THE BACK HORN、住野よるとのコラボプロジェクト「ハナレバナレ」が生む表現の可能性

バクホン×住野よる、表現の可能性

 結成20周年を迎えているTHE BACK HORNが9月13日、新曲「ハナレバナレ」を配信リリースした。この楽曲は、「君の膵臓をたべたい」「また、同じ夢を見ていた」「青くて痛くて脆い」などで知られる作家・住野よるとのコラボレ—ションプロジェクトの第一弾作品。バンドのメンバーと住野は作品のコンセプト作りの段階からコミュニケーションを取り、それぞれのイメージ、構想などをもとに相互に影響を与え合いながら、楽曲、小説を制作していくという。すでに住野の新作「この気持ちもいつか忘れる」の連載も『週刊新潮』誌上でスタート。この後も、音楽と小説の刺激的なコラボレーションが期待できそうだ。

 きっかけは住野が以前からTHE BACK HORNのファンであり、担当編集者を通して、メンバーに著作を送ったことだった。ライブに足を運び、メンバーと対面した住野は、その直後に「一緒に何かできないでしょうか?」と提案。メンバーが快諾したことでこのプロジェクトがスタートした。映画『アカルイミライ』の主題歌「未来」、映画『CASSHERN』の挿入歌「レクイエム」など映像作品に関連した楽曲を数多く手がけてきたTHE BACK HORNだが、小説家との本格的なコラボレーションは初めて。小説と音楽を同時進行で生み出していくという画期的なプロジェクトがメンバーに大きな刺激を与えていることは想像に難くない。

 「ハナレバナレ」は、山田将司(Vo)のブレスから始まる。空間を切り裂くような鋭利なギター、〈ハートブレイクな世界よ くたばれ 何者でもないまま 駆け抜けるよ〉というフレーズが絡み合い、強烈なアタック感を備えたドラム、骨太にしてしなやかなベースが加わった瞬間に一気にスピードアップ。緻密に構築されたアレンジメント、生々しい臨場感を同時に描き出しながら、〈この境界線を越えて 君に触れたい/距離なんてそこにあるだけだろう〉いうラインに向かって突き進む。楽曲のストーリー性を増幅させるような、浮遊感のある間奏パートも印象的だ。

 作詞・作曲を手がけた菅波栄純(Gt)はこの曲の制作に関して、「事前に何度も打ち合わせしたんですが、基本的にはTHE BACK HORNらしいロックをガツンとやろうと思っていました」と語る。

 「『情景泥棒』(2018年3月にリリースされたミニアルバム)以降の流れにある、いま自分たちがカッコいいと感じているロックをやろうと。住野先生とは事前に何度もやりとりしていたんですけど、干渉や口出しはしないというか、“お互いにやりたいことを最大限やる”という感じなんです。住野先生との話のなかで感じたインスピレーションをぶつけたし、いまのTHE BACK HORNらしい曲になったと思いますね」(菅波)

 「激しいだけではなく、味わい深い曲になった」という山田も、このコラボレーションの手応えをはっきりと感じているようだ。

 「すごくスピード感があって、曲の展開も激しくて。これだけの情報量が凝縮された楽曲は初めてだと思います。『情景泥棒』と地続きでありながら、新しいサウンドアプローチにもトライできたし、ライブでもいい役割をしてくれそうですね。住野先生の小説を読んでから聴き返すと、また違った聴こえ方になると思います」(山田)

 現在のバンドのテンション、雰囲気をリアルに反映させながら、小説の物語(毎日が退屈で仕方がない高校生の男子が異世界の女の子と出会う、ファンタジー的なラブストーリー)とも自然にリンク。THE BACK HORNと住野よるの創造性がぶつかり合い、融合することで生まれた「ハナレバナレ」は、音楽という表現の枠を広げる可能性を持った楽曲と言えるだろう。なおプロジェクトのオフィシャルサイトでは、作品のティザー映像、メンバーと住野のインタビューなどが公開中。これらのコンテンツをチェックして「ハナレバナレ」と「この気持ちもいつか忘れる」の奥深い世界をじっくりと堪能してほしい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

THE BACK HORN「ハナレバナレ」

■リリース情報
「ハナレバナレ」
iTunes、レコチョク、mora他主要ダウンロードサイト、Apple Music、LINE MUSIC、Spotify他主要サブスクリプションサービスにて配信中

・住野よる新作長編 「週刊新潮」にて連載中
「この気持ちもいつか忘れる」

『ALL INDIES THE BACK HORN』
発売:2018年10月17日(水) 
価格:¥3,300(税抜)
※初回プレス分のみ:三方背ブックケース仕様/ライブ会場限定特典引換券封入
<収録曲>全21曲
Disc-1
01. ピンクソーダ
02. カラス
03. 冬のミルク
04. 魚雷
05. 雨乞い
06. 怪しき雲ゆき
07. 晩秋
08. 何処へ行く
09. 風船
10. ザクロ
11. 桜雪
Disc-2
01. サーカス
02. 走る丘
03. 新世界
04. リムジン ドライブ
05. 無限の荒野
06. 甦る陽
07. 茜空
08. ひとり言
09. さらば、あの日
10. 泣いている人

THE BACK HORN NEW ALBUM『ALL INDIES THE BACK HORN』 全曲ダイジェスト音源トレーラー映像

※以下5 曲は、再レコーディングを行ない既発済楽曲。
「冬のミルク」(2008 年1 月発売『BEST THE BACK HORN』収録)
「ザクロ」(2013 年9 月発売『B-SIDE THE BACK HORN』収録)
「桜雪」(2013 年9 月発売『B-SIDE THE BACK HORN』収録)
「無限の荒野」(2017 年10 月発売『BEST THE BACK HORNⅡ』収録)
「泣いている人」(2017 年10 月発売『BEST THE BACK HORNⅡ』収録)
 それ以外の16曲は、今作のために改めてレコーディングを行なった新録音源。

・配信情報
10月17日(水)よりiTunes Storeほか主要配信サイト、Apple Music、dヒッツほか定額制聴き放題サービスで配信開始予定

THE BACK HORN 20th Anniversary特設サイト

■ライブ情報
THE BACK HORN 20th Anniversary
『「ALL TIME BESTワンマンツアー」〜KYO-MEI祭り〜』
<2018年>
10月01日(月)新宿LOFT
10月05日(金)札幌ペニーレーン24
10月13日(土)盛岡Club Change WAVE
10月14日(日)KESEN ROCK FREAKS   
10月19日(金)浜松窓枠
10月21日(日)米子AZTiC laughs
11月08日(木)京都磔磔
11月10日(土)金沢EIGHT HALL
11月11日(日)長野club JUNK BOX
11月17日(土)高松MONSTER
11月18日(日)高知X-pt.
11月30日(金)名古屋ダイアモンドホール
12月08日(土)福岡DRUM LOGOS
12月15日(土)なんばHatch
12月16日(日)広島クラブクアトロ
12月21日(金)水戸LIGHT HOUSE
12月23日(日)仙台Rensa
<2019年>
01月11日(金)桜坂セントラル
01月13日(日)鹿児島CAPARVO HALL
[ツアーファイナル]
2019年2月8日(金)東京 日本武道館

THE BACK HORN オフィシャルサイト

 

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