Buono!は満員の横浜アリーナで“最高のラスト”を迎えたーーロックアイドルとしての10年間の歩み

「Buono!は、いわゆる“派生ユニット”と呼ばれるものです。そんな派生ユニットが10年も続くユニットになるとは正直思いませんでした。本当にファンのみなさんが応援してくれたおかげです。本当にありがとうございます」

Buono! 『Buono! Festa 2016 LIVEミニ写真集』

 涙を浮かべる夏焼雅と鈴木愛理を横に、リーダーの嗣永桃子は凛とした表情で客席を見つめながらそう語った。 

 Buono!は2007年夏、テレビアニメ『しゅごキャラ!』シリーズのテーマソングを歌うために結成された。当初は企画的な要素こそ強かったが、ロックをコンセプトとし、活動をしていく中でその人気を不動のものにしてきた。外部の制作陣が関わり、スタンディングの会場でバックバンドをつけてライブを行うという、ハロー!プロジェクトの中でも異例のグループでもあった。

 昨年8月に日本武道館で4年ぶりの単独ライブを開催したわけだが、今後の活動に関してはとくに触れなかった。しかし、ある意味区切りとも思えた公演の中で何も明言しなかったのは、またいつかどこでこの3人のステージを観ることができる、そんな期待を感じさせることでもあった。だが、あれから1年も経たずして、こうした形でこの3人のステージを観ることになるとは……。

 Berryz工房の嗣永桃子、夏焼雅、℃-uteの鈴木愛理。約28,000人の中から選ばれたハロー!プロジェクトキッズの15人、そこから活動していく中でさらに選抜された3人で結成されて10年ーー。2017年5月22日、横浜アリーナ。『Buono!ライブ2017 ~Pienezza!~』を以って、Buono!はその活動に幕を下ろした。

 360度を客席に囲まれた円形ステージ。そこを取り囲むようにバックバンド・Dolceが構える。煌びやかなギターのイントロが鳴ると「横浜アリーナ! 最高の夜にしようね!」、夏焼が高らかに叫んだ。「恋愛♥ライダー」でライブはスタート。つづく「Bravo☆Bravo」ではオーディエンスとのコールアンドレスポンスで序盤から会場の熱気は最高潮に達した。

 夏焼のPINK CRES.、嗣永のカントリー・ガールズ、鈴木の℃-ute、とゲストライブを挟み、映像コーナーでは、彼女たちが過去に出演したピザーラのCM(2008年)などを振り返る。そして、これまた懐かしの映像、嗣永=ドラム、夏焼=ベース、鈴木=ギターによる「泣き虫少年」バンドVer.が流れると、それぞれ楽器を抱えた3人がステージ中央に現れた。嗣永の威勢のよいシンバルカウントで、勇ましくもたどたどしい演奏がはじまる。楽曲はもちろん「泣き虫少年」だ。2008年8月22日、横浜BLITZにて行われたファンクラブ限定ライブ『Rock'n Buono!』の9年越しの再現だ。Buono!が“ロックアイドル”のコンセプトを明確にし、バックバンドを迎えてのライブを始めたのもこのときからだった。

 当時から彼女たちを支え、長年見守ってきたDolceのバンドマスター・eji(Key.)より、3人へ宛てた手紙を読む映像があった。“ザ・アイドル”だった中高生の3人が、年齢とライブを重ねていき、一緒に“ロックバンド”になれたこと。そして、3人それぞれへの思いが読み上げられる。会場は感動的な空気に包まれたが、同時に「Buono!とDolceがステージに立つのは今日で最後」という現実を誰もがあらためて実感した。もちろん、みんなそれを分かって今日ここに集まったわけだが、ライブタイトルにしても、事前アナウンスにしても、はっきり“ラスト”と明言されていたわけでもなかったからだ。

 昨年の武道館は圧巻のパフォーマンスで魅せてくれた。しかし、それを悠々と越えてきた。あたかも横浜アリーナがホームであるかのように、この空気感を愉しみながら縦横無尽に3人が会場の端から端まで駆け巡る。「Café Buono!」での鈴木の台詞「キュート!」も、この日ばかりは、客席にいるメンバーに向かって誇らしげに「℃-ute!!」と叫ぶ。 

「今日は、横浜アリーナぁぁ!!」

 「ロックの神様」の<あたしたちにはブドーカン!>の節をそう歌い替える夏焼。アニメソングを歌うためのユニットが、横浜BLITZにはじまり、あこがれの“ブドーカン”を経て、今横浜アリーナに立っているのだ。“アイドルのなんちゃってバンド”、あの当時はそう思っていたファンも正直少なくないはずだ。

 センターステージという形式も、このグループを象徴するようだった。放射的に動くフォーメンションは、正面を向いて見せる動きとは違う三次元的な多面性を感じさせ、3人が背中合わせでバラバラの方向を向きながらも、完璧に響かせる三位一体のハーモニーは長年連れ添ってきた3人だからこそ為せる業だろう。

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