Flowerが『MOON JELLYFISH』で迎えた転機「殻を破って新しいFlower像を出していかなきゃ」

Flower×レーベルスタッフ特別対談(後編)

 Flowerが4月26日にリリースする14thシングル『MOON JELLYFISH』を巡るインタビューの後編。今回はメンバー全員に加え、グループを初期からサポートするソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズの平井拓氏も参加し、前編ではグループのコンセプトやメンバーたちのクリエイティビティがどう養われているかといった表現論について訊いた。後編では、最新作『MOON JELLYFISH』について、作品のテーマや振り付け制作のポイント、MV制作の裏側やこれからのFlowerについて話が展開した。(編集部)

「新しい自分らしさの突き詰め方だと感じた」(鷲尾伶菜)

ーー最新作『MOON JELLYFISH』は、どういったコンセプトを軸にして制作がスタートしたのでしょうか。

平井拓(以下、平井):まずは「ジェリーフィッシュ」というキーワードがあって、そこからイメージを膨らませるように作っていきました。楽曲自体は割と春らしく、夏へ向かっていく季節にマッチするような曲調ですね。恋愛が始まって、高まってるからこその幸せや不安な気持ちが表現されてるように思います。最近の楽曲では「他の誰かより悲しい恋をしただけ」や「モノクロ」のように、影や強さの目立つ女性像が描かれていたと思うんですが、今回の表題曲では、メンバーと等身大のパステルカラーな恋愛感が映し出されている。多面体であるFlowerの新たな一面が見せられる曲に仕上がっています。

ーー前作の「モノクロ」「カラフル」は、両A面楽曲で対のコンセプトを描いていましたが、共に歌詞は前向きな印象がありました。今回は楽曲こそ明るいものの、作品を通して失恋のテイストが多いシングルになっているかと思うのですが。

鷲尾伶菜(以下、鷲尾):メロディが決まる前、Flowerと作詞家の小竹正人さんやHIROさんと次の曲について打ち合わせをさせて頂いた時に「海月がいいんじゃないか」と話が出たんです。楽しみに曲と歌詞が上がってくるのを待っていたら、恋愛と海月のゆらゆら揺れてる感じがマッチしていたり、男性を海月に例えてみたりと表現の仕方がすごくオシャレで。メロディはすごく明るくてキラキラしているのですが、ところどころ<君の見てる真実が分からない>というFlowerらしい世界観も入っていて、新しい自分らしさの突き詰め方だと感じました。

坂東希(以下、坂東):楽曲については、スタッフさんにデモを10曲ぐらい選曲していただいて、その上でメンバー全員が意見を出しながら決めていきました。トラックがキラキラしているからこそ、苦しかったり聴いていて切なくなるような感覚もあって、すごく好きな曲です。

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鷲尾伶菜

ーーシングルの表題曲でいうと、ここまで爽やかなのは「Blue Sky Blue」ぶりかもしれないですね。楽曲面においては、コンセプト段階からもかなり話しあったということですが、平井さんとしては具体的にどう彩りを加えていったのでしょうか。

平井:ボーカルに関しては、曲と歌詞が上がったあとに小竹さんと鷲尾さんとマネージャーさんと僕で譜割りを確認するために歌い合わせをするんです。その時に鼻歌で右隣から鷲尾さんが譜割りを合わせるために歌っていたのですが、すでにある程度楽曲に沿った表現方法で歌っていたのでこの段階で「これはすごくいい曲になる」と確信して、あとはそこから脱線しないよう、丁寧に道を作っていきました。楽曲は恋した時の痛かったり痒かったりする気持ちをキラキラした言葉を以って描き出すタイプのものだったこともあり、今回表現するのは、Flowerという多面体にカットされたダイヤモンドのあまり見せない輝きのひとつなのかな、と思いました。リスナーが、過去の恋愛を思い出したときにふと流れ出すメロディに仕上がっていたら嬉しいです。海月に刺された傷って致命傷にはならないけど、痛痒くて何をしていても気になっちゃうような痛みじゃないですか。そういう恋愛をしている人のバックグラウンドミュージックで流れてくるようなものになってほしいです。

ーー海月に刺された傷ですか。なるほど面白い例えですね。

メンバー全員:拓さんさすがです(笑)!(このあとしばらくメンバーによる賞賛の声が続く)

ーー(笑)。ちなみに前編では、平井さんから「歌声の部分は鷲尾さんが担保して、パフォーマーは視覚で歌う」という言葉が出てきましたよね。これはFlowerを言い当てる素晴らしい表現だと思うのですが、各メンバーは今回の楽曲でその点をどう表現したのかを、自分が担当した振り付けパートと合わせて教えてください。

中島美央(以下、中島):初めてメロディを聴いた時は、Flowerにとってすごく新しいテイストの曲調なのかもと思ったんですけど、そこに歌詞が嵌まったものを改めて聴くと、Flowerがこれまで築いてきた世界観を崩さずに作り上げられていて、「小竹さん、流石だな……」と。振り付けを自分たちで作り上げていく中でも、その感覚はヒントになっていて。どうやって今のFlowerに新しい要素を取り入れつつ、世界観を壊さずに表現するかを考えました。この曲に関しては、久々に全員で振り付けを作ったのですが、かなり時間をかけて相談して、最終的には一人ひとりが考える「MOON JELLYFISH」を表現できたと思います。私は1Bを担当したのですが、結果的には一周回って、海月の揺れ動く美しい動きを意識しながら、Flowerの一体感をなるべく出せるように心がけました。

坂東:さっき拓さんが言ってくださったように、この曲は聴けば聴くほど苦しくなるんですよね。曲が明るいからこそキラキラ眩しすぎて直視できないタイプの切なさというか。それはFlowerらしい世界観だと思うんですよ。私は2Aを担当したんですが、そのポイントを掘り下げて、表と裏みたいなものを自分の中で解釈してパフォーマンスするのが楽しかったです。

佐藤晴美(以下、佐藤):私は初めてコンセプトを聞いた時、「海月ってどういう風に動くんだろう?」と疑問に思ったので、実際に水族館へ見に行ったんです。何を考えてるか分からないけどあっちこっちへ動いたり、急に2匹がくっついたり離れたりしてすごく不思議な動きで、ダンスにも生かせるんじゃないかなと思いました。私が担当した振り付け部分では2匹がくっついた時のようなニュアンスで、全員が一緒の動きをするシンクロ感を意識しました。さっき美央さんが「Flowerの全体感を見せる」と言ってくれましたが、確かに私も全体感が見えるように自然と踊ってましたね。

重留真波(以下、重留):MVに関しては色んなシーンが多くて、セットも3パターンぐらいありました。水槽を使ったセットに関しても、最初は明るめのセッティングで撮ったけど、監督さんと話して暗めに変えて撮ったらすごく綺麗に映るという発見もできたんです。振り付けは1番のAメロを担当しました。頭で振りを色々組み合わせて作るのが私のやり方なんですが、歌詞で<追えば離れるのに 離れたら追ってくる>という部分があって、そこでは駆け引きのように見える動きを入れています。いつもはMV用の振り付けと、番組やライブで踊るパフォーマンスを少し変えたりしているんですが、今回は一人ひとりの歌詞や自分のパートに込めた思いがハッキリしていたので、MVでもテレビでも同じように作った部分を生かしたいよねと話し合って、実際にあまり変えないような振り付けにしました。

藤井萩花(以下、藤井):自分たちで振り付けをするにあたって、以前はやっぱり全体のバランスを考えていたのですが、今回は自分の振り付けするパートにとりあえず全力を注いで、それを集約して一つの作品にしたという感覚です。最終的には、どんな曲調であれ、Flowerの曲には必ず孤独があるなと感じて、「幸せだけど悲しい」みたいな表現にしようと思いました。私はサビの振り付けを担当したのですが、歌詞については<読み取れない眼差し>のように想像しやすい、画が浮かびやすい表現がすごく多かったぶん、どうしてもキャッチーすぎる振りになってしまい、バランスをとるのに苦労しましたね。Flowerの曲って移動が結構多いのですが、今回は疾走感や躍動感をつける意味合いもあって、特に多いかもしれません。

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藤井萩花

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