『スッキリ』プロデューサーが語る、朝の情報番組で生ライブを届ける意義

『スッキリ』が“生ライブ”を届ける意義

 音楽の魅力を広く伝えるメディアとして、大きな機能を果たすテレビの音楽番組。CD全盛期に比べて番組数が減少する中、それぞれ趣向を凝らした番組づくりが行われている。そんななかでも、注目すべき番組に焦点をあてていく連載『テレビが伝える音楽』。第五回は特別編として、2006年から放送されている情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)でプロデューサーを務める福島英人氏、脇山浩一氏にインタビューを行った。レディー・ガガら、著名な海外アーティストが度々番組に出演し、4月21日にはライブイベント『スッキリ SUPER LIVE in 武道館ッス2018』を開催するなど、ほかの情報番組以上に音楽コーナーに力を入れている。朝の情報番組という通常の音楽番組とは異なる形態で、アーティストの魅力をどう伝えているのか。コーナー立ち上げの経緯や、番組にかける思いをじっくりと語ってもらった。(編集部)

「音楽に詳しくないからこそ、視聴者目線に立って丁寧に作る」

ーー『スッキリ』には、「HARUNAまとめ」や「WEニュース」「スッタメ」など、アーティストの方が出演するコーナーが多いです。どういった経緯で立ち上げられたんでしょうか。

福島英人(以下、福島):以前、「週刊マリウッド」という関根麻里さんが海外ゴシップを扱うコーナーがあって。海外のサイトをチェックしていたら、当時日本ではまだ無名だったレディー・ガガの面白い写真をたまたま見つけたんです。それで「週刊マリウッド」の中で、奇抜なファッションで注目、というふうに取り上げたら加藤浩次さんやテリー伊藤さん含めスタジオが盛り上がったので、その後もガガの写真を集めて特集などで扱っていきました。そうしたら、いつの間にか海外ですごい人気が出て、日本でも名前が売れ始めた。番組でずっと取り扱っていたので、初来日時には舞台裏まで取材させてくれたり、2回目に来た時にはアコースティックバージョンで「Poker Face」を生で歌ってもらったりしました。

ーー福島さんが音楽が好きでコーナーを始めたんでしょうか。

福島:僕自身はもともと洋楽に詳しいわけではないんです。ただ「朝、洋楽が流れてたらおしゃれだな」と思ったことから、アーティストに出演してもらえるように色々交渉するようになったんです。当時の総合演出のスタッフも賛成してくれたので、Backstreet Boys、ライオネル・リッチー、アリシア・キーズ、「Baby」の頃のジャスティン・ビーバー、テイラー・スウィフト……デビューしたてのアーティストも含めて出演してもらうようになっていきました。

脇山浩一(以下、脇山):2006年に『スッキリ』が始まった時、「いわゆるワイドショーとは異なることをやっていこう」と考えていたんです。これまで朝の番組に、海外はもちろん、日本のアーティストが出演することってほとんどなかったので、福島も相当な努力があったと思います。海外アーティストの方も他のアーティストに、「『スッキリ』に出るといいよ」とリップサービスではなく、本当に言ってくれているみたいで。

ーーコーナーが始まった当初はいろいろ苦労もあったのではないかと思います。

福島:『スッキリ』がスタートした当時は『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)や『SMAP×SMAP』、『笑っていいとも!』(ともにフジテレビ系)など、洋楽アーティストがよく出演する番組があった。でもその中で負けないように、しかも朝という不利な中で戦っていくには、積み重ねかなと思って。他の番組が有名アーティストを中心に扱っているところを、僕らはデビューしたばかりのジャスティン・ビーバーやテイラー・スウィフト、アリアナ・グランデなども取り上げていきました。あと実は海外、アメリカでも同じくらいの時期から朝に放送されている『グッド・モーニング・アメリカ』といった番組でアーティストが歌うようになったと聞きました。例えば、ニューヨークのタイムズスクエアでビヨンセが歌ったり。そういう展開があったので、今、海外アーティストの方は朝歌うことに抵抗が少ないと思います。

ーーコンスタントに、知名度がある方々が出る流れができている印象です。

脇山:この前もケイティ・ペリーが来日コンサート終了後、帰る寸前に時間があるからちょっと寄っていい? と出演してくれました。 ゴールデンタイムでも通用するようなカット割りや構成を福島がプロデュース、ディレクションしているので、ブランドが維持されているのかもしれません。

福島:僕が音楽に詳しくないからこそ、視聴者目線に立ってVTRもいちから丁寧に作るんです。ファンではない人が見てすごいと思ってもらえるVTRをちゃんと作った上で、歌も聴いてもらえればなと思って。でも実はそのVTRはアーティストが誰よりも喜んでくれて。こんなに私をまとめて振り返ってくれるなんて嬉しい、って。

ーーVTR以外で、何か工夫されていることはありますか。

福島:ファンやコアなリスナーが観る音楽番組に対して、『スッキリ』はそのアーティストを知らない人にも知ってもらえれば良いな、と思って取り組んでいます。例えば『グレイテスト・ショーマン』のキアラ・セトルも日本ではあまり知られてなかったと思うんですけど、きっと反響があるから実際に画面を通して見てもらいたいという感覚で取り上げて。音楽番組だとすでに売れているアーティストを取り上げることも多いですが、『スッキリ』はジャンルや知名度に関係なく、純粋にすごいなと思ったアーティストにどんどん出てもらっています。ピアニストやバレエダンサーから東京スカパラダイスオーケストラさんや石川さゆりさんまで……。浅野忠信さんや大森南朋さんにも出演してもらいました。それも『スッキリ』が色々なジャンルを扱っているからこそなのかな、と思います。

ーー邦楽アーティストを扱うようになったきっかけは。

福島:洋楽アーティストを取り扱う中で、日本のアーティストにも声をかけてみようという流れでした。例えばMIYAVIさんは「世界で活躍する日本人」といった特集に出演してもらいましたね。日本のアーティストも最初の頃は朝歌うことに慣れていなかったと思うんですけど、頑張って出て欲しいな、という意味も込めて始めた部分もあります。最近では、ブルーノ・マーズも歌ってたし、同じところで歌えて嬉しい、と言ってくれたりする人も増えていて。『スッキリ』が憧れのステージの一つになれば良いなと思います。今、生の歌を聴ける番組が本当に少ないですが、生って一番パンチがあって、一番伝わる最強の伝え方ではないでしょうか。

ーーMCの加藤さんの新鮮な反応も印象的です。

福島:大物アーティストの方々が『スッキリ』を選んでくれたのは、加藤さんの存在も大きいです。加藤さんがどのアーティストに対してもリスペクトしている雰囲気を出していたり、パフォーマンス直後のトークも他にはないところかなと思います。やっぱり、朝は声が出づらいじゃないですか。だから朝、しかも生で歌っているのを見ると、視聴者もプロフェッショナルだなと思ってくれる。そこは夜に放送される音楽番組や収録番組とも違うのかなと。あとはセットも特徴的で。加藤さんなど、一番近くで見ている人のリアクションの顔が映る。音楽番組はステージやセットで歌って、観客以外のリアクターが映ることは少ないですよね。

ーーあのセットには何かこだわりがあるんでしょうか。

福島:僕は過去、半年ぐらい『THE夜もヒッパレ』を担当していたことがあって。ひょっとしたらその経験が今につながっているのかもしれません。『THE夜もヒッパレ』も普通の歌番組とは違って、スタジオの中で楽しそうに見せたり、パフォーマンス中出演者にカメラを向けたりしていたので。

ーー特に思い出深いアーティストはいらっしゃいますか。

福島:やっぱり、レディー・ガガですかね。

脇山:福島は“ガガを見つけてきた男”としてテレビ番組にも出たことあるんですよ(笑)。ガガが無名の時に『スッキリ』で紹介して以来、日本テレビが来日公演を手伝ったりもしていて、彼がきっかけでずっと信頼関係がある。

福島:彼女は東日本大震災の時にも色々動いてくれたんです。ロスまで来てと言われて急遽行って、『スッキリ』にだけコメントをくれました。それが『WEニュース』の第1回目です。実はその時にガガがやってくれたポーズが、今コーナーの定番になっている“ウィー”ポーズになっているんです。あとはエド・シーランやブルーノ・マーズ、U2も思い出に残っています。海外のレジェンドの方はすごく気さくで。スティングやスティーヴン・タイラーも番組とは別で、1曲歌ってくれたり。彼らのそういったカメラが回っていないところの振る舞いを見ていると、たくさんの人に愛されている理由がわかりますよね。

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