秋山黄色は公演中にさえ“進化”するーーユアネスと眩暈SIREN迎えたスリーマンライブレポ

秋山黄色、ユアネスと眩暈SIREN迎えた3マン

 2019年2月15日、『秋山黄色1st mini Album『Hello my shoes』 release LIVE “What color are you? vol. 2”』が、TSUTAYA O-Crest(東京・渋谷)で開催された。

 秋山黄色は、作詞・作曲・編曲だけでなく、映像やイラスト制作まで手がけるソロアーティスト。YouTubeでのMVやSpotifyなどのプレイリストで注目され、SNSを中心に話題になっている。Spotify「Early Noise Artist 2019」にも選出され、先日には『VIVA LA ROCK 2019』への出演が決まるなど、今年大注目の新人だ。

 今回はユアネス、眩暈SIRENを迎えてのスリーマンライブ。何となく特別な感じがする、そんな気持ちがにじみ出るように、会場は少しソワソワとした雰囲気で開演の時を待っていた。

 トップバッターはユアネス。福岡で結成された4人組ロックバンドであり、2017年には『RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』で優勝した経験がある実力派だ。メンバーがステージに現れると、会場には男女2人のポエトリーリーディング「変化に気づかない」が流れ始める。会話の最後、男性から女性に「本当、変わんないね」と言うと、それに呼応するように〈『変わんないね』なんてあなたもでしょう〉と歌い出される「凩」からライブが幕を開けた。黒川侑司(Vo/Gt)は安定感あるボーカルで、物語性を大切にするように丁寧に歌う。歌詞がしっかりと耳に届き、会場は一気にユアネスの世界に誘われていった。続く「あの子が横に座る」では、バンドの演奏力の高さに驚かされる。古閑翔平(Gt)が雫の落ちるようなリフを奏で、小野貴寛(Dr)の細やかなドラムと、田中雄大(Ba)の安定した演奏が、黒川の柔らかな歌声を絶妙なバランスで支える。

ユアネス

 黒川はMCで、「(同じく福岡出身の)眩暈SIRENも前からずっと知っとって、対バンできることが嬉しい。音楽を続けていないとみんなにも会えなかった」と、音楽が繋いだ出会いへの喜びを素直に語っていたのが印象的だった。ラストの「pop」のサビ〈僕は弱くて 臆病者で 誰にもなれない 僕のまま もう逃げも隠れもしないよ〉では観客も自然と拳を上げ、会場全体が一体となって船をこぐような、そんな推進力が生まれていた。黒川はライブの途中、「ライブハウスは空気もこもるし、音も大きいし、倒れそうなら言ってくださいね」と声をかけていた。ユアネスというバンドはきっと優しくて真面目だ。そして一つ一つの“音”や“言葉”に対して丁寧に、かつ研究的に向き合っていることが伝わるライブだった。

 続いて登場したのは、眩暈SIREN。彼らはMVなどでもはっきりと顔を出していない。京寺(Vo)とNARA(Dr)はパーカーのフードを被って登場。照明も暗く、ミステリアスな空気を醸し出していた。

眩暈SIREN

 「自分の汚さを どうすれば許せる」と、絞り出すような声を皮切りに演奏されたのは「ジェンガ」。ジェンガのように不安定な心のうちをあぶり出され、はっとする。この曲ではデスボイスを響かせていたウエノルカ(Piano/Vo)は、続く「明滅する」では軽快で澄み切ったピアノを披露。京寺は強い意志を感じさせる低音ボイスと、美しい裏声を巧みに行き来し、ボーカルとしての表現力を発揮。オオサワ レイ(Gt)はハットを目深にかぶり、森田 康介(Ba)は長い髪を前にたらし、楽器を唸らせる。演奏力の高さは抜群で、その姿は“職人”のようだった。最後の「故に枯れる」では、京寺がステージから身を乗り出し、客席に差し伸べた手は救いを求めるようでいて、私たちを救い上げてくれる希望のようにも見えた。「これからもここに立てることを願う。這いつくばって血反吐を吐いても良い」そう誓って彼らはステージを去った。

秋山黄色

 そしてラスト、秋山黄色の登場である。こちらもMVなどではっきりと姿が明かされていないアーティストだ。いざ登場した秋山黄色は、髪も“黄色”。つまり綺麗な金髪で、前髪は表情が見えないほど伸ばされていた。1曲目は、「スライムライフ」。実は『Hello my shoes』には未収録であり、ライブへの本気度が伺い知れる。想像以上に歌声は力強く、ギタープレイは豪快。曲が終わり、「どうも」と話しだすかと思いきや、そのまま「やさぐれカイドー」のイントロへ。このイントロは何度聴いても心を鷲掴みにされる。「Drown in Twinkle」では声の機微がより詳細に感じられた。彼の声は儚く壊れそうなのに力強く、裏声はオペラのように美しい。

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