ねごと、WEAVERはなぜダンスミュージックを志向した? “ピアノ”の特殊性から考察

 2010年にデビューしたねごとと2009年にデビューしたWEAVER。2組のピアノロックバンドには、ひとつの大きな共通点がある。それは、デビューの数年後にサウンド面における変革を行ったこと。ねごとは2016年11月リリースの『アシンメトリ e.p.』から、WEAVERは2016年2月リリースの『Night Rainbow』から大幅に路線変更。そしてそのどちらもが、ダンスミュージックだった。

 ここで改めて両者のバイオグラフィを振り返ってみると、それ以外にも似ている部分が多い。まずは、10代限定のオーディション型フェス『閃光ライオット』(2008年度)に出演していたこと。WEAVERは決勝進出こそ逃したものの大阪3次審査に出場、そしてねごとは決勝の場で審査員特別賞を受賞した。その2~3年後には、ねごとの場合は「カロン」が、WEAVERの場合は「僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~」がau『LISMO』のCMで大量オンエアされるほどに。当時その枠に起用されていたのは、いきものがかりやSuperfly、YUIなど、若手ながらヒットソングを生み出したアーティストばかり。つまり2組とも、若いうちからその実力が認められ、将来に期待を寄せられていたということだ。

 周囲からの期待に応えながらも着々とリリースを重ねていった2組だが、その道のりの途中で、両者ともに自らのバイオグラフィにひとつ区切りをつけるような行動に出る。ねごとは2015年6月のシングル『DESTINY』以降はしばらく新曲をリリースせず、制作期間に突入。その約半年後には“7時間にわたって出演者はねごとのみ”という前代未聞の自主企画イベント『お口ポカーンフェス?! NEGOTO 5th Anniversary ~バク TO THE FUTURE~』を開催し、バンドの持つ様々な側面を改めて提示するような一日を作り上げた。一方WEAVERは、2014年に半年間イギリス・ロンドンへ留学。さらに留学中の同年6月には、それまでの代表曲をまとめたベストアルバム『ID』をリリースした。

 タイミングは違えど、2組がそれまでの歩みを一旦取りまとめるような行動に出たのはなぜか。その背景には、メロディもコードもリズムも奏でることのできるピアノという楽器の特殊性がある。そもそもこの2組がデビューした当時は、バンドの中に鍵盤(ピアノ、キーボード)を弾くメンバーがいることも、ましてやバンドの真ん中に立つボーカリストがそれを弾きながら歌う姿もなかなか新鮮なもので、その編成自体が異彩を放っていた。

 そんな中、ピアノという楽器の幅広い可能性を活かすように様々なタイプの楽曲を生み出してきたのがねごと。しかし『アシンメトリ e.p.』リリース時のインタビューで沙田瑞紀(Gt.)が「結構『VISION』でやり切った感があって、「次どうしよう?」って感じだったんですけど、それは不安の「どうしよう?」ではなくて、「やれること広がっちゃったな」って感じだったんですよね」と明かしているように、4人の可能性はどこまで行っても広がるばかり。

 一方のWEAVERは、『Night Rainbow』リリース時のインタビューで奥野 翔太(Ba.&Cho.)が「(本当に自分たちが鳴らしたい音楽っていうのが見えてなかったというか。ピアノ・バンドっていう特殊な編成に、自分たちが縛られてしまってた」「ロンドンに留学することで、自分たちがいた状況を俯瞰できたっていうのはあって。留学がサウンドの幅も広げてくれたし、「もっとやりたいことをやっていいんだ」っていうのを教えてもらったなって」と話しているように、自分たちの中で凝り固まっていた部分が留学をきっかけにほぐれていったようだ。

 つまり、両者ともに活動を続けるなかで“自分たちが鳴らせること”の選択肢が増えていったからこそ、その中から次なる一手を選ぶために改めてバンドの“これまで”を整理しておく必要があった、ということ。その後に生まれた変化作がねごとにとっては『アシンメトリ e.p.』であり、WEAVERにとっては『Night Rainbow』だったのだ。

 あえてジャンル分けをするならば現在この2組が鳴らしている音楽はどちらもダンスミュージックではあるが、両者がダンスミュージックを目指した理由と目的は大きく異なっているため、当然そのアウトプットの形も違ってくる。

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