「桜が咲く前に」カバーも飛び出した、ヒグチアイときのこ帝国による“特別な一夜”

ヒグチアイときのこ帝国“特別な一夜”

 シンガー・ソングライターのヒグチアイが5月31日、東京・渋谷WWW Xにてきのこ帝国とのツーマンライブを行った。

 本公演は、ヒグチが6月20日にリリースする2ndフルアルバム『日々凛々』の“プレリリースパーティー”と銘打ったもの。オープニングアクトには、福岡出身の女性シンガーソングライター・eddaが招かれた。

 まるで絵本の世界から飛び出してきたような、幻想的なeddaのパフォーマンスが終わり、きのこ帝国の4人が姿を現わす。まずは2014年の2ndアルバム『フェイクワールドワンダーランド』より、「疾走」からスタートした。谷口滋昭(Ba)&西村"コン"(Dr)のリズム隊よるヘヴィなグルーヴと、90年代グランジ~オルタナを通過したあーちゃん(Gt)のディストーション・ギターが鉄壁のアンサンブルを構築し、その上で佐藤千亜妃(Vo/Gt)のイノセントな歌声が、伸びやかに広がっていく(ちなみに佐藤のTシャツは、Dinosaur Jr.の代表アルバム『Green Mind』のジャケットをあしらったものだった)。

 続く「クロノスタシス」では一転、浮遊感たっぷりのメロディをハスキーな声でアンニュイに歌う佐藤。そんな彼女を追いかけるギターのカウンターフレーズや、ソウルフルなベースラインがこの上なく官能的だ。かと思えば「猫とアレルギー」でのブルージーな節回し、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の主題歌として書き下ろされ、話題になった「愛のゆくえ」での、今にも消え入りそうなほど儚く美しいウィスパーボイスなど、楽曲によって自在に変化する佐藤の表現力にはただただ圧倒されるばかり。

「今日はヒグチアイさんとのツーマンということで、お客さんのテンションがどんな感じなのかちょっと心配だったんですけど、みなさん温かくて良かったです。今日は最後まで楽しんでください」

 そう挨拶した佐藤がエレキギターをアコギに持ち替え、新曲「LIKE OUR LIFE」を披露。ボリュームペダルとディレイを駆使したあーちゃんの、幻想的なギターサウンドが印象的だ。きのこ帝国は現在ニューアルバムのレコーディング中で、秋頃にリリース予定だという。こちらへの期待も増す楽曲だった。

 後半は、佐藤が凄まじいシャウトを聴かせる初期の名曲「夜が明けたら」や、彼らの出世曲とも言える「東京」、そしてPixies~Nirvana直系のヘヴィかつ不穏なナンバー「Donut」と立て続けに演奏し、大きな歓声に包まれながらステージを後にした。

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