CUBERS、The Super Ball、はしやん、しゅーず、いかさんが集結した『PLAY LIST #1』レポ

『PLAY LIST #1』イベントレポ

 『CUBERS × Real Sound presents “PLAY LIST”#1』が1月7日、渋谷WWWにて開催された。ジャンルの枠を越えて今聴かれるべき音楽を届けることを目的に行った同イベント。記念すべき第1回にはCUBERS、The Super Ball、はしやん、しゅーず、いかさんが出演し、それぞれが思う“かっこいい音楽”をオーディエンスにむけて全力でパフォーマンスした。

 この5組の活動スタイルの特徴は、大きく2つに分けることができる。まず、“聴けるボーイズユニット”として良質なポップミュージックを届ける5人組・CUBERSと、ピアノとギターを弾きながら抜群のハーモニーを聞かせるツインボーカルユニット・The Super Ball。彼らはライブハウスや路上ライブなどで音楽やパフォーマンスを直接披露することをメインに活動してきた。一方、オリジナルラップをネットで公開するネットラップで注目を集めたはしやん、セクシーなボーカルが魅力の歌い手・しゅーず、男声と女声を自在に操り、声優としても活躍するいかさんは、主に動画サイトをはじめとしたネット空間で楽曲を発表してきた3組だ。ジャンルはもちろん、音楽活動のスタイルも様々。しかし、彼らのパフォーマンスからは、“より多くの人に音楽の楽しさや素晴らしさを届けたい”という思いを共通して感じることができた。

 まず、1組目に登場した青森県出身の佐々木陽吾(Gt/Vo)と神奈川県出身の吉田理幹(Pf/Vo)からなるThe Super Ball。彼らの歌声には心に染み渡る温もりと、つい笑みがこぼれてしまうようなアットホームな雰囲気がある。この日もライブには欠かせない一曲「笑顔のカバー」、アニメ『不機嫌なモノノケ庵』オープニングテーマ「トモダチメートル」などを披露していく中で、その持ち味が発揮されていた。「シアワセ」では、「みんなで一つになって音楽を楽しもう」とオーディエンスにコーラスを促す場面も。はじめは恥ずかしそうにしていた人たちも彼らの歌声と笑顔に誘われ、会場に響く声は次第に大きくなっていった。

 後半は一変して、The Super Ballが歌と向き合う姿勢や、日々を生きる人たちにむけた熱いメッセージが届けられた。「涙の色」ではギターの音色のみにのせた飾り気ない歌声がストレートな2人の感情を表現していた。さらに、1月24日発売のシングル『MAGIC MUSIC』収録曲である「人生ゲーム」では、彼らが歌い続ける理由が赤裸々に綴られている。ポジティブにそれらの言葉を歌い上げる2人の姿は強く胸を打った。ラストは『王様のブランチ』エンディングテーマとしてオンエア中の「MAGIC MUSIC」を披露、2人の心地よく重なり合うハーモニーが、終始会場中に幸福なムードを生み出していた。

 2組目のはしやんは、DJの小太郎(アニソンDJ、ダンサー、漫画編集者などでも活躍中)とともにステージに登場。はじめに、らっぷびとらネットラップシーンを代表する朋友たちとのコラボレーション曲「インデペンデンスデイ」をソロ歌唱し、自身のスタイルを挨拶代わりにお披露目すると、続く「first contact」では、寝正月明けのダイエットに付き合ってほしいとジャンプを求めたり、水を飲むタイミングで毎回「はしやんコール」をするよう求めるなど、オーディエンスと会話をするようにコミュニケーションを取りながらライブを進行していく。ラッパーには必要不可欠な頭の回転の速さで多くの人々の心を掴んでいたのはさすがの一言だ。その後披露された唯一のラブソング「浮気性」は、フルートやサックスの音色が響き渡るジャジーなトラックにのせて、彼女に浮気を謝り続けるユニークな一曲。さらに、映画『時をかける少女』の主題歌である奥華子「変わらないもの」をフックとしてサンプリングした「time waits for no one」、JP THE WAVYのヒットナンバー「Cho Wavy De Gomenne」カバーなどをそれぞれの原曲へのリスペクトを示しながら披露していった。

 最後の「夜が去る」では、ポエトリーリーディングでひたすら“孤独”を叫ぶ。HIPHOPやラップの持つ力、醍醐味をわかりやすく伝えるという役割が果たされたステージだった。

 3組目のしゅーずが1曲目に披露したのは、みきとP提供のオリジナル曲「セカンド・キス」。しゅーずの持ち味である色気漂うボーカルが最大限に生かされたアーバンな楽曲だ。続けてギターのカッティングが冴える「妄想疾患□ガール」やジャズロック風の「心とかいう名の未発見の臓器の機能についての考察」といった、歌ってみた界隈で人気の楽曲を次々と披露。浮遊感あるトラックが中毒性を生む「quiet room」も、しゅーずの声質によく合っていた。こうして様々なボカロ曲にふれると、ポップスとしてのクオリティの高さに改めて驚かされる。また、歌ってみたの文化では、自らの歌声・さらにはアーティスト性に即した楽曲をセレクトすることも極めて重要な要素なのだとも感じた。しゅーずはその面においても成功を遂げた歌い手の一人であると言えるだろう。

 最後は爽やかなポップナンバー「夜もすがら君想ふ」で会場を盛り上げ、いかさんにバトンを託すようにしてステージを去ったしゅーず。この日は喉の調子が優れず万全な態勢ではなかったものの、最後まで堂々と歌いきってみせた。ちなみにしゅーずが途中にふとコメントした「異種格闘技戦みたいなイベント」という言葉は、まさにこの日のイベントのあり方を言い表していたように思う。

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