TWICEの勢いは楽曲単体ではない? 複合チャートが示すグループ人気の指標

【参照:ビルボードジャパン  チャート・インサイト(2017年7月24日付)

 長らく当サイトで続けてきたチャート分析コラムだが、今回から筆者はオリコン週間CDランキングではなく、ビルボードジャパンのチャート「Billboard Japan Hot 100」を対象にすることになった。

 拙著『ヒットの崩壊』でもオリコンとビルボードジャパン双方の担当者へのインタビューをもとにそれぞれの設計思想の違いについて書いたし、先日当サイトに掲載された森朋之さん、杉山仁さんとの鼎談でも触れたのだけれど、(参考:2017年上半期チャートに見るJ-POPの現状とは? 有識者3人の座談会)これを機会に改めてここでも両者の違いについて書いておこう。

 「ランキング」と「チャート」というそれぞれが使っている言葉が象徴的なのだが、ざっくり言うと、CDのセールス枚数を正確に把握し、それによるランキングを発表しているのがオリコン。対してビルボードジャパンはCDセールス、ダウンロード、ストリーミング、ラジオのエアプレイ、YouTubeの再生回数、ツイッターの言及数などを加味した複合型のチャートになっている。

 当然、両者の結果には違いが生じてくる。せっかくなので、今回は7月24日付の両チャートを比較してみたい。

 実はどちらのチャートもKinKi Kidsが圧倒的な首位であることは変わらない。「The Red Light」は20周年イヤー第3弾となる新曲で、作詞作曲は久保田利伸。ディストーションギターとつんのめるようなビートを持つハードなソウルナンバーだ。楽曲にも相当力が入った挑戦的なものになっており、コンテンポラリーなブラック・ミュージックのリズムを踏襲した音作りにもなっている。「薔薇と太陽」の吉井和哉、「道は手ずから夢の花」の安藤裕子もそうなのだが、それぞれのアーティストが「今のKinKi Kidsにはこういう歌をうたってほしい」というお題に応える形でクリエイティビティを発揮しているのも面白い。

 そして2位はどちらもUVERworld「DECIDED」。ただ3位以下のチャートに宇多田ヒカル、BUMP OF CHICKENの配信限定の新曲が並ぶBillboard Japan Hot 100と、Pastel*Palettes(『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』)やマリア・カデンツァヴナ・イヴ(日笠陽子)(『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』)というアニメ/ゲーム関連のCDリリース作品がランクインするオリコンランキングの対照性はとても興味深い。

TWICE『#TWICE』(通常盤)

 ちなみにBillboard Japan Hot 100では「TT」が5位となっている9人組K-POPガールズグループのTWICEは、6月28日にリリースした日本デビューベストアルバム『#TWICE』が7月10日付のオリコン週間CDランキングで2位を記録。こちらも両ランキングで上位に顔を出していることになる。

 さらに興味深いのが、Billboard Japan Hot 100で複合型チャートを構成する各種指標それぞれの順位を調べてヒットチャートを解析することのできる「Chart Insight」機能。それで「YouTube再生回数」7月24日付の結果を見ると、TWICEが上位にずらりと並ぶこと。1位「TT」、2位「SIGNAL」、5位「Like OOH-AH...」、6位「CHEER UP」、9位「KNOCK KNOCK」とTOP10に計5曲を送り込んでいる。楽曲単体ではないグループの人気と勢いを証明する結果と言えそうだ。

 長らく「CDランキングを元にした楽曲分析」を書いてきたこのコラムだが、今後はこういったヒットチャートの解析も試みていきたいと思っている。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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