CHiCO with HoneyWorksはなぜ突出した存在に? “胸キュン”に焦点あてた作品づくりに注目

 女子高生・橘あきらが、アルバイト先の店長を務める冴えない40代・近藤正己に想いを寄せる一途な姿が話題を呼んでいるTVアニメ『恋は雨上がりのように』(フジテレビ系)。『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載中の同名人気漫画は、“純粋な正統派ラブストーリー”と評され、『マンガ⼤賞2016』『このマンガがすごい!2016』オトコ編などへのランクインを果たしている。

CHiCO with HoneyWorks『ノスタルジックレインフォール』(CHiCO with HoneyWorks盤)

 そんな“年齢差のある恋愛”を描いた同アニメのオープニングテーマ「ノスタルジックレインフォール」を制作したのが、CHiCO with HoneyWorksだ。CHiCO with HoneyWorksは、ソニー・ミュージックエンタテインメント主催の、ボカロ・アニソン・声優アーティスト限定の歌い手オーディション『ウタカツ!』第1回にてグランプリを獲得した女性シンガー・CHiCOと、ボーカロイドを用いた楽曲制作、YouTubeやニコニコ動画での作品発表を行うクリエイターチーム・HoneyWorksのコラボバンドだ。HoneyWorksは、作編曲を担当するGomとshito(Ba)、イラストレーターのヤマコを中心に、サポートメンバーのOji(Gt)、中西(Gt)、AtsuyuK!(Dr)、cake(Key)、モゲラッタ(イラストレーター/映像制作)、ろこる(イラストレーター)、ziro(映像制作)で構成。CHiCO with HoneyWorks名義で発表されているMVは、動画サイトでの総再生回数が2億回を突破しており、恋愛をテーマとした“キュンキュン系”や“青春系”と呼ばれる作品で10代女子を中心に人気を博している。

 そんなCHiCO with HoneyWorksは、アニメなどのタイアップ作品における世界観を、楽曲やMVに映し出す腕利きだ。「ノスタルジックレインフォール」は、タイトルどおり“雨”をテーマとしており、『恋は雨上がりのように』のテーマソングにふさわしい一曲。歌詞に目を向けると、<大人のあなたに届かなくて 容易く触れてる雨に…雨になりたい>といった、年齢差に空回りするあきらの心情を描いているようでもあり、<雨上がり 虹がかかってやっと目が合った 恋に鈍感なあなた…だから!>と、2人の今後の関係を示唆するかのような描写も見られる。

CHiCO with HoneyWorks 「ノスタルジックレインフォール」MV

 MVでは、“年齢差のある恋愛”というテーマを共有しつつ、物語の舞台を学校に移して新たなストーリーを展開。メンバーのヤマコが手掛ける、描線のくっきりとした少女漫画のようなイラストにあわせ、「ノスタルジックレインフォール」の歌詞に寄り添って物語が進んでいく。その内容は主人公の女子高生が、彼女の通う学校へ教育実習生としてやってきた扇野一色に恋をするというものだ。“先輩に恋をする”という誰もが一度は憧れを抱くであろうシチュエーションが描かれており、恋に恋い焦がれる10代の心を動かし、時に共感をも覚えさせるのだろう。あわせて、その作り込まれた筋書きから、20代以上の視聴者も短編作品を読み終えたかのような清々しさを覚えるはずだ。このように、彼らの作品は“物語音楽”としての側面も持ち合わせている。

 さらに、彼らの作風として「ノスタルジックレインフォール」や、2014年放送のTVアニメ『アオハライド』の主題歌に起用された「世界は恋に落ちている」などに見られるような高速エモロックサウンドが挙げられる。そのキャッチーなメロディにより、彼らの作品は「歌ってみた」動画やカラオケなどを通じて広く親しまれているのだろう。

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