SUPER★DRAGON 和哉、壮吾、楽の個人MV分析 物語の完結とグループのアイデンティティ

スパドラ『3rd Identity』個人MV分析③

 8月14日に通算3枚目となる最新アルバム『3rd Identity』をリリースするSUPER★DRAGON。各メンバーがアイデアを出した個人プロデュース曲9曲と、全員リード曲「Don't Let Me Down」が収録される今回のアルバムに際して順次公開されてきた、個人プロデュースMVのコラムもいよいよ最終回。今回は7~9曲目にあたる「La Vida Loca」「雨ノチ晴レ」「Remedy For Love」の3曲と、「Don't Let Me Down」についてまとめたい。

 Blu-rayの収録順に観ることで徐々にストーリーが明かされるこの個人MVシリーズでは、これまでの1~6曲目を通して、メンバーごとの個性に加えて、それぞれの世界観が同じ時間軸を共有するパラレルワールドであることを解説してきたが、今回の3曲は、その謎がいよいよ「Don't Let Me Down」に向けて明らかにされるような内容になっている。

第一回:SUPER★DRAGON 玲於、彪馬、洸希の個人MVが告げる『3rd Identity』の物語のはじまり
第二回:SUPER★DRAGON ジャン、颯、毅個人MV分析 繋がり合う世界が表す物語の行方

「La Vida Loca」松村和哉

[MV] SUPER★DRAGON / La Vida Loca(Promotion Edit)

 7曲目「La Vida Loca」は、和哉が楽曲のアイデア段階からかかわった楽曲。SUPER★DRAGONの楽曲には、海外の音楽シーン、特に欧米のトレンドを取り入れたものが多く存在するが、この楽曲は、2017年に何週にもわたって全米チャートのNo.1を獲得して大ヒットしたプエルトリコのルイス・フォンシ&ダディ・ヤンキーによる「Despacito」(とジャスティン・ビーバーが参加したセルフリミックス曲)以降再ブームが続き、昨年はフラメンコとモダンR&Bを融合させたスペインのロザリアの『El Mal Querer』も話題となったラテン音楽の要素や、最近のEDM曲でにわかに増えているインド~中近東風の要素を持った楽曲にアプローチ。そのうえで、MVでは、「自分との闘い」というテーマを、神に見立てたマネキンとの対面で表現している。ジャン、洸希とともにラップを担当することも多い彼らしく、メモとペンを持ってリリックを書き溜める様子も印象的だ。

「雨ノチ晴レ」伊藤壮吾

[MV] SUPER★DRAGON / 雨ノチ晴レ(Promotion Edit)

 8曲目「雨ノチ晴レ」は、壮吾による個人プロデュース曲。今回の『3rd Identity』には、ラテン音楽だけでなく、トラップやムーンバートン、ビッグルームハウス的なEDM、エレクトロポップ、フューチャーベースなど楽曲によって様々な音楽性が詰め込まれているが、この曲は彼らのもうひとつの顔でもある、ダンス&ボーカルグループとしての「アイドル性」を感じさせる爽やかなギターロックになっている。実験性を追求する攻めた楽曲だけでなく、王道のアイドル性の面でも高い魅力を感じさせる、このグループらしい幅の広さを感じさせてくれる楽曲だ。MVでは、大の電車好きとして知られる壮吾の個性を反映させて、電車に乗って向かう休日のひとり旅を表現。優しい日差しを受けながら街をぶらりと歩いたり、旅先でハンバーグをほおばったりと、リラックスした姿が伝わるものになっている。

「Remedy For Love」柴崎楽

[MV] SUPER★DRAGON / Remedy For Love(Promotion Edit)

 そして9曲目は、楽によるプロデュース曲「Remedy For Love」。この楽曲はEDM以降のクラブミュージックを思わせるドロップを中心とした構成のクラブチューンで、切ないメロディと、「データが不具合=バグ」をサウンドで表現するようなエディット音が印象的な楽曲。MVでは、お気に入りの映画をイラストで表現する連載を担当するなど、アートセンスを感じさせる彼の個性を伝えるかのように、どこかユニセックスなモード風の衣装に身を包み、廃墟で佇む楽の姿が収められている。また、MV中には、今年の『FUJI ROCK FESTIVAL ‘19』で2日目のヘッドライナーを務めていたことも記憶に新しいSiaの「Chandelier」のMVなどを連想させる、女性ダンサーによるコンテンポラリーダンスも登場。アート的でスタイリッシュな映像美を生んでいる。とはいえ、最も注目したいのは、MVの終盤に、これまで他のメンバーの個人MVに登場したキーアイテムの数々が登場すること。実際に観て体験してもらうことをお勧めしたいため、ここではあえて詳しくは書かないが、倒れる楽の横に他のメンバーを象徴する様々なアイテムが転がる映像で、すべてのメンバーが「実は存在しない」ということを伝える衝撃的なラストになっている。

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