“つんく♂路線継承”のJuice=Juiceと“脱・つんく♂”のアンジュルム 両グループの方向性を分析

 今年、発足から20周年を迎えたハロー!プロジェクト。2018年前半は、モーニング娘。20th名義での特別ミニアルバム『二十歳のモーニング娘。』のリリース、OGメンバーのコンサート参加など、モーニング娘。を中心に20周年を祝う企画が目立っていたが、ようやく新体制での各グループの動きが本格化してきた。

Juice=Juice『SEXY SEXY/泣いていいよ/Vivid Midnight』通常盤A

 モーニング娘。、アンジュルム、Juice=Juice、こぶしファクトリー、つばきファクトリーと、カントリー・ガールズを除く全てのグループが現在全国を回る春ツアーを開催中。楽曲についても、2月、3月にそれぞれ新シングルをリリースしたつばきファクトリーとこぶしファクトリーに次いで、Juice=Juiceが4月18日に『SEXY SEXY/泣いていいよ/Vivid Midnight』を、アンジュルムが5月9日に『泣けないぜ・・・共感詐欺/Uraha=Lover/君だけじゃないさ...friends(2018アコースティックVer.)』を発売と、リリースが続いている。

 Juice=Juiceの「SEXY SEXY」は、モーニング娘。以外のシングル曲としては℃-uteの「To Tomorrow」以来となるつんく♂作詞作曲。一方のアンジュルムは、昨年12月にリリースしたBD・DVD限定シングル収録曲のアコースティックバージョンでの再録「君だけじゃないさ...friends」以外の2曲がシンガーソングライターの山崎あおいによる楽曲提供となっている。

 Juice=Juiceが定期的につんく♂作の楽曲を発表している一方で、アンジュルムはスマイレージからの改名以降、他の作家を積極起用した“脱・つんく♂路線”を継続している。そこで、本稿ではつんく♂がハロプロの総合プロデューサーを退いた2015年から今日までの両グループから、ハロプロにおける“つんく♂路線”の継承と、脱つんく♂による新たな方向性の模索について考えてみたい。

 つんく♂が2015年に出版した手記『だから、生きる。』(新潮社)によれば、彼がハロプロ総合プロデューサーの座を正式に退いたのは2014年10月のこと。スマイレージへの3期メンバー3名の加入と、グループ名の改名が発表されたのは、それとちょうど同じタイミングだった。同年12月に新名称を「アンジュルム」としたグループは、翌年2月につんく♂が全くプロデュースに関わらない初めてのシングル『大器晩成/乙女の逆襲』をリリース。ハロプロと同じアップフロントグループ所属で、つんく♂からも長年にわたり高い評価を受けてきた中島卓偉が作詞作曲したファンクナンバー「大器晩成」は、つんく♂プロデュースに頼らないハロプロ新時代の扉を開けた名曲として、ファンからも称賛を受けた。

 それ以降、アンジュルムは最新シングルを含めると計6枚のシングルをリリースしているが、その中でつんく♂が作詞作曲・プロデュースしたのは、2期メンバー田村芽実卒業に合わせて制作した「恋ならとっくに始まってる」の1曲のみに留まっている。その代わりに、多くの職業作家から楽曲提供を受けることで、彼女たちはメタル(「出過ぎた杭は打たれない」)から、今風のJ-ROCK(「ドンデンガエシ」)、モーニング娘。のEDM路線に対する返答とも言えるEDM(「次々続々」)等々、幅広いジャンルに挑戦。それらを雑多な個性と高いパフォーマンス力で自分のものとしていくことで、やんちゃで可愛い方向性で概ね統一されていたスマイレージ時代のイメージを払拭し、破竹の勢いでアンジュルムとしての個性を確立していく。

 つまり、モーニング娘。を基軸としたつんく♂プロデュースがハロプロの正統路線だとすれば、アンジュルムは“脱つんく♂路線”というハロプロのオルタナティブな指針になったとでも言うべきだろうか。リーダーの和田彩花をはじめとするメンバーから事あるごとにモーニング娘。への対抗心が語られるようになったのも、そんなアンジュルムとしての個性が明確になってからのことだ。

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