Beverly、ライブにあるシンガーとしての本質 “特別な1年”締めくくったアンコールツアーレポ

Beverly、ライブにあるシンガーとしての本質

 12月14日にマイナビBLITZ赤坂で行われた『Beverly 1st JOURNEY「AWASOME」Encore Tour』を観た。これはタイトルの通り、好評だった初ツアーのアンコールとして行われたもの。彼女の言葉で書くなら「特別な1年を締めくくるワンマンライブ」ということになる。

 Beverlyにとっての初のワンマンライブが、10月5日の渋谷WWW。そこから約2カ月を経てのマイナビBLITZ赤坂公演には、2カ月分の進化が確かに見られた。アンコールツアーとあって、全体の構成は渋谷WWW公演とほぼ同じ。だが、渋谷WWW公演では歌われなかった曲も4曲あり、そのなかにはこの季節だからこそ聴けた曲もあった。10月5日の渋谷WWW公演がアンコールの3曲を含めて全16曲。今回の公演がアンコールの5曲を含めて全20曲。CDに例えるなら『AWASOME』デラックスエディションといったような内容だ。

 ヒップホップR&B的な曲があれば、ピアノバラードもあり、80年代や90年代的なアーバンポップもあれば、ロッキッシュな曲もある。ファンキーな曲もあるし、EDM調もあるし、ソウルフルな曲もあるし、ゴスペル的な昂揚感を有した曲もある。Beverlyがライブで歌った曲はそのようにとても多様で、つまり彼女は様々なタイプの曲を歌いこなせる対応力と柔軟性のあるシンガーである。ということを、10月5日の渋谷WWW公演のライブレポートで書いた。あの公演を観て自分が特に強く実感したのが、そのことだった。そしてそれは、さらに4曲が加えられた今回のマイナビBLITZ赤坂公演を観たことで確信となった。この日初めて披露された曲のなかには、これまで彼女が歌ったことのないタイプの曲もあり、改めて表現力のキャパシティの大きさに唸らされたのだ。

 今回の公演で新たにセットリストに加わった4曲について書いておくと、まず7曲目で歌われた「Future」。これは未発表の新曲だが、11月12日にフィリピンの首都マニラで行われたASEAN設立50周年記念晩餐会にBeverlyが招かれてパフォーマンスを行った際に披露した1曲だ。その晩餐会はASEAN首脳会議を前に各国首脳や政府関係者らを招いて行われたもので、フィリピンのドゥテルテ大統領、アメリカのトランプ大統領、日本の安倍首相も出席。トランプ大統領はBeverlyの歌唱中、料理に手をつけず歌声に聞き入っていたそうだし、安倍総理はひとり立ち上がってBeverlyに何度も手を振りながら応援していたという。そこで歌われたこの曲「Future」は、非常にドラマチックでスケール感のあるバラード。Beverlyは晩餐会に出席したときのことを振り返って「緊張しました。でも頑張りました」と話していたが、そのスケール感のあるバラードを世界の要人たちの前でもきっと力強く歌いきったのだろう。この夜の同曲の歌唱は、その姿がはっきりとイメージできる堂々たるものだった。

 13曲目に歌われたのは「All I Want」と題された新曲で、これは女優・飯豊まりえが出演しているアパマンショップのCMソングとして流れているもの。CMを見て気になっていた人もいるだろうが、聴けば元気よく外に飛び出したくなる軽快ポップソングで、ファンキーな要素もそこには含まれている。〈新しい世界へ〉という歌詞の一節もリズムと相まってポジティブで、サビで気持ちが高まった。最大の武器である伸びやかなハイトーンがまた大いに活かされた曲でもあり、レコーディングされたものを早く聴きたくもなったのだった。

 それからアンコールの1曲目に歌われたのは、プエルトリコの歌手ルイス・フォンシが2017年1月にリリースしたレゲトン曲「Despacito」。ジャスティン・ビーバーがリミックスで参加したバージョンもあって世界各国で大ヒットしたものだが、Beverlyのここでのカバーもオリジナルにあったフラメンコ調のギターをそのまま活かし、彼女らしくパッションを表しながら歌われていた。そこにはマドンナの大ヒット曲「ラ・イスラ・ボニータ」を想起させる哀愁成分もあり、それと同時に妖艶なところも。つまりBeverlyのなかにある“オトナのオンナ”感がじんわり滲みでていたカバーであった。

 続いて「そういえば、もうすぐクリスマスですねー」というフリから「今年、私はオリジナルのクリスマスソングを作りました」と言って初披露されたのが、アンコール2曲目の「Xmas with you」。Beverlyにとって初のクリスマスソングとなるこれは、「2017アピタ・ピアゴ クリスマスCMイメージソング」に決定し、12月13日に配信でリリースされた。筆者はこのライブで初めて聴いたわけだが、クリスマスに相応しいキラキラしたアレンジもさることながら、メロディの展開がなんとも麗しく、楽曲として最高と言える出来栄え。〈メリークリスマス。さあでかけよう。ふいに笑顔こぼれる〉という歌詞にBeverlyの明るい歌声がピッタリはまって、クリスマスという特別な日を共に讃え、楽しく祝福したい気持ちにもなったものだ。

 こういった未発表曲、新曲、カバー曲を加えることで、しっかりアップデイトされていたこの最新ライブは、先にも述べた通り、どんなタイプの曲だろうと自分らしく歌いこなせる対応力と柔軟性を改めて強く実感させるものであり、2018年のBeverlyがさらに大きく羽を広げるであろうことを観る者全員にイメージさせるものでもあった。新曲のほかにも、例えば渋谷WWW公演で聴いて筆者が絶賛したファンキーな「Do That!」(EP収録曲)や、静かなピアノをバックにしつつも限りなくア・カペラに近い形で最後にじっくり歌われた「Amazing Grace」など、とりわけアンコールに彼女の持ち味、説得力、スケール感がよく表れた曲が並んでいて、今回もまた自分はそのあたりに特にグッときた。それらはいずれもリリースされるやたちまち5万枚を超えるヒットとなったデビューアルバム『AWESOME』には収録されていなかったもの。つまりあのアルバムに収まりきらなかった彼女のいろんな魅力が、ライブを観るとつぶさに伝わるわけなのだ。

 例えば「I need your love」。例えば「Be The One」。そういう曲だけではなかなか感じ取るのが難しい歌唱の深みのようなものも、ライブを観ればよくわかり、胸を揺さぶられることにもなる。まだまだBeverlyという歌手の本質は多くの人に伝わっていないようだが、とにかくライブを観ればわかるので、ぜひとも2018年、今より進化しているに違いない彼女に会いに会場に足を運んでほしいと思う。

(文=内本順一)

■リリース情報
『A New Day』
発売:2018年2月28日(水)
[SG+DVD] ¥3,000(税抜)
[SG+Blu-ray] ¥4,000(税抜)
[SG] ¥1,200(税抜)
1「A New Day」:全国フジテレビ系 月曜よる9時連続ドラマ「海月姫」主題歌
2「All I Want」:アパマンショップCMソング
3「Despacito」:グラミー賞ノミネート中の大ヒットラテンソングの日本語カバー
4「Happy now」:Hands On Tokyo「LIVES」テーマソング(Sound Produced by つんく♂)

オフィシャルサイト

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