Paramore、San Cisco、アル・サニー……高橋芳朗が選ぶ、洋楽チャート賑わす新譜5選

 通算3回目となる当キュレーション連載、今回からはわたくしが選曲を手掛けているTBSラジオの新番組『都市型生活情報ラジオ 興味R』(毎週月曜18時)でオンエアした楽曲を取り上げていきます。

 TBSラジオでは昨年4月からスタートした『ジェーン・スー 生活は踊る』(月~金曜11時)の選曲も担当していますが、60~80年代の洋楽ポップス中心の『生活は踊る』に対し、『興味R』では同じ洋楽でもリリースされて間もない新譜、もしくは現在チャートを賑わしているヒット曲をメインにセレクトしています。選曲にあたっては特にジャンルの制限はしていませんが、放送時間とリスニング環境を考慮して夜のドライブに相性の良い曲を選ぶようにはしています。

 では早速、5~6月の選曲から注目作品を紹介していきましょう。

Paremore『After Laughter』

 まずは5月8日の放送からヘイリー・ウィリアムス擁するテネシーの3人組、Paramoreの「Hard Times」を。これが「(Nothing But) Flowers」あたりのTalking Heads作品を想起させるファンキーなアフロポップを展開していてびっくりしましたが、従来のエモ路線から80sポップ/ニューウェーブへと大きく舵を切った4年ぶりの新作『After Laughter』には「Rose-Colored Boy」や「Told You So」といった同系統の秀作が多数収録されています。他にもBlondieやTom Tom Clubのオマージュもあったりと、これまでスルーしていた向きにもぜひチェックしてほしい「侮れない」一枚。ローリング・ストーン、ピッチフォーク、スピン、ガーディアンなど、海外の音楽メディアでも軒並み高い評価を獲得しています。

San Cisco『The Water』

 続いては5月15日の放送からオーストラリアはパース出身の4ピース、San Ciscoの「The Distance」。2012年のデビューアルバム『San Cisco』以来、一貫してキュートで甘酸っぱいギターポップを身上としてきた彼らですが、今回の3rdアルバム『The Water』では時折垣間見せていたディスコ/ファンク趣味が全面開花(そういえば、デビューアルバムの日本盤にはボーナストラックとしてDaft Punk「Get Lucky」のカバーが収録されていました)。番組でかけた「The Distance」のほか、「Kids Are Cool」「SloMo」「Make Me Electrify」などの楽曲からは、ギターポップの王道的な良さを維持しながらスマートにダンスビートを取り入れてみせたバンドの成熟した姿がうかがえます。個人的にはOrage Juiceの名盤『Rip It Up』を連想したりしました。

アル・サニー『Time to Decide』

 3曲目は6月5日の放送より、アルバム『Time to Decide』をひっさげてデビューしたばかりのフランスのシンガーソングライター、アル・サニーの「Open Up Your Eyes」。この曲はPhoenixの新作『Ti Amo』に収録されていても違和感がないようなディスコソングですが、アルバムトータルとしてはもろに昨今のAORリバイバルの流れを汲んだ内容になっています。ネッド・ドヒニー「Get It Up For Love」の素晴らしいカバーを筆頭に、メロウなアコースティックソウル「Time to Decide」、ほのかに香るブラジリアンフィーリングが心地よい「Don't Let Nobody Know」、モータウンをはじめとする60'sソウルへの憧憬にあふれる「Since I've Been Loving You」など、全編がハイライトといっても大げさにならないほどの充実ぶり。AOR/ブルーアイドソウルとしてはもとより、フリーソウル的な文脈でも定番化しそうな傑作です。

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