スガ シカオ、ライブで体現されたド派手なファンクショー 20周年集大成に真骨頂を見た

スガ シカオのド派手なファンクショー

 スガ シカオが2017年12月26日『SUGA SHIKAO 20th Anniversary Special“Suga Shikao Asia Circuit 2017”』の東京公演をEX THEATER ROPPONNGIで開催した。5月6日にさいたまスーパーアリーナで『スガフェス!〜20年に一度のミラクルフェス』(出演/Mr.Children、怒髪天、ポルノグラフィティ、UNISON SQUARE GARDENなど)を行い、9月18日には大阪城ホールで『スガフェス!WEST〜スガシカオ vs kokua 絶対に負けられない対バンがある in 大阪』(出演/佐野元春、大槻ケンヂ、片平里奈、kokuaなど)を開催したスガ シカオ。メジャーデビュー20周年を締めくくるイベントがシンガポール、台湾をまわる初のアジアツアーというのも(常にアグレッシブな姿勢を貫いてきた)彼らしいが、この日のライブは“これぞスガ シカオ!”と呼べる素晴らしいものだった。本人は「本当は東京でやらなくてもいいんだけど、土産話する場所があったほうがいいと思って」などと言っていたが、セットリスト、パフォーマンスを含め、20周年の集大成にふさわしいステージを繰り広げたのだ。

 ひとりでステージに登場したスガは打ち込みのビートに乗せて歪んだギターを響かせ、2013年にリリースしたシングル「アイタイ」からライブを始めた。2番のサビ終わりでバンドメンバー(坂本竜太/Ba Duran/Gt SATOKO/Dr マヤ・ハッチ/Cho)が登場、ハードエッジなバンドサウンドが加わり、スタンディングのフロアは一気に熱気を帯びる。「年内最後のワンマン、めいっぱい楽しもうぜ!」と叫んだ後は、熱狂的ダンスチューン「Party People」、「19才」へと続く。ハンドマイクでステージ前方へと進み、観客を煽りまくりながら鋭利なボーカルを響かせるスガは冒頭から超ハイテンション。その姿はまさにロックスター、いや、希代のファンクスターだ。

 さらに「2017年はギリギリで生きていました。みんなもギリギリだった? 来年もギリギリで生きていこうぜ」というMCに導かれたヘビィロックチューン「Real Face」、2009年のシングル「はじまりの日」(原曲ではMummy-Dをフィーチャー)など、20年のキャリアを代表する楽曲が次々と披露される。この日のセットリストはシンガポール、台湾の公演と同じ。スガいわく「ベスト・メガ盛りみたいなセットリスト。そこが“俺っぽいな”と思う曲を差し込んでる」だそうで、それはつまり“ベスト・オブ・スガ シカオ”に他ならない。

 実際、12月26日に配信がスタートした新曲「トワイライト★トワイライト」から始まったライブ中盤は名曲の連打。Sly&The Family Stone「If you want me to stay」を想起させるベースラインを加えた「夜空ノムコウ」、アコギの弾き語りで、〈ぼくらが二度と純粋を手に入れられなくても〉というフレーズを響かせた「黄金の月」、そして、大人の男の必死の前向きさが胸を打つ「Progress」(kokua)。共通するのは、スガシカオの歌が持つ、圧倒的なオリジナリティだ。日常のなかにある不安、皮肉、嫉妬、怒り、絶望などをリアルかつリリカルな言葉で紡ぎ出し、日本のポップスにまったく新しい価値観を持ち込んだスガ シカオ。その歌詞には一片の嘘もなく、すべてのフレーズが聴き手の記憶に深く突き刺さるのだ。ひとつひとつの言葉に強い説得力を与えるボーカルも文句なく素晴らしい。

 ライブ後半は「午後のパレード」「NOBODY KNOWS」といった高揚感に溢れるファンクナンバーを放ちまくり、バンドのテンションもさらに上がっていく。強烈なアタック力としなやかなグルーヴを併せ持ったSATOKOのドラム、ブラックネスとハードロック感を共存させたDuranのギター、ソウルフルな歌声で楽曲に彩りを与えるコーラス、若手ミュージシャンの音をしっかりとまとめ、シンプルで奥深いバンドサウンドへと結束させるバンマス・坂本竜太のベース。スガ シカオの音楽的な特性を正確に捉え、奔放なプレイによって体現するアンサンブルはまさに最強だ。スガのボーカル/パフォーマンスもさらに熱を帯び、爆発的な盛り上がりを演出。スガと同世代のオーディエンスも見受けられるが、最初から最後までガッツリ踊りまくり。本編ラストの「コノユビトマレ」に至るまで、フロアの熱狂はアガる一方だった。

 アンコールでも“みなさんのおかげで20周年も無事に……”みたいなシンミリした話は一切なく、「愛と幻想のレスポール」「91時91分」「したくてたまらない」というキャリアのなかでも最もヤバいファンクナンバ—でブチ上げまくる。Sly&The Family Stone、ジェームス・ブラウン、プリンス、Funkadelicといったルーツミュージックの本質を抉り出し、日本語のポップミュージックへと昇華してきたスガ。この日のライブで体現された、濃密で変態でド派手なファンクショーは、アーティスト・スガ シカオの真骨頂だったと思う。

 2018年1月15日からは33都市の弾き語りツアー『SUGA SHIKAO Hitori Sugar Tour 2018』がスタート。スガ シカオに成熟という言葉は似合わない。21年目もヤバすぎるファンクをたっぷりと聴かせてほしいと心から願う。

(写真=Mari Amita)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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