スガ シカオのディープな作家性とは? 新曲「トワイライト★トワイライト」から探る

スガ シカオのディープな作家性

 2016年から2017年にかけてデビュー20周年を駆け抜けてきたスガ シカオ。6年ぶりのオリジナルアルバム『THE LAST』(2016年1月)、スガがボーカルを務めるバンドkokuaの10年越しの1stアルバム『Progress』(2016年6月)をリリース。アルバム『THE LAST』を中心に据えた全国ツアーを開催した後、2017年5月6日にさいたまスーパーアリーナで『スガフェス!〜20年に一度のミラクルフェス〜』(出演:Mr.Children、怒髪天、ポルノグラフィティ、UNISON SQUARE GARDENなど)、9月18日には大阪城ホールで『スガフェス!WEST〜スガシカオ vs kokua 絶対に負けられない対バンがある in 大阪〜』(出演:佐野元春、大槻ケンヂ、片平里奈、kokuaなど)を行い、12月にシンガポール、台湾、東京で初のアジアツアーを開催するなど、精力的にもほどがある! と言いたくなるほどの濃密な活動を行ってきた。その充実ぶりは12月26日の東京公演でも実感することができたが、なかでも印象的だったのが12月26日に配信リリースされた新曲「トワイライト★トワイライト」だ。

 「三井アウトレットパーク2017歳末&2018新春セールCMソング」に起用された「トワイライト★トワイライト」の第一印象は“ポップでファンキーな盛り上がり曲”だった。実際にライブで披露されたときもフロアをガッツリと上げるダンスチューンとして機能していたのだから、そのイメージは間違っていないと思う。しかし、音源をじっくり聴き込んでみると、この曲が単なるポップソングではなく、スガシカオのディープな作家性が存分に発揮されていることがわかる。

 まずはサウンドメイク。基軸になっているビートはファンクだが、ハードロック経由のディストーションギター、1980年代テイストが施されたスネアなどを取り入れることで、時代感を超越したミクスチャーサウンドへと結びつけているのだ。さらに強烈なのだが、楽曲全体を覆うようなノイズ的なエフェクト。解放的なサビのメロディにノイズミュージックの要素(言うまでもなく、彼はノイズミュージックにも造詣が深い)が加わることで“気持ちいいのに歪んでいる”刺激的なバランスが実現しているのだ。アルバム『THE LAST』もスガ シカオの“らしさ”と“ヤバさ”が前面に押し出された作品だったが、その傾向はさらに強まっているようだ。Aimer、でんぱ組.incなどの楽曲を手がける釣俊輔のアレンジワークにも注目してほしい。

 優れたポップネスと過激なサウンドを共存させるスガ シカオのセンスはもちろん、この曲の歌詞にも反映されている。「トワイライト★トワイライト」で描かれているのは、住み慣れた街を離れる前日、別れてしまった“ダーリン”のことを想う“ぼく”の心情。後悔、切なさ、痛みはたっぷり、希望はほんの一滴だけという歌詞なのだが、決して感情に溺れることなく、抑制の効いたフレーズで“ぼく”の状態を見事に照らし出しているのだ。特にすごいのが〈ねぇ ダーリン/コンビニのコーヒーだけじゃ/夢精慣れしたぼくは 目が覚めやしないみたい〉というライン。こんな歌詞を書けるのは絶対にスガシカオだけだし、20年を超えた彼のキャリアのなかでも際立ったパンチラインの一つであると断言したい。

 2018年1月からデビュー21年目がスタートする。最初のアクションは弾き語りによる全国ツアー『Hitori Sugar Tour 2018』。全国33都市の規模は、これまでで最大だ。「トワイライト★トワイライト」で示した“らしさ”と“ヤバさ”のバランスは、弾き語りというミニマムなスタイルのなかで、さらに濃密に染み出てくるはず。誰もが楽しめるポップスという枠を可能な限り広げながら、自らのプリミティブな表現欲求を叩きつけるスガシカオは今年、さらに濃密な音楽世界を我々に見せてくれることになりそうだ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■リリース情報
「トワイライト★トワイライト」
(三井アウトレットパーク 2017歳末&2018新春セールCMソング)
12月26日(火)よりiTunes Store、レコチョクほか主要配信サイト、Apple Musicほか主要サブスクリプションサービスで配信スタート

■ライブ情報
『SUGA SHIKAO Hitori Sugar 2018』
1月15日(月) 神奈川 CLUB CITTA'
1月21日(日) 静岡 SOUNDSHOWER ark
1月23日(火) 名古屋 ボトムライン
1月25日(木) 松阪 M'AXA
1月26日(金) 岐阜 Club-G
1月28日(日) 金沢 EIGHT HALL
2月1日(木) 高崎 club FLEEZ
2月2日(金) 新潟 LOTS
2月9日(金) 水戸 ライトハウス
2月11日(日・祝) 熊本 B.9 V1
2月12日(月・休) 長崎 DRUM Be-7
2月14日(水) 福岡 DRUM LOGOS
2月16日(金) 鹿児島 CAPARVO HALL
2月18日(日) 那覇 ナムラホール
2月26日(月) 中野サンプラザ
3月2日(金) 周南 rising-hall
3月4日(日) 岡山 YEBISU YA PRO
3月9日(金) 青森 Quarter
3月10日(土) 郡山 Hip Shot JAPAN
3月18日(日) 広島 BLUE LIVE
3月21日(水・祝) 松山 W studio RED
3月22日(木) 高松 festhalle
3月24日(土) 高知 CARAVAN SARY
3月25日(日) 神戸 VARIT.
3月29日(木) 甲府 CONVICTION
3月31日(土) 長野 CLUB JUNK BOX
4月1日(日) 福井 CHOP
4月4日(水) 米子 AZTiC laughs
4月6日(金) 京都 磔磔
4月7日(土) 和歌山 GATE
4月11日(水) 函館 金森ホール
4月12日(木) 札幌 ペニーレーン24
4月19日(木) なんばハッチ

スガ シカオ オフィシャル HP

「SUGA SHIKAO Hitori Sugar 2018」特設サイト

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