亀梨と山下の“ディスコ歌謡”は12年でどう変化? 亀と山P『背中越しのチャンス』収録曲を読み解く

参考:2017年5月15日~2017年5月22日のCDシングル週間ランキング(2017年5月29日付・ORICON STYLE)

 亀梨和也と山下智久のスペシャルユニット、亀と山Pが『背中越しのチャンス』を5月17日にリリース。二人が主演するドラマ『ボク、運命の人です。』(日本テレビ系)の主題歌となったこの曲を収録したシングルが発売初週に17.5万枚を売り上げ、2017年5月29日付の週間CDシングルランキングで1位になった。

 亀梨和也と山下智久と言えば、12年前に2005年に「青春アミーゴ」でタッグを組んだ二人。この曲はテレビドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)の主題歌だったということもあり、その時のユニット名は役名からとった「修二と彰」だった。が、公式ページにも「“青春アミーゴ”からおよそ12年、それぞれの道で互いに成長し、再びユニットを組むことになったその必然性と、聴く人の心に残る懐かしさが印象的な、今の2人だからこそ表現できる明るく、そして暖かな楽曲です」とある。つまり、制作陣も「青春アミーゴ」からのつながりを意識して今回のシングルを作ったわけだ。

 実際、表題曲だけでなく、カップリングまで含めて聴くとそのことがありありと伝わる一枚になっている。というわけで、この記事では楽曲分析を通じて、その「12年ぶりの必然」と「今の時代に2人が再びタッグを組んだ意味」を読み解いていこう。

 「青春アミーゴ」は、2005年のオリコン年間1位となった一曲。「アミーゴ」がスペイン語で「友達」という意味であることも象徴的なのだが、この曲調の大きなポイントはラテン・ディスコであるということだ。

 当サイトで矢野利裕さんが指摘しているように、日本のポピュラー音楽には、そしてジャニーズのアイドルポップにはラテンの系譜が色濃く根付いている。近藤真彦「アンダルシアに憧れて」やKinKi Kids「硝子の少年」など、ラテンやスパニッシュ音楽のメロディセンスを哀愁あふれる日本の歌謡曲として打ち出したジャニーズの名曲は多い。その系譜に「青春アミーゴ」もある。

 今回のシングルでそこからの系譜を明確に意識しているのは、通常盤収録のカップリング「逆転レボルシオン」だ。「レボルシオン」というのはスペイン語で「革命」の意味。つまり「漢字二文字の熟語+スペイン語」というタイトルにおいても「青春アミーゴ」と対になる仕掛けとなっている。

 当サイトにはこの曲の作詞を手掛けたzopp氏へのインタビューも掲載されているが、そこでもこの曲は「まさしく“『青春アミーゴ』のアンサーソング”となっています」と語られている。実際に、歌詞にも〈アミーゴのその向こう まだ見ぬ世界へと〉とあり、一度聴けばそのことが伝わるような仕掛けになっている。

 「逆転レボルシオン」は、歌詞だけでなく曲調もラテン歌謡そのものだ。イントロから豪勢なストリングスとホーンが曲を彩り、Aメロではボンゴの切れ味あるリズムが見せ場を作る。メロディも、ピアノやギターのオブリガードを筆頭にしたアレンジの数々も、スパニッシュ音楽を日本の哀愁に転換した歌謡曲のテイストがふんだんに用いられている。

 では表題曲「背中越しのチャンス」はどうか。

 こちらにラテン歌謡の匂いはない。イントロは乾いた歪みのギターリフから始まる。スパニッシュというより70年代アメリカン・ロックを彷彿とさせるテイストだ。そして、全体的にも哀愁というより、からっと乾いた大陸的でおおらかな空気がある。たとえばBメロの「♪フーッ!」「♪フーワフワフワ」という合いの手など、参照元になっているのはアメリカのオールディーズ・ポップスやロックンロールだ。サビのストリングスのアレンジも、フィリー・ソウルに通じるものになっている。サビ後にギターソロが入ってくるのも特徴的。同じくディスコ歌謡でも、ラテンやスパニッシュではなく、アメリカを意識したものになっている。

 この曲の作曲を手掛けたのは、作曲家のイワツボコーダイ。西野カナ「Have a nice day」の作曲家でもある。この「Have a nice day」もアメリカのオールディーズ・ポップスを下敷きにしながら、曲展開とテンポをより速めることで軽快な四つ打ちのJ-POPにブラッシュアップしたナンバーで、「背中越しのチャンス」にもそれと通じる、今の日本の音楽シーンの王道となるテイストが貫かれている。

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