ゴールデンボンバーがファンの心を掴み続ける理由 SSA演出なし&ツアーファイナル全貌から考察

金爆、ファンの心を掴み続ける理由

 7月18日、さいたまスーパーアリーナにて、『ゴールデンボンバー全国ツアー2018「ロボヒップ」』のツアーファイナルが行われた。その前日、17日には同会場にて、“演出なし”公演『番外編・キラーチューンしかやらねえよ』を開催。本稿では両日の模様をレポートし、ゴールデンボンバーのライブの特殊性を考えていきたい。

“演出なし”で挑んだ『キラーチューンしかやらねえよ』

 喜矢武豊(Gita-)によるアナウンスが始まると、大きな歓声が湧き上がる。ライブ中の注意事項を説明しながら、この日が“演出なし”であることに触れ、「今日は皆さんと立場的に変わらないと思います! ステージの上か下かの違いで」などと自虐する始末。

 “演奏の代わりに面白いネタを全力でやる”というのがゴールデンボンバーのライブの基本姿勢である。しかし今回は、毎回ワンマンツアーでみられるストーリー仕立ての構成だったり、途中で差し込まれる体をはったチャレンジ動画や、メンバー同士のラブコメ寸劇などといった“演出”を抜きにしたライブである。ちなみにこの試みは2015年のツアーでも行われており、今年発売された『キラーチューンしかねえよ』リリースの際には『鬼龍院以外のメンバーも初聴き先行披露ライブ』を行うなど、楽器隊にとって新たな挑戦となるライブを行うことで、話題を集めてきたところもある。

 オープニング映像と共に「今日はパフォーマンスをすることで、ステージに居場所を確保してきた楽器隊にとっての武器である、“演出”を排除したライブをお届けいたします」と鬼龍院翔(Vo-karu)のナレーションが流れ、「#CDが売れないこんな世の中じゃ」からライブはスタート。さっそく楽器から手を離しタオルを振り回す喜矢武、歌広場淳(Be-su)、すでに1曲目から持ち場であるドラムセットを離れ、ステージをダッシュで駆け回る樽美酒研二(Doramu)。ギターソロでは“普通の”エアギターを見せる喜矢武に、逆に珍しいのでは? という気になってくる。「デスメンタル」では勢いよくヘドバンをする楽器隊だが、手は当然お留守である。“演出なし”でこれから彼らはどんな勇姿を見せるのか。

 「よくぞいらっしゃいました! ゴールデンボンバーはいつでもふざけてきました。今日は仕込みネタを排除し、先程の2曲みたいな特殊な空気が流れるんで、最後まで耐え抜いてくれよな!」と宣言する鬼龍院。いつもは演出のこともあって、内容がガチガチに決まってるというMCタイムだが、今日は決めていないという。「演出のないゴールデンボンバー、例えるならばチョコパフェのチョコとクリーム抜きみたいな」と自虐を続け、なお、この日はほぼ1万人の動員があったということに触れ、各々お礼を述べるメンバーたち。「ありがとうございます! 全身全霊でiPodをかき鳴らします!」と鬼龍院。「よく考えると1万人が彼(鬼龍院)のカラオケを聴きに来てるってことだよね」と喜矢武。「いつもどおり皆さんを盛り上げるようなMCをしたいと思います」と歌広場。そして「このドラムを通して、皆さんの元へ熱いビートを届けたいと思うんで」と樽美酒が言うと、観客の「?」という反応に鬼龍院は「普通のバンドっぽいことを言うと面白いっていうね?」とコメントした。

「抱きしめてシュヴァルツ」での喜矢武のひとこと

 続いて始まったのが、ゴールデンボンバーの曲の中でも、かなり仕込みネタが多い「抱きしめてシュヴァルツ」。普段は喜矢武と樽美酒が手の混んだネタを行うため、曲の序盤でステージ袖にはけるのだが、今日は“演出なし”のため、「喜矢武さんがまだいる!」と鬼龍院、「なんか暇だね……」と喜矢武、一瞬のドラムソロ(エアー)でキメキメの樽美酒。なお、喜矢武はこのセクションのあとのMCで「何故かアウェイ感を感じた」とコメント。そして「SHINE」、「ドスケベ」といったFCライブ以外で、久々に披露されるナンバーに観客からは大きな歓声があがる。「ドスケベ」ギターソロとしてお立ち台に立つ喜矢武の後ろから腕を噛む鬼龍院に、観客からさらに大きな悲鳴のような声が巻き起こった。

 「トラウマキャバ嬢」では喜矢武が一瞬の生ギターを披露し、「元カレ殺ス」、「死 ん だ 妻 に 似 て い る」とダンサブルな“キラーチューン”で盛り上げていく。

 そして、バラード〜ミドルテンポのナンバーのセクションに入る前に「どうする? 一回はける?」とたじろぐメンバーに対して、「(ゴールデンボンバーの曲は)“喜矢武さんを眺めてる時の心地よいBGMです”という内容のファンレターを貰って、素晴らしい表現だなと思った」という鬼龍院の言葉に「いるだけでいいんだ!」と納得する楽器隊の面々。しかしながら「うれしいかなしい」の演奏中に黙々とスナック菓子をむさぼる喜矢武、おにぎりを頬張る樽美酒。「世界平和」ではトロッコに乗ってアリーナを一周し観客を沸かせ、その際にスネアドラムとハイハット(※多分)を鉄の棒でつないだ“ギター風のドラム”を小脇にかかえてごきげんな樽美酒。「これはフェスでも使える!」と意気揚々とし、鬼龍院が諌める一幕も。

樽美酒研二(Doramu)

 終盤は再び「今夜はトゥナイト」、「まさし」とライブ定番のアッパーチューンで駆け抜け、ラストの「†ザ・V系っぽい曲†」の間奏では、お約束の「ゴールデンボンバー演奏しろ!」コールが響き渡り、異様な一体感に包まれて本編は終了した。

いつもどおりのアンコールと、衝撃の新曲「暴れ曲」

 アンコールでは「これからはいつも通り」と、「海山川川」の間奏では喜矢武がダンボール製のサックスを吹き鳴らし、続いてはファンからも人気の高い「らふぃおら」、そして最後は「実際これが一番のキラーチューンかもしれないので、お付き合いください!」という鬼龍院の言葉と「女々しくて」で締めくくられた。

 そして再びメンバーがステージにあらわれ、「世間的には『女々しくて』がキラーチューンとは言われているものの、終わって帰る時に“え〜〜”って声が聞こえた」と言う鬼龍院。「ライブに来てくださる方は『女々しくて』以外の魅力も知っているからですよね」という言葉に観客からは大きな歓声が上がる。「たまにエゴサをするとYouTubeのコメント欄で“金爆は『女々しくて』だけじゃない!”と戦っているファンもいるけど、戦わなくて大丈夫。人は押し付けられたものには反発するから、あなたが魅力を知ってくれていたら全然いいんで」と鬼龍院が言うと、「あなた達が好きなことに自信を持ってください!」と樽美酒が続けた。

 そして「もうヴィジュアル系らしい“暴れ曲”は作らないんですか?」というファンレターを貰ったことから生まれたという新曲、その名も「暴れ曲」。ヴィジュアル系のファンのいう“暴れ曲”とは、ヘッドバンギングや、リズムに合わせて身体を大きく上下に動かす“折りたたみ”と言われる動作を、ふんだんに行うことのできる激しい楽曲を指す。そのファンレターを“売られたケンカ”として、「作ろうと思えば作れるし!」という鬼龍院の思いがこもったこの曲を満を持して披露……という流れだったのだが、樽美酒のiPod操作ミスにより一瞬中断。ショックのあまり奇声を発する樽美酒と、フォローするメンバー、まさかの“演奏ミス”に逆に盛り上がる観客。「暴れ曲」は2010年代のヴィジュアル系シーンでひとつのスタイルとして定着している、デスボイスから始まるメタルコアナンバーを研究して作られた曲だ。ありそうなイントロ、ありそうなデスボイス、そして急にキャッチーなサビという「ヴィジュアル系あるある」展開が詰め込まれた、楽曲に観客は大歓喜。スクリーン映像では、歌広場扮するバンギャル・淳子が激しいヘドバンを披露し、観客もそれにならって激しいヘドバンで場内を揺らした。

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 “演出なし”と掲げてはいるのものの、『キラーチューンしかやらねえよ』のタイトル通り、人気曲からレア曲まで満足度の高いセットリスト、細かいところで挟まれる小ネタ、そして全力のパフォーマンスで観客を楽しませたゴールデンボンバー。

 このバンドをバンドたらしめているものは何なのか? ふと思い出したのが2013年のツアー『ホントに全国ツアー2013~裸の王様~』のストーリーである。簡単に説明すると、ブレイクして調子にノリまくった鬼龍院が、「空気とiPodがあればライブができる」とメンバーを捨ててソロ活動するも大失敗。「空気とiPodだけじゃない、仲間も必要なんだ」と改心するいう筋書きだ。たとえば彼らは個別に“エアーギター”や“エアーべース”が突出して達者というわけでもない。この日のライブを通して、改めて4人のキャラクターも含めての“バンド”であるということを再確認できたように思えた。

 鬼龍院はステージの去り際に、「ミスされたり(バンドを)すぐ抜けられたりするのが嫌でエアーバンドやってるけど、ああいうミスはいいから、これからも研二さんにはiPodでやってもらうから! だから、こんなバンドだけど付いてきてくれよな!」という叫びとともに、『キラーチューンしかやらねえよ』は幕を閉じた。

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