KICK THE CAN CREWは、今もなおベストを更新し続ける 全国ワンマンツアー初日公演レポ

KICK THE CAN CREW、ツアー初日公演レポ

 KICK THE CAN CREWは、2017年の今、最高の状態にある。12月1日、Zepp DiverCity(TOKYO)で開催された全国ワンマンツアー『LIVE TOUR 2017「タコアゲ」』の初日公演を観てそう確信した。

 2017年、キックは実に13年8カ月ぶりとなるニューアルバム『KICK!』をリリース。9月7日には、日本武道館で『復活祭』を開催し、華々しくシーンに完全復活を遂げた。今年で、結成から20周年を迎えるキックの今のモードを象徴しているのが、アルバムリード曲の「千%」。この日、ライブのオープニングを飾ったのも「千%」だ。原曲より、少しメロウにアレンジされた「千%」のメロディに乗せ、LITTLE、KREVA、MCU、3人が紗幕の向こうに影として登場する。<ライツカメラアクションで棒立ち><いつも ONEWAY>など、過去の楽曲からキラーフレーズとも言える歌詞をそれぞれのバースに乗せていくその瞬間は、俄然胸が熱くなる。さらに新たなキラーフレーズとも言える<経て からの ここ>は、3人がソロとしてのキャリアを積み上げ、また戻って来ることが必然であったことを感じさせる力強い言葉だ。「千%」をパフォーマンスし終わると、会場は溢れんばかりの熱気を帯びており、KREVAが嬉しそうに頷いた。

 ツアー中のため、ライブの詳細は伏せるが、『KICK!』の楽曲を中心に、往年の大名曲から心をくすぐられるようなアルバム曲を織り交ぜたセットリストで構成されている本ツアー。幸いなことに、筆者はグループ復活後、初めてキックのみでライブを行った熊本B.9 V1でのライブ『SPACE SHOWER TV “LIVE with YOU” ~KICK THE CAN CREW~supported by uP!!!』にも足を運ぶことができた。その時と今回のライブに共通してあったのは、盛り上がりと熱気、そして復活を待ち望んでいたというファンのオーラである。「ずっと待っていたという人もいれば、“いる”っていうことは知ってるけど、リアルタイムにライブを観たりとかはなかったという人も多いと思うんだよね」、KREVAはこう語る。会場を見渡すと、キックの3人と同年代と思わしき世代に加え、20歳前後のファン層も多く見受けられる。2014年、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』にキックとしてサプライズ出演し、今年まで3年間の助走期間はありつつ、それぞれが順風満帆なソロ活動を継続してきたことも、今、新たなファン層を引き連れるまでに至った経緯でもある。

 「今日をきっかけにお前の人生も『完全チェンジTHEワールド』!」とKREVAの完璧な前振りから始まった「完全チェンジTHEワールド」。初の試みとしてスタンドマイクを使用した「また波を見てる」など、アルバム『KICK!』には、今もなおベストを更新し続けるキックの姿がある。もちろん、楽曲の完成度、瞬く間にマイクをチェンジしていく三位一体のコンビネーションもキックの魅力であるが、おちゃらけと誠実の間を行き来するような、そんなMCもキックとしての本来の姿。とびきり饒舌なKREVAは、お決まりで3回MCUをいじり倒し、MCUはキザなセリフを投げかけては、ファンとコールアンドレスポンスを楽しむ。満を持して話し始めるLITTLEは、しっかりとファンの心をキャッチし、次のナンバーへと流れていく。そんな抱腹絶倒なMCを決められるのも、一心同体のライブパフォーマンスがあってのもの。そんな表裏一体とも言える、ライブパートとMCでの、息のあった3人のコンビネーションがキックの真髄にある。

 ライブの終盤では会場のファンにマイクを預け、「アンバランス」の歌詞を大合唱する一幕もあった。掲げられた掌が波のように左右に揺れ、<階段を上がんなら そう/今じゃない/今はアンバランス>と歌われるその様からは、キックの音楽がこれからもファンの心に息づいていく未来が見えた気がした。

 「みんなが楽しめるモノを出していきたいと思います。音楽のない生活も普通にできると思うんだけど、音楽がある生活、もっと言ったらKICK THE CAN CREWのある生活に、“完全チェンジTHEワールド”してもらって、一緒に楽しんでいけたらいいなと思います」(KREVA)何よりも、ツアータイトルの『タコアゲ』には、彼らが楽曲として残してきた「カンケリ」「タカオニ」から地続きの意味合いが込められている。キックは、2017年に最高の状態で完全復活した。そして、これからも“KICK THE CAN CREWのある生活”は続いていくのだ。

(文=渡辺彰浩/写真=岸田哲平)

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