sumika、ゲス極、androp、クロマニヨンズ、ORANGE RANGE……日本のバンドシーンの現在

 劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』のオープニングテーマ、主題歌を収めたsumikaのニューシングル、最高傑作の呼び声も高いゲスの極み乙女。のニューアルバムなど、バンド勢の新作を紹介。ますます多様化し、音楽的にも自由度を増している日本のバンドシーンの現在をぜひ感じ取ってほしい。

sumika『ファンファーレ / 春夏秋冬』

 今年4月にリリースした『Fiction e.p』がオリコン週間チャート3位(2018年4月23日~29日付)を記録し、 5月から始まった全国ツアーは日本武道館2daysをはじめ各所でソールドアウト。活動を重ねるごとにスケールを増しているsumikaの新たなアクションは、劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』のオープニングテーマ「ファンファーレ」、主題歌「春夏秋冬」による両A面。前者は、華やかなバンドサウンドとドラマティックなメロディのなかに主人公たちの切なすぎる運命を織り交ぜたアッパーチューン。そして後者は、アニメの物語と重なるように、四季の移ろいを叙情的に描き出したミディアムバラード。原作者の住野よるも以前からsumikaのファンということもあり、「アニメ版のキミスイはどうあるべきか?」という両者の意志疎通によって、しっかりと作品に寄り添った楽曲に仕上がっている。

sumika「ファンファーレ」MV

ゲスの極み乙女。『好きなら問わない』(通常盤)

 川谷絵音がライブで「いままでの曲でいちばん難易度が高い」と発言したプログレッシブなアッパーチューン「オンナは変わる」、洗練されたコード進行と憂いを帯びたメロディライン、クラシカルな弦のアレンジが溶け合う「もう切ないとは言わせない」、鋭利なロックサウンドのなかで社会風刺を帯びたシニカルなリリックが鳴り響く「僕は芸能人じゃない」などを収録したゲスの極み乙女。の4枚目のフルアルバム『好きなら問わない』。バンドのコンセプトは結成以来まったく変わっていないが、メンバー4人の音楽的な成長によるアンサンブルの進化、そして、さまざまな活動の局面をドキュメンタリー的に反映させる歌詞によって、これまででもっともスリリングな作品へと結びついている。ありとあらゆることを音楽に集約させる川谷の姿勢はどう考えてもリスペクトに値する、と思う。

ゲスの極み乙女。「オンナは変わる」MV

androp『Hikari』

 約3年ぶりのフルアルバム『cocoon』を引っ提げた全国ホールツアーによって、さらに深みを増した音楽性をしっかりと見せつけたandrop。ドラマ『グッド・ドクター』の主題歌として書き下ろされたニューシングル『Hikari』は、豊かなドラマ性を感じさせる旋律、有機的なグルーヴによって歌を際立たせるバンドサウンド、“どんな暗闇も光に変えてみせる”という思いを込めた歌詞がひとつになったミディアムバラード。“普遍的な歌”“メンバーの技術、個性を活かしたアレンジ”など『cocoon』で達成したことを踏まえつつ、バンドとしてのさらなる深みを感じさせる、きわめて質の高い楽曲だと思う。2019年の10周年イヤーを視野に入れながら、andropは着実に前進を続けている。

androp「Hikari」MV

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