嵐、シングル『つなぐ』は“手練れの仕事”だ 大胆な和洋折衷サウンドを読み解く

参考:2017年6月26日~2017年7月2日のCDシングル週間ランキング(2017年7月10日付)(ORICON NEWS)

 2017年7月10日付の週間CDシングルランキングの1位は嵐の『つなぐ』。冒頭から響くスライドギターに驚かされました。

 嵐の52枚目のシングル曲「つなぐ」は、大野智の主演映画『忍びの国』の主題歌。映画のタイトルから和風の楽曲かと思いきや、実際のサウンドはブルースを連想させるほどの泥臭さです。スライドギターはアメリカ南部の香りを漂わせ、同時に壮大なストリングスも鳴り響きます。さらに、リズムは軽くスウィングし、後半では管楽器の音色がジャズのテイストまで感じさせるのです。

 「忍び」という言葉のイメージとは裏腹に、「つなぐ」はアメリカ南部を志向したサウンド。三味線がリズムを刻んでいることが霞むほどです。一聴して、これは手練れの仕事だと確信しました。

 「つなぐ」の作詞はpaddy、作曲はPeter NordとKevin Borg、編曲はPeter Nordと佐々木博史。paddyは、2016年のシングル曲「Power of the Paradise」をはじめ、「青春ブギ」「愛のCollection」「ただいま」など、多くの歌詞を嵐に提供しています。

 作曲者のひとりであるPeter Nordは、V6、ジャニーズWEST、Hey! Say! JUMPに楽曲を提供。ジャニーズ以外では、X21へも楽曲提供をしています。もうひとりの作曲者であるKevin Borgは、スウェーデンのアーティスト、ソングライター、プロデューサー。V6やジャニーズWESTのほか、東方神起にも楽曲を提供しています。彼のInstagramには、Billboard Japan Hot 100での「つなぐ」の1位獲得を喜ぶ写真が投稿されていました。

 編曲をPeter Nordとともに担当した佐々木博史は、嵐では「Daylight」「愛を叫べ」「Baby blue」(松本潤ソロ曲)「Don't You Get It」「花」「affection」など、多くの楽曲の編曲を担当。また、NEWSの編曲も手掛けています。

 「つなぐ」の非常に洗練されたセンスは、Peter NordやKevin Borgといった海外作家のもたらしたものでしょう。そして佐々木博史が、三味線も鳴る「J-POP」として磨きあげたのではないか……と想像しました。かなり大胆な和洋折衷の産物が「つなぐ」なのです。また、前述したようにスウィング感のあるこの楽曲を歌うのは難しいはずなのですが、嵐のメンバーのボーカルのリズム感は非常に的確です。

 通常盤のカップリング曲についても触れましょう。「Reach for the sky 〜天までとどけ〜」は、一転して爽やかなナンバー。鮮やかなストリングスが楽曲全体を包みこんでいます。

 「抱きしめたい」は、嵐が軽やかに、しかししっかりと歌いあげている楽曲。ここでも嵐のメンバーのリズム感の良さが光っています。

 「Under the radar」は、テクノの色の濃いダンスナンバー。エレクトロな音の大胆な使い方が心地良いサウンドです。

 『つなぐ』の収録曲は、どれも異なる方向性のサウンドながら、嵐のボーカリストとしての魅力を引き出している点では一致しています。その中でも、アメリカ南部を志向しながら三味線も投入するという豪快な技を展開しているのがタイトル曲「つなぐ」なのです。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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