尾張名古屋はSKE48でもつ? 『無意識の色』収録曲から“王道的なアイドルポップス”を考察

参考:2018年1月8日~2018年1月14日の週間CDシングルランキング(2018年1月22日付)

SKE48『無意識の色』通常盤(TYPE-A)

 2018年1月22日付の週間CDシングルランキングの1位は、SKE48の『無意識の色』。2017年7月19日にリリースされた前作『意外にマンゴー』に続いて、今作でも1位獲得です。

 『無意識の色』で聴けるのは、48グループらしい王道的なアイドルポップス。しかし、「王道的なアイドルポップス」とは何でしょうか? それにしっかりと向きあってみようというのが今回の記事の主旨です。

 「無意識の色」のイントロでは、アコースティックなギターの音色からすぐにエレキギターの音色へと移り、一瞬で風景が変わります。そして、歌いだしとともにブラスセクションの音色が響く凝ったサウンドプロダクション。Bメロからは男声コーラスが入り、サビではメロディが一気に緊張感を強めます。Dメロでも再び男声コーラスが登場し、しかも<I LOVE YOU!>といったキーワードに男声コーラスがかぶるのが特徴的です。このように随所に大胆に男声コーラスが入るものの異物感はなく、メンバーのボーカルの魅力を引きたたせています。

 また間奏では、ブラスセクションからエレキギターの早弾きに移り、そして落ちサビを迎えるという流れがカタルシスを強めています。アウトロはエレキギターの音色が中心となって締めることに。

 男声コーラスやブラスセクションの使い方は、日本のアイドル歌謡の系譜を押さえていますが、全体としては現在のJ-POPとしての新鮮さがしっかりとあるのが「無意識の色」です。

 「無意識の色」のType Aには、SKE48のメンバーによるユニットであるラブ・クレッシェンドの「反射的スルー」が収録されています。

 イントロは、ストリングスも響く大人っぽい雰囲気で幕開け。明るいメロディながらもメランコリックな空気が漂うAメロ、Bメロが続きます。そして、サビではファルセットを多用したせつないボーカルが一気に押し寄せることに。

 間奏のピアノも美しく、演奏の中で次第に存在感を増していきます。2番のサビ前のドラムは、ドラマティックなプレイを聴かせているなど、演奏は次第に変化。そして、歌詞のないボーカルがアウトロを飾ります。後半に行くほどボーカルも演奏もドラマティックになっていく構成です。

 Type Aのもう1曲のカップリングは、愛知トヨタ選抜による「We're Growing Up」。愛知トヨタ自動車のCMソングです。

 「We're Growing Up」はロックナンバーで、中盤では裏打ちのギターを前面に出す趣向も。しかし、男女のコーラスや男声による「ヘイ!」という掛け声も多用され、ブラスセクションも活躍する色彩豊かな楽曲です。

 3曲とも非常に高品位で、前作『意外にマンゴー』の楽曲群の流れをしっかりと踏襲したもの。名古屋の気品を感じさせるサウンドプロダクションを聴くことができるのが『無意識の色』です。尾張名古屋はSKE48でもつ。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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