けやき坂46は“ハッピーオーラ”でさらなる快進撃へ 全国ツアーに見た「20人の決意表明」

けやき坂46、“ハッピーオーラ”で快進撃

 けやき坂46が、12月12日と13日に幕張メッセ・イベントホールにて行った『ひらがな全国ツアー 2017 FINAL!』は、欅坂46とは違った、“けやき坂46”のオリジナリティを存分に見せつけられた公演だった。

 けやき坂46は欅坂46の妹分的存在として、長濱ねるを中心に結成されたグループ。今年3月には2日間に渡ってZepp Tokyoを満員にし、10月からは主演ドラマ『Re:Mind』が放送開始。順風満帆に行くかと思いきや、5thシングル『風に吹かれても』の選抜発表が放送された9月24日の『欅って、書けない?』(テレビ東京)にて、長濱の欅坂46専任が決定。中心人物を失ったけやき坂46だったが、個々の成長や2期生の加入などを経て、この日の幕張まで辿り着いた。

 欅坂46のライブは、ときおりポップな楽曲は挟みつつ、全体のコンセプトとしてはどこか影のある印象だ。8月29日と30日の『全国ツアー 2017 真っ白なものは汚したくなる』幕張メッセ公演でも、終演間際に衝撃的な演出がなされ、ファンの間でも話題を呼んだ。一方、この日のけやき坂46は、メンバー・佐々木久美の言葉を借りると「ハッピーオーラ」をテーマにしたライブで、同じ幕張でもその印象は真逆といえるものだった。

 「OVERTURE」とオープニング映像に合わせてメンバーが次々に登場し、「いくぞー!」と勢い良く叫び声を上げたあと、緩やかにミドルテンポの「ひらがなけやき」がスタートするのも彼女たちらしくて、思わず笑みがこぼれてしまう。かと思いきや、齊藤京子がポップアップで登場し、低音の効いたボーカルでクールなセンター像を見せつけた「語るなら未来を・・・」や、影山優佳がエモーショナルにポエトリーリーディングをしてみせる「世界には愛しかない」は、本家センター・平手友梨奈や欅坂46とはまた違う解釈で、楽曲に光を当ててみせる。前日のリハーサルで転倒し、この日の公演に参加できなかった柿崎芽実の穴を埋めようと、序盤からトップギアで会場を盛り上げる。

齊藤京子

 5曲目以降は、潮紗理菜がセンターで爽やかな笑顔を振りまく「ここにない足跡」や、影山・佐々木美玲・東村芽依によるダンスのキレが目立つ「AM1:27」、加藤史帆・ 佐々木久美のオリジナルメンバーに井口眞緒と高瀬愛奈を加えた「猫の名前」と、1stアルバム『真っ白なものは汚したくなる』のユニット曲を次々にパフォーマンス。なかでもひらがなけやき初のユニット曲として"りまちゃんちっく(潮、加藤、齊藤、佐々木久美、高本彩花)”が歌う「沈黙した恋人よ」は、リードボーカルを執る佐々木久美をはじめ、各自の歌唱力の成長を著しく感じさせるハイライトだった。

加藤史帆

 中盤では、タップダンス(大阪公演)、マーチングドラム(札幌公演)、カラーガード(福岡公演)、ポイ(名古屋公演)と、全国ツアーで練習し、披露してきた各種パフォーマンスと、潮・高瀬・佐々木美玲の帰国子女3名がボーカルを務めた洋楽カバーメドレーをミックス形式で披露。高瀬のキュートな声はThe Jackson5「ABC」に、潮のハイトーンボイスはThe Supremes「You Can't Hurry Love」に、佐々木美玲の流暢な発音とパワフルなボーカルはドナ・サマー「Hot Stuff」とそれぞれしっかりマッチしていたことも記しておきたい。3月に行なわれたライブの際にも述べたが(参考:けやき坂46は坂を“飛び越える”存在に? 初ワンマンに見た欅坂46とは別の可能性)、これらのパフォーマンスは確実に海外展開の試金石になる。同じ“坂道シリーズ"の乃木坂46が本格的にアジア展開を視野に入れ始めたことを考えると、彼女たちの出番はそう遠くないだろう。

 ライブも後半に差し掛かるところで、けやき坂46の2期生が順番にステージへ登場。金村美玖、河田陽菜、小坂菜緒、富田鈴花、丹生明里、濱岸ひより、松田好花、宮田愛萌、渡邉美穂、と堂々としたアピールで先輩に負けじと会場を盛り上げる。なかでも驚いたのは、富田による自己紹介ラップの上手さ。初登場の『欅って、書けない?』を見たとき、自身を“パリピ"と称し、拙いフリースタイルラップをする彼女が心配になったが、必死に練習を重ね、ライブで軽快にヴァースを蹴る姿を見て、その真面目さに感服した。

 その後は、2期生も含めた19人による「NO WAR in the future」へ。リリースされたときは楽曲のテーマや内容を踏まえ、欅坂46寄りの曲ではないかと思っていたが、この日のパフォーマンスを見て、けやき坂46が話し合いによる友好的・平和的解決を無邪気に歌うことに意味があるのだと理解できた気がした。

 主演ドラマ『Re:Mind』の主題歌「それでも歩いてく」、センターが移り変わる「東京タワーはどこから見える?」を経て、可愛いアニメーション映像とともに歌われた「永遠の白線」、高本と齊藤による、2Fアリーナを使った演出にファンが沸いた「手を繋いで帰ろうか」、ひらがなけやきのアンセム「誰よりも高く跳べ!」と、次々に彼女たちのオリジナルナンバーが投下される終盤。持ち曲も多くなったことで、このような演出が可能になったのも、彼女たちの成長の証だ。

 ライブの最後には、欅坂46とけやき坂46の全体曲である「太陽は見上げる人を選ばない」をパフォーマンス。トロピカルハウス的なトラックにあわせて、メンバー数と同じ11個のミラーボールが各自のメンバーカラーに光り、フロア全体が“ハッピーオーラ"全開のダンスフロアと化したところで、本編は終了した。

 アンコールはクリスマス衣装に着替えて「僕たちは付き合ってる」で観客の目を一気に惹きつけると、「二人セゾン」では、ここまでのツアー同様、井口がソロパートとソロダンスを披露。歌もダンスもあまり得意ではなかった井口だが、このツアーを通して成長し、見事にセンターとしての役割を果たしてみせた。

柿崎芽実

 そして、ここで骨折により欠席していた柿崎が登場。「裏で見てたんですけど、悔しい気持ちも忘れちゃうくらいみんなから勇気をもらって、みんなのことが好きだなって思いました」と涙ながらに語り、「今度は元気な状態で皆さんの前で、ここでライブをするので待っててください!」と高らかに宣言してみせる。

 最後は佐々木久美がこのツアーを総括するように、5分に渡るMCを行い、観客は静かにそれを見守る。

「ひらがなはねるちゃん一人で始まって、『サイレントマジョリティー』が出る前に募集が始まってデビューしました。最初は受け入れてもらえないなという気持ちがあって。そんななかで漢字さんがどんどん坂を登って行くのを見ていて、何もできてないまま『どうすればいい?』って話し合ったり辛い思いをしたり、すれ違いが起きて進む方向がわからなくなって」

「12人で歌った4曲は宝物だし、今でも『永遠の白線』を歌うと、全国ツアーやねるちゃんの後ろ姿を思い出す。12人になったひらがなで頑張ってきて、11人になって。いまは20人になったけど、ねるちゃんの意思は継いでいるし、好きって言ってくださる方は増えてるから、ここで止まっていられない。まだまだ未熟な私たちですけど、ハッピーオーラ溢れるひらがなけやきを20人で育てていきたい」

 中心メンバーとしてグループを牽引する佐々木久美も、このツアーを通してさらにMC力を向上させた。以前に行ったインタビューでも、彼女が中心になって話し合っていることを明かしてくれたが、長濱ねるが欅坂46専任になって以降、その責任感はより強くなったに違いない。彼女による、20人のけやき坂46として再始動するという決意表明は、しっかりとした重みを持って、ファンにもメンバーの心にも響いている。大団円を迎えたラストの「W-KEYAKIZAKAの詩」で、笑い泣きしながら手を振る彼女たちの姿が、なによりの証左だろう。

 この日、欅坂46は『FNS歌謡祭』に出演し、地上波での活躍を見せていた。そんななかで大会場を埋め尽くしてみせた彼女たちは、「別働隊」としての役割を十二分に果たし、次のステージへ向かおうとしている。頼もしい2期生とともに作り上げる“これから”が、楽しみで仕方ない。

(取材・文=中村拓海)

■セットリスト
・12月12日(火)
M0:OVERTURE
M1:ひらがなけやき
M2:語るなら未来を…
M3:世界には愛しかない
M4:青空が違う
M5:僕たちの戦争
M6:猫の名前
M7:沈黙した恋人よ
M8:パフォーマンスメドレー
M9:NO WAR in the future
M10:それでも歩いてる
M11:東京タワーはどこから見える?
M12:永遠の白線
M13:手を繋いで帰ろうか
M14:誰よりも高く跳べ!
M15:太陽は見上げる人を選ばない
EN1:僕たちは付き合っている
EN2:二人セゾン
EN3:W-KEYAKIZAKAの詩

・12月13日(水)
M0:OVERTURE
M1:ひらがなけやき
M2:語るなら未来を…
M3:世界には愛しかない
M4:ここにない足跡
M5:AM1:27
M6:猫の名前
M7:沈黙した恋人よ
M8:パフォーマンスメドレー
M9:NO WAR in the future
M10:それでも歩いてる
M11:東京タワーはどこから見える?
M12:永遠の白線
M13:手を繋いで帰ろうか
M14:誰よりも高く跳べ!
M15:太陽は見上げる人を選ばない
EN1:僕たちは付き合っている
EN2:二人セゾン
EN3:W-KEYAKIZAKAの詩

■関連リンク
欅坂46公式HP
けやき坂46二期生特設ページ

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