欅坂46による、セルフイメージのポジティブな“破壊” デビュー2周年ライブを見て

欅坂46による、ポジティブな“破壊”

 欅坂46が4月6日〜8日に開催した『2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』 は、グループが世間に定着させたコンセプトを守りつつ、ポジティブな“破壊”を見せてくれたライブだった。今回は千秋楽の8日公演に焦点を当てながら、その内容を紐解いていきたい。

 開演前のステージは、2016年のクリスマスライブにも近い、工場地帯のような雰囲気もある無骨なデザインが赤いライトで照らされていた。1曲目はこの雰囲気にも合う「ガラスを割れ!」。曲の衣装はセンターの平手友梨奈が赤、他のメンバーが黒のMA-1が正式なものだが、この日は全てのメンバーが赤のMA-1。小林由依と今泉佑唯がセンターに立ち、ステージにいない平手(スケジュールの都合により欠席)や志田愛佳(体調不良により欠席)の意志も背負って立つ19人の闘志が前面に出たパフォーマンスだった。

 このように、「ガラスを割れ!」や「不協和音」といった楽曲は、世間に広く欅坂46が鉤括弧付きの「ロック」で「笑わないアイドル」といったイメージであることを定着させた作品だった。しかし、それは彼女たちにとって一つの側面であり、今回のライブにおいても演出の一部でしかない。そのあとに続いた渡邉理佐センターの「避雷針」、菅井友香センターの「君をもう探さない」などは、リリックビデオのような歌詞映像やセンターステージで使用した個別制御の吊り下げ式LED照明、パフォーマンスの演劇性を含め、チーム一丸となった総合芸術としての“欅坂46”をここぞとばかりに提示してみせる。

 続くユニット曲ゾーンでは、歌劇テイストの「バレエと少年」爽やかな王道アイドルポップスの「波打ち際を走らないか?」、テクノポップ的なアプローチの「バスルームトラベル」など、キュートな楽曲も含めた欅坂46のアイドル性、引用される音楽ジャンルの多様性に改めて触れることができた。

 このコーナーの「再生する細胞」で圧倒的な歌唱力を見せつけた今泉は、中盤に小林との“ゆいちゃんず”ゾーンで再び登場。今泉の活動休止期間もあって、アコースティックギターを抱えて2人が歌うのはおよそ1年ぶり。“復活曲”でもある「ゼンマイ仕掛けの夢」を歌う姿は、ファンにとっては待ち望んだ瞬間だった。

 後半は再びグループとしての表現へと立ち戻るが、「月曜日の朝、スカートを切られた」の渡邉理佐、「エキセントリック」の土生瑞穂といったセンター起用は新鮮そのもの。前者では渡邉の持つ眼光の鋭さが、後者では土生の無邪気さと大人っぽさの二面性がそれぞれ楽曲の持つ世界観にハマっていたように感じた。また、「エキセントリック」は1周年記念ライブで初披露となった楽曲だが、この時はパフォーマンスの異端さも含め、グループにとってはトリッキーな“飛び道具”という印象だった。しかし、今回のライブでは、欅坂46のシリアスさとアイドル性といった相反する部分を接続する、重要な役割を担っていたように思える。

 2年目を振り返る映像の後に披露されたのは、長濱ねるがセンターを務めた坂道AKBの新曲「国境のない時代」。原曲はAKB48グループ、坂道シリーズ各グループのタレントが集まった華やかな布陣だが、今回は欅坂46メンバーのみの統一されたパフォーマンスで、楽曲の持つ魅力を別の角度から引き出しているように感じた。長濱のセンター曲であり、ここ最近のシングルと違った曲調や雰囲気という意味でも、この曲はこれからの欅坂46にとって、大きな転換点になる可能性を含んだ一曲だ。

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