パパイヤ鈴木、振付の特徴は“上半身の動き”にあり 恋チュン、ツボダンスなどから検証

 6月28日放送の『テレ東音楽祭2017』(テレビ東京系)で、Hey! Say! JUMPの面々を巻き込んだパフォーマンスが話題を呼んだ、マッサージ探偵ジョー(中丸雄一)の配信限定シングル曲「お疲れサンクス」。4月スタートのドラマ『マッサージ探偵ジョー』(テレビ東京系)の主題歌としてオンエアされ、通称“ツボダンス”と呼ばれるユニークなダンスをじわじわとお茶の間に浸透させてきた。

AKB48『恋するフォーチュンクッキー』Type-A(初回限定盤)

 この曲はタレントや俳優としても活躍するパパイヤ鈴木が振付を担当しているが、パパイヤは“踊ってみた”動画ブームを巻き起こしたAKB48「恋するフォーチュンクッキー」(2013年)や、ちょっと懐かしいが佐々木希と佐藤健らが全国各地で踊りまくるロッテ「Fit’s」のCM(2009年)など、過去にも数々の印象的な振付を手掛けている。そこで今回は、パパイヤの振付の持つカラーに注目してみた。

 

AKB48「恋するフォーチュンクッキー」

 それまでのAKB48のシングル曲とは一線を画すスローテンポのフィリー・ソウル風サウンドが老若男女に愛され、異例のロングヒットとなった“恋チュン”。イントロ部分の左右の手でボールを握るような“パワーボール”(指原莉乃らメンバーは“おにぎり”と呼んでいた)など、振付にも70年代のディスコダンスの要素が含まれているが、ポイントは肘を中心に上半身をメインに使った大きな動き。AKB48のスタッフたちがこの曲を踊った動画「恋するフォーチュンクッキー STAFF Ver.」をきっかけに、企業発信のものから非公式の動画までが無数に生まれるほどのブームとなったが、それには覚えやすく踊りやすいこの振付がひと役買っていた。他にもウルフルズの「それが答えだ」(1997年)MVやケツメイシの「君にBUMP」(2004年)MVなどで、映画『サタデー・ナイト・フィーバー』でのダンスをデフォルメしたような、パパイヤが得意とするディスコダンス系の振付を見ることができる。

 先述の「Fit’s」を筆頭にCMの振付も多数手掛けているパパイヤ。上半身をメインに使ったコミカル感のある振付が多い印象だが、このパターンは踊る人物の顔を見ているうちに動きも刷り込まれるため、短い尺でもインパクトが強い。現在オンエアされているものでいえば、土屋太鳳が出演している西武鉄道のキャンペーンCM「ちちんぶいぶい秩父」がある。彼女がシーア「アライヴ」のMVで見せたダンスとはまったく雰囲気が異なり愛嬌あふれるニュアンスだが、やはり肘を大きく使った動きが個性的で印象に残る。(動画:西武鉄道「ちちんぶいぶい秩父」

 アーティストの楽曲用かCM用か、またその作品の対象とする世代によっても違いはあるだろうが、これまで挙げたものは視線を引きつけるおもしろポージングに加え、肘を大きく動かしたり両手を(“いとまきまき”の要領で)ぐるぐると回すなど、上半身の動きにポイントを絞った振りが多い。テレビ番組やMVなどで表情とともに抜かれやすい部分だからということもあるだろうが、体操の発展系のようなニュアンスでダンスが苦手な人や小さな子供でも真似しやすく、これがパパイヤの振付の“愛され感”につながっていると推測できる。

 その意味ではダンスのキャリアが長い中丸がソロで歌い踊る「お疲れサンクス」はレアケースで、ステップを含めると難易度が高くなっている。フルサイズの「お疲れサンクス」は、ドラマでジョーが“集中”するシーンで押すツボなど、さまざまな体のツボを解説するラップパートからスタート。Aメロでは満員電車で通勤するサラリーマンなど頑張る人をモチーフにしたパントマイム的な動き→Bメロでは指圧や肘を使ったツボ押しなど、マッサージの施術の代表的な動きをリズミカルに繰り出していく。

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 サビに移る手前の<あなたの心に必要なものは>の箇所で、手首を内側にくるくると回しながら大きく円を描くような動きが入るが、これはインド舞踊やベリーダンスでよく使われるロータスハンド(蓮の花のイメージ)という技。ここと<お疲れサンクス 風呂入って寝ちゃえば>の、両手で正方形を描くような動きまでが特に複雑で、なかなか“踊ってみた”には発展しにくそうだが、インパクトは十分だ。

 そんなパパイヤの最新の振付仕事といえば、カメラメーカー・ニコンが創立100周年を記念してMrs.GREEN APPLEとコラボしたオリジナルダンスムービー「Oz [Nikon Version]」。

ダンスムービーOz [Nikon Version]

 Mrs.GREEN APPLEの人気楽曲のアレンジバージョンをバックに、ニコンの社員たちとMrs.GREEN APPLEの面々が踊るこの動画。よく見ると“恋チュン”と同じ動きが含まれていたりと、やはり踊りやすさ、親しみやすさがしっかり盛り込まれたものになっている。ハッピーなパパイヤ節が炸裂する振付の世界観を、上記の楽曲群とともに楽しむのも一興だ。

■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集参加のほか、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。

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