ASIAN KUNG-FU GENERATION、『ホームタウン』が持つブレない熱量 ツアー序盤戦を観て

アジカン、『ホームタウン』が持つ熱量

 3年6カ月ぶりとなるニューアルバム『ホームタウン』を携えたASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアー『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2019「ホームタウン」』がスタートした。今回のツアーは全35公演にわたる大規模なもので、前半のライブハウス公演はフロントアクトとの対バン形式で全国をめぐる。仙台でツアーをキックオフし、2本目となる3月18日の恵比寿LIQUIDROOM公演は、久々のアルバムツアーへの高揚感とツアー序盤戦ならではの、“どんなライブになるのだろう?”という緊張感とがフロアに充満していて心地よいざわめきがあった。

Homecomings

 歓声に迎えられてまずステージに立ったのは、京都発の4ピースバンド・Homecomings。心に眠るノスタルジックな景色をそっと掘り起こす、切なくも愛おしい歌心が会場に響くと、フロアの空気が解きほぐされていく。「アジカンは中学生のときから聴いているので、共演できて光栄です」と畳野彩加(Vo/Gt)は語り、「言いたいことはいっぱいあるんですが、それよりもたくさん曲を聴いてほしくて」と最新アルバム『WHALE LIVING』から「Blue Hour」等を披露。ライブの醍醐味たるキラキラとしたエネルギーを迸らせる熱っぽいアンサンブルでいて、その歌は甘美な物思いに耽るパーソナルな時間も紡いでくれる。短い時間のステージではあったけれど、不思議な時の旅を味わったライブで、観客ははじまりよりも大きな拍手喝采を4人に送った。

畳野彩加(Vo/Gt)

 この数年、結成20周年や若手バンドによるトリビュート盤、ベストアルバム(と、Official Bootleg盤)のリリースや20周年記念ツアーといった、自身の歴史を再解釈していくような時間を過ごして、ニューアルバムに『ホームタウン』へと向かったASIAN KUNG-FU GENERATION。いちリスナーとして心躍る瞬間を味わったパワーポップやロック、バンドでいっせいに音を鳴らしたときの喜びや体温が上がる感触、自分の琴線を揺らすコード感やメロディはこび――そういった“やっぱりここが好き”という感覚や得意技、自分たちが作り上げてきた“アジカン節”たるものをもう一度、アルバム『ホームタウン』ではてらいなく、かつこだわった音・音質で作り上げた。

 あるべき音があるべき位置で鳴るサウンドはシャープに洗練されていて、同時にとても風通しがいい抜けの良さがある。その向こうには、バンドの関係性の良さや制作のいいテンションが透けて見えて、さらにアルバムを聴き進めるスピードを後押しする感じがある。懐古的にはならず、ちょっとした大人の余裕があり、悲哀や憂いは滲むも、情熱は青白い炎を上げていることが、その歌に映る。リヴァース・クオモ(Weezer)やブッチ・ウォーカーとの共作曲や、アルバムの初回限定盤に付属したCD『Can’t Sleep EP』では、ホリエアツシ(ストレイテナー)やグラント・ニコラス(Feeder)との共作曲など、新たな試みがあるが、それもまた違和感なく“アジカン・サウンド”として咀嚼されている。今のASIAN KUNG-FU GENERATIONだからこそできる、アルバムだろう。

後藤正文(Vo/Gt)

 ライブにもそのテンションは、存分に出ていた。ツアー2本目で、比較的コンパクトな会場ゆえに、よりバンドのモードや放つ空気に肉薄する感覚だ。いよいよ待ちに待ったニューアルバムの曲がライブで聴けるとあって、フロアにつめた観客はつい肩に力が入ってしまうが、後藤正文(Vo/Gt)は「東京のお客さんがいちばん緊張してるんじゃない?」と笑い、この日は何度も「自由に、楽しんでほしい」と語りかけた。

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