間移動。新体操で鍛えたアクロバティックな回転をキメると、ド派手なLEDサングラス姿で楽器を持たずに踊り狂う4人。そんなカオスティックな展開とフリーダムすぎる彼女たちにバンドを超越した何かを見た気がした。いや、この“バカ騒ぎ”が最高なのだ。前半で見せたロックバンドの姿はどこへいった? さっきまでの乙女チックでファンタジーな世界はどこへいった? この引き出しの多さもサイサイの魅力だ。そして、そのまま会場がダンスフロアと化した「DanceMusiQ」へ。

 ダンスビートから一変、祭囃子が響いた「What Show is it ? 」、みんな全力でタオルを回した「ぐるぐるワンダーランド」、すぅの表情芸冴え渡るミュージックビデオが流れた「吉田さん」と、怒涛のキラーチューンが続き、ラストは「チェリボム」。企画応募にて選出された精鋭サイファミによるチェリボムダンサーズがステージになだれ込み、さくらんぼダンスの大団円で本編は幕を閉じた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる