HIPHOP普及を支えたラジオという存在 Zeebraが発足させた「WREP」開局を機に変遷を辿る

 今までありそうでなかった“HIPHOP専門”のラジオ局。そんなラジオ局「WREP」が4月1日に開局された。発足人はなんとZeebra。インターネットラジオではあるが、24時間HIPHOPが楽しめる本格的なチャンネルである。AbemaTVなど、インターネットTVも登場している中で「なぜ今ラジオなの?」という声もあったが、実際に始まってみると中々好調のようだ。これからどんどん番組も充実していくことだろう。

20170424-wp1.jpg

 

 そもそも、日本でHIPHOPが普及したその陰には、ラジオというメディアの存在があった。90年代の半ばから日本でも本格的にHIPHOPカルチャーが沸き起こるようになったが、90年代後期、B-BOYたちの情報源としての役割を果たしたのがラジオだった。今だにアラサー以上のB-BOYに語り継がれているのがJ-WAVEの『Hip Hop Journey Da Cypher』だ。女性MCのRIKOが当時の最先端のHIPHOPをMUROや渋谷宇田川町界隈のレコード屋のバイヤーと共に紹介するという革新的な番組だった。著名なDJによるプレイはもちろんのこと、ゲストのMCがフリースタイルをするなど、土曜深夜の番組にも関わらず、充実した番組内容に当時のB-BOYは皆夢中になって聴いていた。

 また、平日の深夜はMC RYUによる『SOUL TRAIN』(J-WAVE)もアッシャーなどの人気シンガーをゲストに迎えるなど、大きな盛り上がりを見せていた。当時高校生だったあたしも、深夜1時という時間帯に眠たい目をこすりながら必死にラジオを聴いた。好きな曲が流れればカセットテープ(のちにMD)に録音して繰り返して聴いたり、新譜を買う時の情報源にしていた。なによりもRIKOやMC RYUのキャラクターに親近感を覚え、メールでメッセージを投稿するようになり、メールが読まれた時の喜びというのは本当に大きかった。他にもJ-WAVEではDOUBLEやMISIAなどのラジオ番組もあり、それぞれ最新のR&Bを楽しむことができた。このように、HIPHOPの盛り上がりにラジオは欠かせないメディアだったのだ。その後発にはなるが、2000年には『流派-R』(テレビ東京系)というHIPHOPに特化したTV番組も登場。MTVなどでもVJ鉄平を迎えて、盛んにHIPHOPを流したりもしていた。しかし、やはりメディアとしてはラジオの方がシーンとして果たす役割は大きかったように思う。『blast』や『bmr』などのHIPHOP雑誌と共に多くの人々の元へHIPHOPを届け続けたのだ。

 時代は変わりインターネットが普及すると、HIPHOPに特化したメディアとしてはDOMMUNEやAbemaTVといった配信型コンテンツがラジオのかわりに人気を集めるようになった。特にAbemaTVのHIPHOPへのアプローチは積極的だ。MCバトルの生中継や人気ラッパーが時事問題についてラップでディベートをする「NEWS RAP JAPAN」、MC漢が都内を歩き回りながらリポートをする「漢たちとおさんぽ」、そしてCOPPUやTKda黒ぶち、太尊などの現役ラッパーが豪華なゲストを迎えてHIPHOPの話題を提供する「らっぷの時間」など人気番組が目白押し。その他にもblock.fmやRakuten.FMというインターネットラジオも登場し、それぞれコアなファンから支持されている。もちろん、地上波ラジオやテレビといったメディアのコンテンツも決して衰えてはいない。J-WAVEでは昨年よりACEとDOTAMAがナビゲートを務めるフリースタイルバトル番組「WORD FREAK」の放送を開始。掌幻やKMCなどのラッパーがバトルに参加し、ラジオでMCバトルを楽しめる。そして、忘れてはいけないのが『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)。もう説明が不要なくらい有名な番組だが、間違いなく現在のMCバトル人気に大きく貢献した一つである。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる