「PPAP」「恋のマイアヒ」…ネット発世界行きの音楽文化 新たな可能性は“LINEスタンプ”にあり?

 「インターネット発の音楽」というのはその音楽性こそ一括りにしにくいが、得てして本人たちの意図しない場所や人から火がつき、あっという間に世界へ広がっていく、というブレイクの道筋が共通して見て取れる部分はある。

 最近のわかりやすい例だと、3月6日に武道館公演も成功させた千葉県出身のシンガーソングライター・ピコ太郎の名前が真っ先に挙がるだろう。TR-808のリズムにスネアを重ねたトラックを効果的に使った音ネタ「PPAP」が国内のみならず、ジャスティン・ビーバーのTwitterから一気に全世界へ拡散。Spotifyの各国バイラルチャートでリミックストラックが軒並み上位へランクインするという快挙を成し遂げた。

 逆に懐かしいところを挙げてみると、O-Zone「恋のマイアヒ(原曲名:Dragostea Din Tei)」もその走りというべき楽曲だ。ルーマニア語の歌詞が“空耳”の日本語詞に置き換えられ、2004年にFlashサイトを中心にインターネット上でバズを起こすと、その人気は当時の2ちゃんねるユーザー界隈だけではなく、<飲ま飲まイェイ!>というフレーズがお酒を煽るコールにも使用され、今でいう“リア充”層にも波及。インターネット発の音楽がすべてのクラスタに波及するというのは、当時では前代未聞の出来事だった。

 O-ZoneがFlashを、ピコ太郎がYouTubeとSpotifyをそれぞれ活用したように、これらの盛り上がりには常に新たなプラットフォームの存在が不可欠だ。ピコ太郎が『SUMMER SONIC 2017』への出演を決め、次のステージへと進んだ2017年において、その系譜を受け継ぐ楽曲とは。これまでヒットが生まれていなかったプラットフォームを調べてみると、まだ「LINEスタンプ」から生まれた音楽文化がないことに気づいた。

 3月9日にはLINEがスタンプとともに音楽を送れる「MUSICスタンプ」をリリースし、その第一弾として乃木坂46を起用した。このプラットフォームに乗って進化するのは、LINEスタンプとYouTube、Twitterなどクロスメディアを駆使して多くの支持を得ている楽曲なのではないか。その可能性を持つコンテンツを探してみると、「けたたましく動くぺんぎん」(以下、けたぺん)というキャラクターにたどり着いた。

 同キャラクターは、「けたたましく動くクマ」で『LINE Creators Stamp AWARD 2016』で特別賞を受賞したクリエイター・たかだ氏の新作であり、なんとも言えないユルさとキモさ、そして汎用性の高さがまたしても人気を博しそうなデザインだ。まだスタンプとして発売はされていないが、恐らく近い将来たかだ氏の新作スタンプとして発売されることが予想される。そしてこのキャラクターには奇妙奇天烈な、だがしかし癖になるテーマソングが存在する。

イスケルダ Oh Eh Oh (feat.フラニータ) ~けたたましく動くぺんぎんのテーマたち~(ぁゆゆんver.)

 この動画はおそらく公式と思わしきアカウントが最初にアップしたもので、イスケルダというアーティストがスペイン人歌手・フラニータを迎えて作られた楽曲「Oh Eh Oh」に空耳の日本語詞を乗せ、それをガングロギャル・ぁゆゆんが紹介し、その前をけたぺんが踊る、というなんともカオスな映像だ。これを見ただけではコンセプトが散らかっているように思えるのだが、次の動画を見終わった瞬間「あれ、これはもしかしてブレイクするのでは?」とワクワクさせられた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる