『関ジャム』プロデューサーに聞く、“マニアックでポップ”な音楽番組の作り方

『関ジャム』Pが語る「番組の裏側」

 音楽の魅力を広く伝えるメディアとして、大きな機能を果たすテレビの音楽番組。CD全盛期に比べて番組数が減少する中、それぞれ趣向を凝らした番組づくりが行われている。そんななかでも一際目立つ番組をピックアップする連載『テレビが伝える音楽』。第二回では『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)で演出・プロデューサーを務める株式会社テレビ朝日・総合編成局第1制作部の藤城剛氏を迎え、同番組が立ち上がった経緯や、マニアックな視点をポップに伝えるための工夫、なぜ斬新な切り口を毎回提示できるのかという部分まで、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「『Mステ』とは違うやり方で『ゲストの何が凄いか」を提示したい」

ーーまずは藤城さんの経歴について教えてください。

藤城:僕は『関ジャム 完全燃SHOW』(以下、『関ジャム』)に携わるまで、音楽番組に関わったことがなかったんですよ。入社してすぐ『金曜★ロンドンハーツ』の前身番組『イナズマ!ロンドンハーツ』にADとして配属され、今でもディレクターとして携わっています。その後も同じ班の中で「アメトーク」や「坂上忍の成長マン」などに携わっていたので、基本的に芸人さんをメインに仕事をさせてもらっていたのですが、一昨年の春に『ミュージックステーション』などを担当するチームから「関ジャニ∞で音楽バラエティを立ち上げるから演出としてどうか」と声をかけてもらい、今に至ります。

ーーテレビマンとしてはバラエティの現場で育った藤城さんが、その経験を『関ジャム』に一番活かせていると思うポイントは?

藤城:基本的には「オリジナリティー」とか「わかりやすく」というくらいでしょうか。ゲストを迎えるホスト役の関ジャニ∞のメンバーは、その部分において大きな役割を果たしてくれていますし、自分がこれまでご一緒してきた芸人の皆さんも、素人目線でアーティストに切り込んでもらっています。あとは『ロンドンハーツ』のドッキリ企画を通して、ドキュメント形式で展開するバラエティの作り方や、出演者の裏側がどうなっているのかを知りたいという興味ですね。『関ジャム』の場合は、それが『ミュージックステーション』でライブでの輝きを見せてくれるアーティストたちの裏側に当てはまるわけで。華やかさの裏側で、「曲作りにどんな苦労があるのか?」「締め切りとか大変じゃないのか?」とか、そんな部分もバラエティ的に見せられたらいいなと思っていますし、編集もかなり細かく、わかりやすさを追求してやっているつもりです。

ーーまさに、音楽番組としてもバラエティ番組としても見やすいというのが『関ジャム』の特徴でもあると思います。番組のコンセプトはどのように決まったのでしょうか。

藤城:元々は2世代のアーティストをゲストに迎えて、関ジャニ∞がゲストの人となりを探ったりしながら、最後は一緒にセッションをする、というコンセプトの音楽バラエティでした。僕としては音楽の知識は人並みかそれ以下なので、どうしようかなと考えて「音楽のことをしっかり聞く側面と、そこから離れたところにあるアーティストの一面をフィーチャーする」という形にできないかなと。第一回は岸谷香さんと西野カナさんだったのですが、事前打ち合わせで西野さんから「楽曲制作をする際に企画書を作る」と聞いていて、面白そうだと思い、番組でそのメモ自体を紹介させてもらったんです。こうやって音楽のことも取り上げつつ、『ロンドンハーツ』をやっていた人間としては普段は聞けないアーティストの色んなことも聞きたくて(笑)。お2人のマネージャーさんに取材をし、その裏側を発表するという企画もオンエアしました。

ーー番組コンセプトの根幹にあるものとは。

藤城:「アーティストの方のすごさをどうやったら伝えられるか」ということに尽きると思います。それを生放送の歌唱をメインに伝えるのが『ミュージックステーション』だとしたら、『関ジャム』はそうじゃないやり方で「ゲストの何がいかに凄いのか」を伝えれればと。

ーー「2世代のアーティストを~」という方向性が変わったのはなぜでしょう?

藤城:単純に先ほど挙げた2つの視点で作り続けるよりも、1組のゲストに絞って、音楽の話をがっつりと聞くほうがよりオリジナリティーが出るかな、と考えるようになりまして。そのキッカケの一つがゲスの極み乙女。さんのゲスト回(2016年1月10日放送)です。事前の打ち合わせで曲作りの方法を訊いたとき、「レコーディングスタジオに入ってそこから考える」と言われて「そんなこと本当にあるのか……?」と思い、収録の際、支配人の古田新太さんから「渋谷・センター街・24時・牛丼屋に1人でいる女……」とテーマをアドリブで出してもらい、その場で短い詞曲を作ってもらいました。他のメンバーがトークしている間に川谷絵音さんがスマホで作詞をメモして、セッションで曲を作り上げていくところまでドキュメント的に放送したら、すごく反響があったし、僕自身も手応えを感じて。淡々としたシーンも「ここで〇〇分が経過……」と間をはしょっちゃいがちなのですが、「このままの方が面白い」と思ってほぼノーカットでオンエアしました。

ーーこの回は音楽制作を追体験して見ているような感覚になって、すごくドキドキしました。

藤城:この回を機にアーティストの曲作りの凄さをどう伝えたら、視聴者の方に興味を持ってもらえるかを、より考えるようになりました。ゲストの方にとっては当たり前のことでも、そこを番組側や関ジャニ∞がどう拾い上げていくか…その手がかりをいただいた回だと思っています。

ーーコアな部分を掘り下げつつ、それが最終的にポップなものに映るのは、制作チームの力に加え、関ジャニ∞のスキルが大きいようにも思えます。音楽についても造詣の深いメンバーが多く、例えば先日の『2016年ベストソング』回(1月8日、15日放送)では、tofubeatsさんによるピコ太郎「PPAP」分析の流れで、渋谷すばるさんがヤオヤ(TR-808)使いだとわかり、SNSで大きな反響がありました。

藤城:メンバ−7人の音楽への情熱をとても感じます。こちらからお願いしておいてなんですが、毎週毎週ゲストの曲を共にセッションすることは本当に大変でしょうし(笑)、初回収録前日のリハを見て「こんな凄い空気で、懸命に作り上げてるのか」と感じまして……。どうやったらこの緊張感をお伝えできるかと考え、セッションの前後を足してドキュメント感を強調しています。関ジャニ∞は音楽のプレイヤーとして細かいところを質問してくれるし、一般の方に伝わりづらいなというタイミングでは噛み砕いて訊いてくれる。セッションを共にした、ということで心を開いてくれるゲストの方もいるでしょうし。ホストでありプレイヤーでもある関ジャニ∞の個性がお見せできているのでは、と思います。

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