LOVE PSYCHEDELICOが迎えるデビュー20周年 アコースティック2作品で体感する大きな変化

LOVE PSYCHEDELICO、デビュー20周年で迎えた変化

 5月26日より開催される全国18都市20公演のツアー『LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019』と同日、ビクタースタジオ302studioでのセッションをライブレコーディングした映像作品『“TWO OF US”Acoustic Session Recording at VICTOR STUDIO 302』を発表するLOVE PSYCHEDELICO。近年はギターのNAOKIがTHE BAWDIESやOKAMOTO'S、go!go!vanillasのプロデュースを担当。バンドが大きく進化するタイミングでロック感を損なうことなくスタジオワークを極める際の心強いガイド役として若手からリスペクトされる存在になった彼らだが、作品至上主義を貫き、デビューから19年の間に発表したアルバムが7枚という寡黙さが際立つその音楽世界がここに来て大きな変化を迎えつつある。

 そもそも、60年代以降のロック、ポップスクラシックが持つスピリットを現代に伝える彼らはデュオであって、バンドではないし、リアリストであって、リバイバリストではない。それゆえに作品を作る際には、スタジオでのセッションではなく、現代的な手法でトラックを構築するようにDTMでの気の遠くなるようなオーバーダブを行い、昨年12月に配信で発表した壮大かつプログレッシブなゴスペルソング「Sally」は、KUMIとNAOKIがたった二人で130以上のトラックを重ねて作り上げたものだ。それゆえに1曲を完成させるために膨大な制作時間を要し、アルバムリリースもかなりのスローペースだが、目まぐるしい音楽シーンの変化には目もくれず、彼らなりの普遍性の追求、その突出した作品のクオリティがリリースのスパンをものともしないリスナーの揺るぎない支持に繋がり、また、特定のシーンやトレンドに回収されることがない孤高の立ち位置にその存在を押し上げるに至っている。

 では、そんなLOVE PSYCHEDELICOの何が変わりつつあるのか? 振り返ると、これまで彼らの作品は、2人のパーソナリティを伝えるより先に音楽そのものを届けたいというストイックな作品至上主義のもと、個人的な体験が直接的に反映された楽曲は存在しなかった。それが昨年のシングル「Sally」では、制作時に妊娠中だったKUMIが生まれてくる我が子に歌い聞かせる体裁のパーソナルな楽曲を作り上げただけでなく、NAOKIがSNS上でファンと直接親交を図りながら、楽曲制作の詳細な進行状況を逐一レポート。今までベールに包まれていたLOVE PSYCHEDELICOの内幕はかくも呆気なくつまびらかになった。

 そして、4月26日に配信された『“TWO OF US”Acoustic Session Recording at VICTOR STUDIO 302』は、彼らの変化をさらに推し進めたアルバムだ。この作品では、今までスタジオでのセッションレコーディングを行ってこなかった彼らが2人でスタジオに入ると、たった1日のみのライブセッションを作品化しただけでなく、2000年のデビューシングル曲「LADY MADONNA ~憂鬱なるスパイダー~」から2018年の最新曲「Sally」まで、緻密に構築された原曲のアレンジを極限まで削ぎ落としたアコースティックアレンジと2人の卓越した演奏によって、名曲の核心部分に踏み込んでいる。

 この2作は、長い活動を通じて貫いてきた楽曲至上主義にマスキングされていたLOVE PSYCHEDELICOのパーソナルな音楽観が、ストイックな活動を続けるなかで培われた固な音楽性と揺るぎない自信によって前面に押し出されている作品であり、さらなる前進を続ける彼らは、2014年から断続的に行ってきたアコースティック形態でのライブを全国規模に拡大。5月26日よりスタートするツアーは、2020年にデビュー20周年を迎える彼らのさらなる変化が体感できる最前線の現場となることだろう。このツアーのために、TOHOシネマズ 日比谷のプレミアム・シアターで採用されたカスタムオーダーメイドスピーカーを手がけたイースタンサウンドファクトリーに依頼し、独自で設計、製造した会場用音響スピーカーが全公演に導入されるという。ロック、ポップスクラシックが持つスピリットを現代に伝えることにこだわってきた彼ららしい音響へのこだわりがその表現世界に何をもたらすのか。多くのバンドが紋切り型のフォーマットをなぞることに終始し、遠く置き去りにした心が震える瞬間を、彼らは高らかに鳴らしてくれるに違いない。

(文=小野田雄)

■リリース情報
配信アルバム
『“TWO OF US”Acoustic Session Recording at VICTOR STUDIO 302』
発売:2019年4月24日(水)
1.LADY MADONNA〜憂鬱なるスパイダー〜 (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
2.I saw you in the rainbow (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
3.Sally (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
4.裸の王様 (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
5.1 2 3 (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)

Blu-ray
『TWO OF US”Acoustic Session Recording at VICTOR STUDIO 302』
発売:2019年5月26日(日)
価格:¥2,700(税抜)
1.LADY MADONNA〜憂鬱なるスパイダー〜 (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
2.Favorite Moment (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
3.I saw you in the rainbow (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
4.Sally (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
5.裸の王様 (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)
6.1 2 3 (Acoustic Live at VICTOR STUDIO)

■ライブ情報
『LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live “TWO OF US" Tour 2019』
5月26日(日) 横浜・LANDMARK HALL
5月30日(木) 広島・JMSアステールプラザ中ホール
5月31日(金) 倉敷・倉敷市芸文館
6月13日(木) 新潟・新潟市音楽文化会館
6月21日(金) 札幌・道新ホール
6月26日(水) 名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
7月3日(水) 松山・松山市民会館 中ホール
7月4日(木) 高知・高知県立美術館ホール
7月15日(月/祝) 仙台・トークネットホール仙台(仙台市民会館) 小ホール
7月19日(金) 金沢・金沢市文化ホール
7月23日(火) 大阪・サンケイホールブリーゼ
7月24日(水) 大阪・サンケイホールブリーゼ
8月3日(土) 福岡・福岡国際会議場
8月4日(日) 大分・コンパルホール
8月30日(金) 熊本・くまもと森都心プラザ プラザホール
9月13日(金) 福島・福島テルサ FTホール
9月17日(火) 高松・サンポートホール高松 第1小ホール
9月24日(火) 東京・EX THEATER ROPPONGI
9月25日(水) 東京・EX THEATER ROPPONGI
9月29日(日) 静岡・アクトシティ浜松 中ホール

オフィシャルサイト

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