ゆず、これまでの道のりと新たな一歩ーー音楽への思いこめたデビュー20周年ドームツアー

ゆずが見せた20年の音楽の歩みと新たな一歩

 4月26日にデビュー20周年を記念したオールタイムベストアルバム『ゆずイロハ1997-2017』をリリースしたゆずが、全国4都市6公演のドームツアー『YUZU 20th Anniversary DOME TOUR 2017 ゆずイロハ』を開催した。5月20日の東京ドームでは、メドレーとアンコールも含めて延べ37曲を披露。多くのファンが社会の喧噪を離れ、この日ばかりはいつかの少年に戻れば、そこはたった一夜の多くのスマイルで満ち溢れていた。

photo by 田中聖太郎

 序盤は、路上時代を彷彿とさせる2人だけの弾き語りで魅せる。メジャーデビュー前に実際に乗っていたという、原付バイクに乗って登場した2人に、会場はドッと沸き一瞬で笑顔が広がった。彼らがデビュー前に路上ライブを行っていたイセザキモールの路地を模した、石畳風のセンターステージで、当時を振り返りながらライブは始まった。

photo by 立脇卓

 「まずは、いつも応援してくれるみんなにこの曲を贈ります」と、「贈る詩」が会場に響く。いつもは、アンコールの代わりにファンが歌うことでお馴染みの曲で、それが1曲目というのは実に新鮮だ。また「旅に出かけるという人がいて、そういう人のために書きました」と、歌った「いつか」。さらに「嗚呼、青春の日々」は、「路上が終わって、寂しくて書いた曲」と、曲ごとの思い出を語りながら、観客の顔を見渡すようにして歌った2人。それは、まるでかつての路上ライブを再現するかのようで、アコースティックギターとハーモニカ、タンバリンという実にシンプルな演奏と歌声が、ストレートに胸に響いた。

 2曲目に歌った「サヨナラバス」は、北川悠仁から岩沢厚治のハイトーンでまっすぐな歌声にスイッチしたときが、実に爽快だ。また「嗚呼、青春の日々」は、シンプルなメロディを繰り返す楽曲ながら、エモーショナルな北川のボーカルの上で、岩沢のコーラスが変化することで楽曲を巧みに展開させる。こうした、2人の歌声が融合してこそ成立する楽曲は、ゆずの真骨頂であり、この日の様々な場面で聴かせていた。

 メインステージに移ってのステージは、一転して多彩なアーティストやプロデューサーを迎えて制作したヒット曲を次々と披露した。GReeeeNなどを手掛けるJINが、作曲と編曲に参加した「イロトリドリ」では、観客がタオルを回しながら、楽しそうに振り付けを踊る。ヒャダインこと前山田健一とのコラボで制作した、疾走感のある「表裏一体」では、エレクトリックな要素も多く、それ以前にはなかったカッコ良さが光った。また、蔦谷好位置がプロデュースと編曲を務めた「虹」では、ストリングスを交えた壮大なサウンドが、2人のまっすぐなハーモニーと混じり合って、包み込むような広がりを生み出していた。

 20年というキャリアの中で、様々な人と出会い交わることで、自分たちでも気づかなかった魅力を次々と発見して来た2人。先ほどのアコギ中心のサウンドから、多彩な楽器を使い分けるダイナミズムのあるサウンド感への移行は、まさしくゆずという存在の広がりを表現していた。

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