Charisma.comが語る、新サウンドへの挑戦 「やるって決めたら徹底的にやったほうがいい」

Charisma.comが語る、新サウンドへの挑戦

 ニューアルバム『not not me』によって、Charisma.comの音楽性は大きな変貌を遂げた。サウンド面に関しては、PABLO a.k.a.WTF!?、Cibo Matto、ALI-KICK、西寺郷太(NONA REEVES)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、蔦谷好位置といった多彩なプロデューサー陣を起用。従来のエレクトロ路線から、生楽器の響きを活かしたファンク色の強いレア・グルーヴ路線へと一気に振り切っている。また、リリックにおいても“OLの毒舌”というイメージから脱却し、現代社会における漠然とした不安、アイデンティティを巡る繊細なテーマを描き出すことに成功している。

 勤めていた会社を辞め、OL兼ヒップホップ・アーティストからオールタイム・ミュージシャンとなったMCいつか、DJゴンチにとって、最初の勝負作となる『not not me』。その制作の背景と現在のモードについて訊いた。(森朋之)

「“好きなことをやらせてもらいます”という感じになった」(いつか)

ーー2016年11月の「OL引退宣言」から4カ月ほど経ちましたが、環境の変化には慣れましたか?

いつか:あまり実感はないんですけど、夜遅くなっても次の日のことを気にしなくていいっていうのはありますね。(OL時代は)朝起きるのが大変だったので。メジャーデビュー前の『DIStopping』くらいが肌荒れのピークだったんですよ(笑)。寝不足すぎて、治癒力もなくなってたし。

ゴンチ:私はそんなに変わらないですね。日によって寝る時間が違うほうがダメっぽいです(笑)。

いつか:そうなんだ(笑)。まあ、OLを辞めたら辞めたで、いままでとは違うプレッシャーもあるんですけどね。

ーープロのアーティストとしての責任感?

いつか:そうですね。片手間でやってる感は出したくないなって……今まで片手間でやってたわけじゃないですけど、「まあ、OLさんだからね」という見え方も少なからずあったと思うので。それが一切なくなったのは、ちょっとプレッシャーです。OL辞めてから、肩こりがひどくなったんですよ。

ーー無意識のうちに力が入ってるのかも。

いつか:ちょっと堅く考えすぎなんですよね。だからなるべく力を抜いて、ふざけるようにしてます。

ゴンチ:ははははは(笑)。

いつか:マジメにやることも大事なんですけど、ずっとそうだと息が詰まっちゃうじゃないですか。多少はふざけていたほうが周りの空気も良くなる感じがするし。それを意識してないと、ついマジメなところが出てきちゃうんですよ。でも、そこは誰にも求めらてないので。

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いつか

ーー自分たちに求められていることも考える?

いつか:うーん、考えてた時期もあったんですけど、よくわからなくなってますね。「こういうことをやったらインパクトがあるし、楽しいんじゃないの?」と思ってやってみても、意外とそうでもなかったり。昔から応援してくれてる方は、特にそういう傾向があるみたいですね。こういう言い方をしたらアレだけど、「だったら、あまり気にしないほうがいいのかな」と思うようになって。「私は私の道を行こうと思います。ごめんなさいね」という感じです、いまは。

ーーギャップがあったとしても気にしないと。

いつか:はい。ギャップみたいなものはいつもあるんですよ。ずっと応援してくれてる人たちも本当に私たちを知ってるわけではないから、想像を膨らませて「こういう人たちなんだろうな」って思ったりするみたいで。そこで「違うけど」って言ってもしょうがないよねっていう。たとえばメジャー1stのミニアルバム(『OLest』)のときは「常に怒ってる」と思われてたり。そんなわけないんですけどね(笑)。

ーーいつも毒を吐いてるイメージというか。

いつか:そうそう。かと思えば「毒を吐いてるけど、じつは……」みたいに深読みする人もいて。素直に言ったことを逆の意味に取られたり、まあ、いろいろありますね。「わかっていたい、理解したい」と思ってくれてるんだろうなって。

ゴンチ:そうだね。

いつか:そこを上手くやっていくことが必要なんだなって思います。

ゴンチ:私はそこまでギャップは感じてないですね。わりとそのまま受け取られているというか、「違うんだけど」と思うことも少ないので。いっちゃんのほうが大変だと思います。

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ゴンチ

ーーポップミュージックという枠で考えると、リスナーが抱いているイメージを引き受けたり、ニーズに応えることもときには必要ですよね?

いつか:たぶん、そこは無意識のうちにやってるんじゃないかな。あまり気にし過ぎるのも良くないと思うし……。いまのところはそういう結論です。

ーー「OL引退宣言」に対するリアクションはどうでした?

いつか:それも思ったほどではなくて。Charsma.comのことをちょっと知ってる人からは「あ、OL辞めたんだ」みたいな反応があったんですけど、ファンの人たちは特に気にしていないみたいです(笑)。「OLがラップをやって、現実的なことを歌っている」というイメージがなくなるわけだし、「大丈夫なのかな」と思ってたんですけどね。それもあって「だったら好きなことをやらせてもらいます」という感じになったのかも。

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