堂本剛がラジオで明かした、“アーティスト”としてのスタンス 『Fashion & Music Book』を聞く

 この夏、堂本剛が『SUMMER SONIC 2017』(8月19日東京、20日大阪)、『イナズマロック フェス 2017』(9月17日)に出演する。剛がソロデビューを果たしたのは、2002年のこと。ソロでのシングルリリースはもちろん、自作曲でのデビューは剛がジャニーズ史上初だった。15年の時を経て、夏フェスにソロ参加という新たな道を切り拓いてみせるのも、実に剛らしい。

 KinKi Kidsの剛と、ソロアーティストの剛。どちらも“ パフォーマンスで魅せる”というスタイルは変わらない。だが、その醸し出す空気感がどことなく異なる。KinKi Kidsであるときの剛は、自分と、堂本光一という相方と、ファンと、三者のバランスを常に意識した振る舞いをしているように感じる。光一との掛け合いからファンの反応、そして時代の匂い…… 他者との関係性を受け止めた上で、調和していく。アイドルとしての親しみやすさと、アーティストとしてのこだわりが、絶妙なバランスで成り立っている楽曲を提示してくれるように思う 。

 それに対してソロの剛は、より自分自身の内側から出てくるものに目を向けている印象。 誰もが持つ混沌としたもの、秩序だっていない何かから生まれてきたリズムや言葉、音楽を放出しているように見えるのだ。その微妙な違いは、ラジオ番組『KinKi Kidsどんなもんヤ!』(文化放送)と『堂本剛とFashion & Music Book』(bayfm)の語り口調からも感じられる。1994年からスタートしている『どんなもんヤ』は、まさにKinKi Kidsの原点。トークショーとしての面白さがある。一方で、 2009年から現在まで続く『Fashion & Music Book』では、ファンキーな剛節が繰り広げられるのだ。

 例えば、5月20日放送の『Fashion & Music Book』では、楽曲を作るときの思いを「 衝動をいかに譜面に落とすかですよね、まず」と語っていた。「例えば、こういうグルーヴが鳴ってたとして」と、即興で口ずさんでドラムやベース、ブラス、クラビ……と、どんどん湧き上がってくるものを譜面に落としていくのだそう。そして「これに何の言葉、歌おうみたいな。勝手にやってまとまってないけど、まとまったみたいなのがファンクだと思うんですよね。キレイにしていくと結局なんか……うーん、結局なんかなんですよね」

 さらに、5月27日放送回では「映画で弾いた」という三味線をきっかけに、剛が目指しているボーカルについても言及。「(三味線が) 面白いなって思ったのは、曖昧な音がカッコいいとされる瞬間がありましたね。 音程があたってなくても、カッコいいみたいな……昨今、 トラックダウンしてもマスタリングしてもそうなんですけど、音が固いんですよね。ギリギリ届いてへんけど、めっちゃグルーヴしてるやん。そういうボーカルが、あまり許されなくなってて残念やなって。でも、そこを許しながら音楽を作っていけたら、日本人ぽいなってすごく思うんですよね……幻聴するくらいの届き方。そういう和楽器のように歌えたらいいなって」

 音程を外すのは違うが、音程に縛られるのは固すぎる。歌を“こう歌わなければならないもの”と、限定するのはもったいない。そう語りかける剛は、人生を“キレイに生きなければならないもの”と縛られる必要はないんだ、と説法しているようだ。届く人には、届く。それも、ギリギリのところでお互いの歩み寄りがあって初めて届くはず。そうした曖昧な部分を感じながら剛の音楽や言葉に耳を傾けると、何かに許されたような、自分の中で頑なになっていた部分がゆるゆると解けていくような感覚になるから、不思議だ。

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